ルービックキューブ、だと思うもの。
いい年した大人ことセグロスさんが、机に突っ伏してしまった。
「ほんと、すみませんでした・・・」
小さいながらも謝罪の言葉を呟くセグロスさんがかわいそうになってきたので、ちゃんと話を聞こうと思います。
うそです。調子のりました。上から目線でゴメンナサイ。
気を取り直して、セグロスさんが再び、「この魔法具について、なにか知ってるか?」と問い直してくれた。
なんでも、昔からセグロスさんちの長男の家系に受け継がれているそうで、本当の持ち主はセグロスさんのお兄さんだそうです。セグロスさんは次男だそうで、昔からお家のお手伝いより冒険者になりたいと思っていたらしく、最初の旅立ちはほとんど家出のようだったそうです。今では和解されてるそうですが、セグロスさんが冒険者になると言った時に、お兄さんがお守りとして貸してくれたのが、この見た目がルービックキューブな魔法具だったそうです。セグロスさん自身が魔法耐性が低いらしく、冒険には大いに役に立っているそうです。
もともとお兄さんは、昔の物とかを調べるのが好きだったらしく、小さいころは図鑑を片手にいろいろ調べていたほど。しかし、家を継ぐため自由が無く、そのため昔から気になっていた魔法具について調べられなかったのが心残りなのだそうです。
そして、ここで弟であるセグロスさんは自由に外を飛び回れるってところに目を付けたらしいです。本人談なので、どこまで本当かはわからないですが。
十分役に立ったという話を聞き、さらに両親との和解にも間に入ってくれたお兄さんは、そんなセグロスさんに「貸し出し料を取らない代わりに、魔法具のことを調べて欲しい」とお願いされたそうです。そして、年に1回報告してほしいとお兄さんから言われたそうです。
今の所、魔術が利かないのと魔術耐性向上効果がある魔法具なのは分かっていけるけれど、それ以外がさっぱり何の手がかりもないらしく、八方ふさがりだとか。どうして代々受け継がれているのか、この形に意味があるのか、とかの理由が知りたいお兄さんはとしては収穫ゼロな状態。なもんだから、帰る度にネチネチと言われるらしい。ご愁傷様です。
そろそろ報告しに帰らなければならない時期なのだけど、特に何の情報もなく進展もない。そんな状態では、ちょっと家に帰りたくないと考えてたセグロスさんだったけど、私が何か知ってるような言葉を言ったため、つい飛びついてしまったというのがセグロスさん側の理由だそうです。長かった。
ところどころ口が入ることがあったので、まとめると縦隔ゼロの状態で家に帰りたくないから、何か情報提供してほしい、ということだと考えられます。というか、私はそう受け取りました。
魔法具をお兄さんに返せばいいのにって思うけど、セグロスさん、本当に魔法体制が弱くて、これを持ってないと近くで魔術を使われたとたんに気持ち悪くなるんだとか。難儀な体質ですね。
お兄さんも、その辺のことを分かっているので、貸出ついでに断れない依頼を押し付けた節があるとか。身内に対してのお兄さんの所業から、イイ性格をしていることが良く分かります。
お近づきにはならないようにしたいです。
そんなわけで、私に知っていることがあれば何でもいいので話してほしい、というのがお願いの内容なのでした、まる。
「といっても、私が知っていることって・・・ルービックキューブの遊び方くらいですけど?」
机の上に置かれたルービックキューブのような魔法具。貴重品のような件があったので、触ってもいいかどうか訊ねたら、案外あっさり許可してもらいましたので、手に取ってみた。
5㎝四方のルービックキューブは、よく見るルービックキューブの大きさよりも小さい。見た目は曇りガラスのように、ぼんやりとした色合いの6色の小さな正方形がバラバラに配置されている。表面に触れると、先ほど火で燃やされたにもかかわらず、冬の石のように冷たく、つるつるとしていた。
横にひねってみれば、カチッと小さな音がして、六面体が回る。同様に、縦にひねってみれば、縦に六面体は回る。
少し小さいけれど、何の変哲もないルービックキューブにしか見えなかった。
カチカチと音を鳴らしながら回していると、縦の一列の色が偶然揃った。こうやって見れば見るほど、セグロスさんが言っていたような、すごい物には見えない。いや、実際に見たんだけど、それでも私の目には小っちゃいルービックキューブとして映る。
「こんな風に、回しながら色を揃えていくもの・・・だったと、おもいます、よ?」
ルービックキューブな魔法具から顔を上げると、手元を食い入るように覗き込む冒険者3人と、興味深そうに見ているリオールさんがいた。
あれぇ?