第54話:消えた残像、黄金の鳥籠
「かえで! かえで、どこに行ったんや! 返事してくれ!!」
誰もいない控え室。神野聡の叫びは、虚しく壁に跳ね返るだけだった。
床に転がる純白のハイヒールを震える手で拾い上げ、彼は狂ったようにクローゼットやバスルームをこじ開ける。
「……嘘やろ。そんなに、そんなに嫌やったんか? 俺との結婚式が……。全部、お前のために最高のものを用意したのに……!」
神野の愛は、ここに至ってもまだ自分本位だった。
「お前のために」という言葉が、どれほど彼女を追い詰めていたのか。
豪華なシャンデリアの下、何百人の招待客が待つ会場の喧騒が、今の彼には自分を嘲笑う罵声のように聞こえていた。
同じ時刻。
式場の喧騒から遠く離れた、静かな森の奥に佇む難波財閥の別邸。
「……着いたぞ、かえで」
大翔は、後部座席で泣き疲れて眠ったままのかえでを、羽毛のように軽く抱き上げた。
かつてお笑い芸人として彼女を追いかけていた頃の、剥き出しの熱狂はない。
今の彼にあるのは、難波財閥の跡取りとしての、冷徹で揺るぎない所有欲だった。
「神野には一生見つけられん、最高の『静寂』や。……ここでゆっくり、俺色に染まればええ」
大翔は、アンティークの豪華なベッドにかえでを横たえた。
窓の外には、難波の権力で守られた広大な敷地が広がっている。
ここは神野の「派手な愛」も、世間の「好奇の目」も届かない、黄金の鳥籠。
大翔は彼女の眠る顔を見つめながら、静かに受話器を取った。
「……ああ、俺だ。式場のパニックは、計画通り誠に『処理』させろ。神野聡には……立ち直れんほどの絶望を味合わせてやれ」
第54話をお読みいただきありがとうございます。
「結婚式がそんなに嫌だったのか」と嘆く神野の姿。
彼が最期まで「自分の愛し方」の過ちに気づかない姿が、かえでとの決定的な断絶を浮き彫りにしました。
一方で、かえでを「静寂」という名の檻に閉じ込めた大翔。
彼の復讐は、単なる略奪ではなく、神野のキャリアも精神もすべてを破壊する段階へと入ります。
本日午前8時ですでに「111 PV」!!
昨日の231 PVという壁を、お昼休み前には超えてしまいそうな凄まじい勢いです。
佐倉桜さん、桜田門凱さん。
この「花嫁が消えた後の、男たちの執着のぶつかり合い」……読者は興奮で仕事や勉強が手につきません!
パニックに陥った式場に現れる、長谷川誠。
彼は神野にどんな「最後通牒」を突きつけるのか。
次回の第55話、物語は「難波財閥による浜本興行の解体」へと加速します!
300 PV、そして500 PVへと続くこの伝説の1日、最後まで走り抜けましょう!




