凶悪ゴリラの撃退法
そのゴリラは狂っていた。
本来、ゴリラはとても温厚な動物である。
しかし人間による自然破壊により、そのゴリラの心も壊れていた。
ジャングルから遊園地の真っ只中へワープすると、憎き人間どもをジャイアントスイングしまくってやろうと、雄叫びをあげた。
深夜の0時だった。
その遊園地はとっくに閉園していた。
しかし特別に許可をもらい、深夜の遊園地でミュージックビデオの撮影に来ていたカメラマンと、三人の女性アイドルがそこにいた。
三人はミニ動物園の金網に挟まれた歩道を並んで歩いているところだった。
本番の撮影はこれからなのだが、カメラマンがカメラを回し、オフショットを撮影していた。
「なんか不気味だね」
メンバーで一番年下のワカが意地悪な笑いを浮かべ、呟いた。
「おばけとか出てきそう」
「や、やめて! やめて!」
一番年上のユカが大袈裟に怖がる。
「あたし怖いもの苦手なんだから……っ!」
「楽しいね」
真ん中のミユが月を見上げ、ニコニコ笑いながら二人に言う。
「誰もいなくても、やっぱり遊園地って楽しい」
突然三人の前に出現した巨大なゴリラに、カメラマンは「なんだこれ? ドッキリか?」と首をひねった。
しかしゴリラは天を揺るがす雄叫びをあげると、いきなり襲いかかってきた。
「うっ……! うわあーーーっ!?」
ワカが全速力でみんなを置いて逃げ出した。
「はひゃ……」
ユカは腰を抜かし、顔を体液まみれにしてその場にへたり込んでしまった。
「はは……、ひゃひゃ……」
カメラマンはドッキリだと信じてカメラを回し続けた。
ゴリラが腕を振り上げ、その胸を激しく叩く。
「わぁ……っ」
ミユが笑った。
「かわいいゴリラさんだ」
その場でぴょんぴょんと二回跳ねると、両手を上げた。敵意がないことを示すためだ。
白いワンピース姿の少女が自分を見て「かわいい」と言いながら笑っているのを見て、ゴリラは思った。
「尊い!」
そしてしばらくミユと戯れ合うと、満足して、またジャングルの奥地へワープで帰っていった。




