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訊くよりも、訊かれる方が分からない。


 リオールさんの反応は、分からなくもない。多分だけど、こういった玩具を見るのが初めてなんだと思う。トット村にいたときも、遊ぶと言ったら外で走り回るか、家の中でままごとや冒険者ごっこだったりしたから。あっても積み木だったけど、それも細工物を作っていたホロンソンさんの手作りだ。だから、珍しい物を見たような、興味深いまなざしであるリオールさんは分かる。

 でも、冒険者3人の反応が分からない。

 いったい何に驚いているのだろうか。首を傾げてリオールさんに視線を向けてみるが、彼に分かるはずもなく、同じように首を傾げられてしまった。

「なにをしたんだ」

 ぼそり、呟かれた声の方を向けば、オーリケットさんがルービックキューブから顔を挙げ、私を見ていた。むしろ凝視していたと言っても過言じゃない。じっと、青い瞳が私を見る。

「なにをって、まわしただけですけど?」

 見ていたと思うが、本当に回しただけだ。なのにオーリケットさんは、訝しげに私を見て、再び手元のルービックキューブに視線を落とす。

「そんなはずはない。その魔法具は、僕だって調べのだから・・・」

 ならばこれが回ると知っているはずなのに、オーリケットさんは言った。


「だから、それが回るはずがないということは、僕が一番よく知っている」


 言い切った言葉を聞いて、アルフォンスさんや持ち主のセグロスさんも同意したことで、それが嘘でも冗談でもないということを私に知らせた。


「でも回りますよ?」


 カチッという音とともに、六面体が私の手の中で回る。回したルービックキューブを差し出せば、手を出そうとした持ち主のセグロスさんよりも早く、オーリケットさんが掻っ攫うように持っていった。空中に中途半端に浮いたセグロスさんの手が、ゆっくりと戻っていくのに、若干哀愁を覚えてしまったのはなぜだろうか。

 オーリケットさんの手の中におさめられたルービックキューブは、私の手の中にあったよりも小さく感じた。私と彼の手の大きさが違う事が良く分かったけど、その大きな手が、小さなルービックキューブを回そうとしたとたん。



 カチャカチャカチャカチャカチャカチャッカチャッカチャカチャカチャカチャカチャカチャッカチャッカチャカチャカチャカチャカチャカチャッカチャッ、カチッ



 オーリケットさんの手の中で、六面体が勝手に縦横メチャクチャに動く。先ほど私が縦に揃えた場所も、あっという間にバラバラになり、動きが止まるころにはどうやって揃えたのか分からなくなってしまった。

 ・・・まぁ、もともと適当に回して揃えたので、最初から分かってないけど。

 自動でバラバラになる機能付きなのかー、魔法具ってスゲー。くらいしか、私は思わなかったけど、いきなり動いた物体に衝撃を受けたのは、実際にそれを持っている本人。

「こ、こんな現象、初めてだ・・・」

 目をすっごくキラキラさせて、手の中のルービックキューブを見ながら呟くオーリケットさんは、若干ふるふると震えているように見える。

 しかし、オーリケットさんがルービックキューブを回そうと手に力を込めたのだけど。


「「「「「・・・・・・・・・」」」」」


 どんなに回そうとしても回らなかった。

「・・・なにをしたんだ」

 ギロリと上目使いしながら、オーリケットさんから同じ質問をされたけど、さっきと違って睨まれているように感じるのは、私だけだろうか・・・。



 ちなみに、何度やっても私しか回らないうえに、他の人が回そうとすると勝手にバラバラにする機能が発動することが分かりました。途中でオーリケットさんが、すっごく悔しそうにルービックキューブを眺めながら、「いったい何の法則が・・・」「いや、もしかしたら・・・」とかブツブツ呟きだしたときは怖かったけどね。

 こんなことを、人が集まる酒場でやっていると、それはそれは目立つ。目立ちまくるわけです。それに気が付いたのがアルフォンスさんで、解散することになりました。私には良く分からないけど、リオールさんが笑顔でありながら、有無を言わせない態度で私を2階の部屋に移動させたので、何かがあったようです。

 先に部屋に着くと、後に居たリオールさんがオーリケットさんとセグロスさんの2人に呼び止められ、何かを廊下で少し話してから部屋に入ってきました。残念、声が小さくて聞こえなかったんだけど、訊ねてもいいのだろうか?ちょっと、ちょっとだけだけどソワソワしてたら、クスって笑われた。笑われたよ!恥ずかしいッ!

「いったい、何を話してたんですか?」 

「明日の出発時間を聞かれたんだよ。僕が軍学校の生徒なのは自己紹介の時に話したから、僕とツウが向かってるのが帝都なのは分かってるしね」

 何を話していたかはわかったけど、なぜそんなことを聞かれるのか・・・は、分かった気がする。

「同行者が増えました?」

「増えちゃったね」

 苦笑するリオールさんは、明日は速いから休もうね、と私をベッドに促す。


 言い方がアレだけど、私はアッリオを抱えてリオールさんと2人部屋(おなじへや)で就寝いたしました!

 旅費を全面出してもらって、途中で動物拾っても、寛大に受け入れてくれたリオールさんですから!男の人と同じ部屋なんて・・・!なんて乙女な発言しませんよ。どちらかというと、申し訳なさでいっぱいだよ!


 なんて考えてはいたけどね、よっぽど疲れてたのか、気が付いたら腕の中にアッリオを抱きしめたまま、私は夢の世界へ旅立ちました。


 アッリオがぬっくいのがいけないのよ!





 でも、可愛いは正義!






今年の更新はここまで!皆様、よいお年を!!

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