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通神使  作者: 紫水晶
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巣立ちの日

「・・・・きな・い」「・よ・・・お・なき・さ・」・・・・・・・ 『いい加減に起きなさいっ!!!』 バシャッ「つ、冷たいっ!」「やっと起きたのね。朝ご飯できてるから早く着替えて食べなさい。」目を覚ますと母さんがバケツ片手に言ってきた。

「母さん、いくら起きないからって水を掛けるのはひどいよ。」

「ウル君がいつまでも寝てるからよ~。それに今日は入学式でしょう?遅刻したらダメだと思って。」「そうだけど、もう少し他に、・・まあいいや。とりあえず起こしてくれてありがとう。」「はい、どういたしまして。」

そう言って母さんは、バケツを片手に出ていった。美しい蒼色の髪と黒色の目そして子供二人産んだとは思えないくらいに若い容姿を持つ母だが少々行き過ぎた行動をしてしまう困った性格をしている。天然なのだろうか?


「って、そんなこと考えるよりも準備しないと本当に遅刻しちゃうよ。」


慌ててびしょ濡れの寝巻きを脱いで昨日届いたばかりのヤムルのコートに手を通す。コートにはこれから通うことになる学園の白い紋章が着いている。

ちなみにヤムルとは高い山に住む獣で、その皮は丈夫で上品なのでとても人気がある高級品である。しかも、このコートは学園の特注品で衝撃を反らす細工や、暑い時も寒い時も過ごしやすい等の多数の細工を専門の能力者によってそれぞれ付与されている。売れば、宝石がいくつも買えるだろう。いや、売ろうとは思わないが。



「こんな高いコートを支給出来るなんて流石はエレミスチア学園だな。」


エレミスチア学園、今日から僕が通うことになる学園で、「あらゆる者に教育の機会を」を教育理念として持つことで有名である。その考えの通り人間、獣人、竜人、元人、エルフ、妖精族、魔族の多種多様な種族が通う学園だ。



「うわぁ~。髪ボサボサだよ~。時間ないのに~。」


鏡を見ると母譲りの蒼い髪と父譲りのエメラルドグリーンの瞳を持つかわいい少女のような少年がこちらを見返してくる。しかしながら、普段は母のやうに美しいであろうその蒼い髪はボサボサに波打っている。



「もう、毎朝手入れ面倒だし切っちゃおうかな。」


『 キル、ダメ。ウルトノカミキレイ、スキ、ソノママデイイ。』


突然、隣から声がした。ビックリして隣を見ると人の頭より少し小さいくらいの純白のドラゴンが体に対して小さな翼をパタパタさせて浮いていた。 「もう、驚かせないでよフィル。」

隣に浮かぶ小さなドラゴンことフィルに言う。『ダメ、カミキル、ダメ。』しかし、それを無視してフィルは髪を切ることを止めさせんと同じ言葉を繰り返す。しまいには、僕の頭の周りを飛び始めた。

・・・ バサッバサッバサッバサッバサッバサッ「・・・・・わかったわかったよ。切らないからやめてよ。はぁ、髪が長いと女の子みたいで嫌なんだよなぁ。」そう、僕は母さんに似ているらしく身長も普通の男の人の胸までしかないのだ。おまけに女顔でここに更に髪が長いとくればもう女の子にしか見えないのである。だからいつも髪は肩から胸に流すように結んでいる。

「まったく、僕はエルフじゃないのに。(エルフは男女問わず髪の長い者が多い。)あっ、それと学園に着いたら僕がフィルと念話が出来るのは内緒だからね。わかった?」学園はペットの連れ込みを禁止していない。魔族やエルフ達が使い魔等として連れてくる事が多かったからだ。

正確にはフィルは僕のペットではないが。


『ワカッタ。ナイショ。ヒミツ。』

そんなことを注意していると下から「早くしなさ~い。」という母さんの声がする。それに適当に返事し降りるとすっかり冷めた朝食と母さんと父さんと一つ下の妹エルトが待っていた。僕はエルと呼ぶように本人に言われている。エルも母さんに似ているが、可愛いと言うよりは綺麗という方が正しいだろう。


「今日から学園ねぇ~。ウル君が居なくなると寂しくなるわね~。」

そう、エレミスチア学園は全寮制である。入学式してからは長い休みにしか帰ってこれないのだ。それも成績によりけりである。


「ウルト、悔いの無いように学園生活を楽しんで来なさい。」父さんは優しくそう言った。


「兄さん。・・・来年になったら私も行くから。・・・勝手に女作ってたら・・・・・・怒る。」

妹からはとてつもないプレッシャーを感じた。


「勝手に女って。エルは別に気にする事じゃな・・・・・わかりました勝手に彼女は作りません。」


妹の目は凄まじいまでの殺気を放っていた。奴は簡単に僕を殺れる。生物の本能がそう囁いた。


事実エルの能力ならば簡単な事だろう。


「ん、わかったならいい。変な男に言い寄られないように気を付けて。」



「何いってるの。僕は男だよ?男に言い寄られる訳ないでしょ。」可笑しなことを言う妹だ。


「・・・知らないということは幸せ。」

その先を聞いてはいけないそんな気がした。



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