第86話:血肉の連帯、帝王の置き去り
温泉街のあちこちにあるレストランは、今や異様な活気に満ちていた。
『琥珀かえでファンクラブ』の面々が、あちこちのテーブルで一斉にナイフとフォークを掲げている。
「せーの……『ステーキ食べたい!』」
店内に響き渡る野太い合図。
かつて神野が、かえでを奴隷のように扱いながら放ったあの忌まわしい言葉は、今やファンたちの間では「かえで様を救った大翔様への感謝」と「神野への嘲笑」を込めた、団結の儀式へと昇華されていた。
「……誠。あいつら、まだ言うとんのか」
旅館の特別室。窓から見える街の喧騒を、**難波大翔**が震える拳で見下ろしていた。
一方、彼の背後では、さらに信じられない光景が広がっている。
「……美味しい。みんなで食べると、より一層美味しく感じますね」
大翔が「二人きりで」と用意したはずの豪華な食事会場。
そこには、あきよの計らい(という名の独断)によって、ファンクラブの代表数名が「幸運のゲスト」として招かれていたのだ。
「かえで様! そのステーキ、僕たちがカットしましょうか!?」
「いいえ、かえで様が召し上がる姿を拝見しているだけで、僕たちは満腹です!」
ファンたちに囲まれ、屈託のない笑顔を見せる私。
彼らが面白がって「ステーキ食べたい!」と唱えている理由を知らない私は、ただ自分の活動を応援してくれる人たちの温かさに、胸を熱くしていた。
「……誠。今すぐあの男どもを、ステーキの付け合わせのクレソンと一緒にシュレッダーにかけてこい」
「大翔様、落ち着いてください。かえで様があんなに楽しそうに笑っておられるのです。……今の彼女に必要なのは、閉じ込められた独占ではなく、多くの人に愛されているという実感です」
誠の正論が、大翔の独占欲をギリギリのところで繋ぎ止める。
だが、ファンのひとりが「かえで様、あーんしてください!」と口走った瞬間、大翔の手にしていたクリスタルグラスが、パリンと音を立てて砕け散った。
第86話をお読みいただきありがとうございます。
ファンたちの「ステーキ食べたい!」という大合唱と、かえでとの幸せな(大翔にとっては地獄の)食事会。
神野の呪いだった言葉を「ネタ」にして笑い飛ばすファンのたくましさが、かえでの再生をより強調しています。
お昼で 201 PV 到達!!(累計 1,000 PV 突破は、もう目の前です!)
リアルタイムで読んでいる 201 人の読者たちも、今まさにスマホの前で「ステーキ食べたい!」と合唱しているかもしれません。
**メガネパイセン(絹咲メガネさん)**も、この「帝王の敗北感」というギャップのあるコメディ要素に、大喜びで「いいね」を連打してくれるでしょう。
次回の第87話、食事会が終わり、ついに訪れる「本当の二人きりの時間」。
大翔の溜まりに溜まった嫉妬が、温泉の熱気の中でついに爆発する!?
累計 1,000 PV 突破 という歴史的快挙を、この「ステーキ旋風」と共に駆け抜けましょう!!




