異文化はしょせん異文化である。
休憩中。
お昼ご飯を食べるために森を抜けた街道で馬車を止めた。
朝の6時頃にトット村を出て、途中何度か小休止を取ったけど、太陽が真上に来たのでお昼ご飯にしようということになった。
リオールさんとボブさんは馬用の水が入った樽を運んでいたので、その間に私はお昼ご飯の準備をする。
火とかは焚かないので、お昼にとレイーナさんが持たせてくれた包みと水筒を持って荷馬車から降りる。実はこの包みの中身は、レイーナさんに許可とって私が作らせてもらったサンドウィッチでございます。お弁当の定番です。
草原があるので、下に敷く物は特にいらないらしいから、近くの木陰に包みと水筒を置いた。
「リオールさん、ボブさん。お昼ここで食べましょう!」
私が手を振ると、リオールさんが気が付いて手を振り返してくれた。
場所はそんなに離れていないから、手を振る必要もないんだけど、ピクニックみたいでなんか楽しいのではしゃいでしまう。
そんな私を見て、リオールさんは綺麗な顔に笑みを浮かべて「今いくよ」と答えてくれた。
ボブさんも心なしか温かい目で見てる感じする。なんか、こう、幼い子供を見てるような?あ、ボブさんの場合は孫になるのかな?
なんかそんな感じで、私を見ながら微笑んでるから、なんだろう、ちょっと恥ずかしくなった。
座った2人に包みと水筒を渡すと、私も気を背もたれにして木陰に座り、包みを膝にのせて「いただきます」と小さな声で言う。
ここでは「いただきます」とは言わないらしい。初日に不思議そうに見られてからは、違いを見つけるたびにここが違う世界なんだと実感するようになった。
だから、あんまり違いを大っぴらにしないように、小さな声で言うだけにしています。
そんなことをしてる間に、リオールさんもボブさんも包みを開けていた。
開けた中身を見て、どんな反応するのかちょっと楽しみです。
お昼には食べちゃうものだし、洗物減らすためにもいいんじゃないかなーって提案したからこその実現なので、ドキドキですわ。
作らせてくれたレイーナさんも心広いよね!
反応を横目で見ていると、包み紙を開けたリオールさんとボブさんは、ちょっと驚いていた。
焼いて塩を振っただけの肉とレタスっぽい野菜に、茹でて小さく刻んだ野菜とマヨネーズを和えたタルタルソースっぽいものを挟んだ黒パンのサンドウィッチ。
人様の家の台所を荒らすのは躊躇われてたけど、食用油あったし、果物の絞り汁だけどワインビネガーっぽい物もあったので、マヨネーズ作れないかなーって作ってみたらできた。
胡椒が無いのは残念だけど、塩味のみの肉と茹で野菜に黒パンという定番からの脱出に成功しました。
マヨネーズは正義です。太るけど。
それと、昼の洗い物を少なくのにも成功というわけです。
驚いた顔見て、ちょっと成功かなーってニマニマしながら、私はサンドウィッチを両手で持ってかぶりついた。
マヨネーズ、うまー。
久方ぶり、というか十日ぶりのマヨネーズの味を堪能していると、隣から視線を感じました。
なんだろうかって振り向くと、さっきとは逆で私が見られてた。なして?
「どうしたんですか?」
「いや、その、いつもと違って驚いたと言うか、これ、もしかしてツゥが作ったの?」
「はい。洗い物少ない方が良いと思って一緒にしてみました」
おいしいですよ?と勧めてみると、リオールさんとボブさんはお互い顔を見合わせてから食べ始めたんですよね。
そこまで変ですかね?パンに挟んだだけなのに。
味はレイーナさんが味見してくれたので、十分保証できますから。
そう思ってみてたら、二人とも食べた後に目を見開いてました。
じっとサンドウィッチを見てます。そして、もう一度「ツゥが作ったの?」とリオールさんが訊ねて来たので頷いときました。
口にサンドウィッチ入ってたので、ちゃんと飲み込んでから「私が作りましたよ?」と答えます。
「この白いソースは何かのう?」
ボブさんが言う白いソースは多分マヨネーズですよね。あれ?タルタルソースって答えればいいのかな?ピクルスもマスタードも入ってないからタルタル言わないか?
「・・・マヨネーズです。卵と油とビネガーで作ったソースに野菜を細かく刻んで混ぜてあります」
「マヨネーズ?初めて聞くのう。嬢ちゃんの故郷の料理かね?」
ボブさんはサンドウィッチをめくりながら聞くけど、こぼれますよ?まぁ、故郷の料理と言われればそうなのかもしれないけど、発祥地は日本じゃなかった気がする。フレンチだったっけ?たったらフランスなのかな?調べたことないからわかんないや。
とりあえずわかんないので首を横に振っといた。嘘はいかんからね、嘘は。
そうすると、ボブさんとリオールさんは、あって何かに気が付きましたって顔になった。そして、少しだけ暗い雰囲気になった。なぜ。
「どうしましたか?」
訊ねてみると、リオールさんが私を見ながら・・・あ、目をそらした。
「あ、あの、ツゥ?」
呼ばれたので「はい」と返事をしてみれば、「おいしいね」と、笑顔をひきつらせて言ったので、多分口に合わなかったんだと思います。ボブさんは「ワシこれ好きじゃよ」と言ってくれました。
どうやらこの世界の人と私とでは、味覚が違うようです。残念です。異文化の壁、突破ならず。まぁ、でなければもう少し料理文化も進んでると思います。いらん世話でした。乙。
ああ、そうなるとレイーナさんにも無理させてしまったのでしょう。やっぱりよそ様の家庭の味へは不可侵条約を結ばねばなりませんね。
「ありがとうございます」そしてごめんなさいと心で謝って、サンドウィッチの残りを食べるのに集中した。
不味いならまずいと言ってもらいたいような、彼らの優しさに申し訳ないような思いでいっぱいで、残りのサンドウィッチの味は良く分からなくなってしまいました。しょぼん。
ここでもう少し休憩するとのことなので、はぐれないようにしながらあたりを散策させてもらうことにしました。
この辺には凶暴な獣とかは出ないそうです。盗賊とかもいないそうですので、その辺は安心していいそうです。
しかし、少し森に入るともしかしたら居るかもしれないので、遠くに行かないように言われました。
獣に対して出没しないとよと言えるのは、川とかの水場が無いかららしいですが、その代り水の補給も出来ません。
語弊がありました。森の奥の方へ行けば水場はあるそうですが、本当に奥なので、という意味です。そして、そこまでいかなくても今日中に隣町につくので問題ないそうです。
歩くと二日かかるのに、馬車だと一日で着くからすごいよね。馬。いつか騎乗してみたいです。
というわけで、ちょこちょこと馬車が見える範囲で森の中へ入ってみます。
ほんのちょこっとですよ?森の中に入ったのは。なのに何ででしょうか?これは何?というくらいの大きな物体がありました。
大きさがちょっとデカいです。異常です。逆に怖いです。
なんですか、この「卵」は!
けしからんです。始めは岩かと思いました。
大きさはバスケットボールくらい?でも卵型で、白くてザラザラしているようです。
朝見たこの世界の鶏っぽい生物の卵が野球ボールくらいだったけど、これは何の生物の卵でしょうか?リオールさんに訊ねたらわかるでしょうか?
食べれたら、夕は・・・あ、今の無しで。
近くに親がいる様子は無いです。踏み荒らした後が無いから。ちなみに木の上に巣があるようにも見えません。
ちょっとだけ、触ってみたいような?
そっと、そーっと近づいて、ちょん、と触ってみました。
「・・・あ」
指の先が離れなくなりました。
とりあえず、叫ばせてください。
えぇぇーーーーーーーーーーーーーーー!!!
拾う前に遭遇したようです。
12/15 改行をいじりました。あと、誤字脱字。