回想終わり、でもまだ森の中。
ご飯を出される前にリオールさんに名前を聞かれたんだけど、私が「月代です」といつもみたいに名字で行っちゃったんだよ。
あれ?もしかして下の名前の方だったかな?とか思ったら「ツキョーロ?」と言われた。
あえ?
「いえ、月代です」
ともう一度言うと「ツクショー?」とか言われた。
あるえ?
少し変えるとあれだね、今の私の気持ちになるよ。チクチョー
何度か言い合う内に「ツクシロ」に納まりました。これも言い難そうだったけど。
これ、「海里」だと何に変換されるのだろうか?ダメージ喰らいそうで怖くて言えない。キャリーとか呼ばれたらイヤすぐる。
「あたしキャリーですv」とか?いやだ。恥ずかしくて死ねる。
というわけで、しばらく「ツクシロ」で通したいと思います。精神安定のために。
コスプレの時もあれ?と思ったけど、微妙に通じないよね。
なので、言語的に私が知らないだけで、世界は広いからちょっとだけ期待を込めて国の名前とか、大陸の名前とか聞いてみたら、もののみごとに知らない名前だった。
だって、「ここ?ヴェルドナ帝国だよ」とかすで言われた挙句、なんで知らないの?みたいな顔されたら、何時までも世界は広いねとか言ってられない。
現実逃避したいけど、させてくれなさそうですよね。
大陸名はローザンディエスト大陸らしいですが、私の名前より言いにくくない?とか思いつつ、世界地図にそんな大陸は無いよね。
「日本って知ってますか?」
「ニオン?聞いたことないけど、その村に住んでたの?」
村っていうか、国なんだけど、聞いたことないって。確かに小さい島国だけど、それなりに有名だと思う。
ドッキリかなーとか思ったけど、ただの中学生にここまで大がかりな仕掛け使わないと思うし。思いたいし。謎言語を話してる自分自身の説明つかない。
そのあとはリオールさんの親御さんからも、再度親のこととか聞かれたけど、答えようがなかった。「気が付いたらあそこに居た」「両親はたぶん生きてます」とは答えたけど、後は今までどうしてたとかは「親といた」とか答えるけど、どこに住んでたとかは「分からない」で通した。
異世界から来ましたー、なんてことは言えない。
頭イタイ子になっちゃう。なんて危惧して黙秘権執行してたら、聞いちゃいけないこと聞いちゃった、みたいな雰囲気になった。
その結果、冒険者の親とはぐれた迷子となりました。
なんでやねん。
という突込みをしますが、むろん、心の中で、です。
口には出さないのが、安全に生きていくコツだと思います。はい。
というか、冒険者って・・・どこのRPGですか。ここのRPですね、ごめんなさい。
そんなことがあって、モグモグご飯を食べてる時に「ここで暮らしたらいい。うちには君と歳の近い子供もいるし、1人増えたくらい大したことないから」とリオールのお父さんのホロンソンさんが言い出した。
帰る当てもないし、帰れる気配もないし、正直野宿とか怖いので、ありがたくお世話になることにしました。
ちなみに、リオールさんの歳は18歳でどんぴしゃでした。私すごい!だからなんだって言われたら何も言えないけど。
だけど、リオールさんやホロンソンさん、奥さんのレイーナさん(ぱっちりした目は綺麗な緑色で、猫毛なこげ茶色の髪を後ろで結んでる、すごく可愛らしい方)のほかにも、娘さんと息子さんたちに年齢間違えられてる気がする。
それが確信したのは、一番下のシリス君(10歳)とウィリス君(11歳)に対して、私が「・・・ツクシロです、よろしく」と言うと、シリス君が「俺、今日から兄ちゃんになる?」とホロンソンさんに言ったから。
待って、私13歳。君らよりオネイサンですよ?
そこだけは訂正したよ。3歳くらいのサバ読みを許されるのは、もうすこし大人になってからでお願いします。
妹が欲しかったというラナシスさん(17歳)とは、洋服を融通してもらったりと何かとお世話になりました。
そんなこんなで、10日間はあっという間に過ぎ去っていきました。速いです。
ご飯をあんまり食べないことに、ちょっと心配されてる感じがあったけど、あれは、うん、不味くは無いんだよ、うん。
お肉もスープも・・・いえ、作ってもらっといて失礼だよ。うん。異文化コミュニケーションだよ。
まぁ、それは置いといて。
リオールさんが帝都という所に戻ることになりました。
何でもリオールさんは帝都にある軍学校に通われてる学生さんだそうです。
その時に学校の話を聞いたんですが、この世界、魔法があるそうです。あっはっはっ、ふぁんたじー。
しかも学校で教えてるらしいですよ。それを聞いて、もしかしたらって思わない方がおかしいです。
未練はあります。家族仲は良好で、友達もいたんです。
魔法があるなら、家に帰る方法も見つかるかもしれないって思いませんか?
ただ、魔法には魔力が必要だし、学校に入るには15歳からという年齢制限と、すっごくお金がかかるそうですが。
ぎゃふん(古)
ついでに、帝都の話を聞いたんですが、すっごく大きな図書館があるそうです。
世界の本が集まってるとかいうくらい大きい図書館で、帝都国立図書館と言うらしいけど、望みを託したいと思うのですが、どうでしょ。
ただし、行く理由が必要です。
車なんかないし、旅費もかかるし。
どうしようかなって考えてたら、「親を探すためにも帝都の冒険者ギルドに一度行ってみたら?」とホロンソンさんが言ってくれました。
ああ、そういえば私の親は冒険者設定でしたね。
というか、冒険者ギルドって・・・どこまでRPG?
そんなわけで、帝都まで毛皮を売りに行くボブさんの荷馬車に揺られています。
冒険者ギルドで探してもらって、ボブさんの仕入れが終わり次第、一緒に帰ってくる手筈です。
荷馬車なんて初めて乗ったし、馬なんてテレビで見たことがあるくらいで、実物は今荷馬車を引いてるボブさんの馬が初めてだ。
私の住んでいたところでは、道はアスファルトで舗装されていたし、移動には車や自転車が使われていた。
でもここでは、移動は徒歩か馬、徒歩だと二日は掛かる隣町へは、バスでも電車でもなく荷馬車で移動する。
ふぁんたじー。
こちらでは珍しいという黒い髪が、太陽光を容赦無く吸収するのを防ぐために、ラナシスさんの茶色のスカーフを着用してますが、慣れないのでズレていないか確認します。
可愛いらしい花の刺繍が入ったこのスカーフは、髪の毛を隠す目的ではなく、同じく珍しい黒の瞳を前髪で隠すための物です。
残念ながらサングラスはないし、メガネは高いので直接隠せないので晒しているけど、スカーフで髪を隠すと見せかけて本命は瞳の色です。
そんだけ珍しいらしいのかと思ったけど、黒髪に黒目が珍しいのであって、別々ならいるらしいよ。
延々と続く轍から視線を空に向ければ、そこに広がる色が瞳に写る。高く清んだ青い色は、自分の知る夏の空とは少し異なっていて。
「…悪くはないんだけどね」
こんなに綺麗ではなくて、もう少しくすんだ色をしていたから、ここの空は綺麗といえば綺麗なのだが。
落ち着かない。
色々と。
ちらりと後ろを振り向けば、リオールさんとボブさんが何か話している。現段階での私の保護者でもある人だ。
ちなみに、この帝国の半数はヴェルドナ人らしく、だいたい茶髪に緑色の瞳をしているらしい。あとはナハルーン人と言って、茶色の髪に青い瞳らしいから、黒髪黒瞳な私はすこぶる目立つわけなのですよ。
黒髪なのは西にある国とか、南にある国の人らしい。紺色の髪に黒い瞳のセルゼット人が一番私に似てるらしいけど、山を越えた先の国の人だから、こっちにいるのは商人とか冒険者くらいらしい。
私の両親が冒険者っていう勘違いは、ここから来てるようですね。
「どうしたの?ツゥ」
にこりと微笑みながら、リオールさんは私を呼ぶ。むろん、ツゥというのは愛称のようなものだ。
私の名前が聞き取れなかったリオールさんたちが、ツクシロもやっぱり言いにくいらしくて略された感じがぬぐえない。
「なんでもないですよ?それより、リオールさん。もうちょっと帝都の学校のこと教えてほしいです」
「学校のこと?いいよ」そういって、こっちにおいでとにっこり笑うリオールさんはお母さんにですね。美人さんです。
女装させたらさぞかし綺麗に・・・って、やめよう。仮にも恩人なんだから。
というわけで、休憩地につくまでの間、帝都の軍学校のこととが、同級生の貴族らしくない貴族さんとかの話を聞かせていただきました。
ようやく改装じゃない、回想終了。
次は拾うと思います。なにかを。
12/15 誤字脱字なおしてみたよ。