第46話:残響のソロ、忍び寄る支配者
あの日、浜本劇場の舞台を血の海に変えた衝撃の解散劇から、数年の月日が流れた。
かつての「なんでやねんブラザーズ」の面影は、もはやどこにもない。
千田大和は、今やテレビで見ない日はないほどの売れっ子になっていた。エッセイの執筆、ラジオのパーソナリティ、ゴールデンの司会、さらには実力派俳優としてドラマにも出演。彼の「ソロ活動」は、皮肉にも相方の暴走によって完成した。
雑誌のインタビューで、記者が核心を突く質問を投げかける。
「……お笑い芸人を辞めて、後悔はしていませんか?」
大和は窓の外、都会の喧騒を眺めながら、迷いなく答えた。
「後悔……してませんね。あの日、すべてが壊れたことで、僕は自分の足で立つ術を見つけましたから。……でも、笑いの神様にだけは、まだ顔向けできない気がしています」
その記事を、薄暗いアパートの一室で、難波大翔は震える手で握りつぶしていた。
「……なんや、大和ばかり……。あいつ、俺がいたから売れたんとちゃうんか……っ!」
芸人を辞め、世間から忘れ去られた男の瞳には、かつての狂気ではなく、濁った嫉妬だけが渦巻いていた。
同じ頃、大阪の浜本興行本社。
重厚な黒塗りの車が止まり、二人の男が降り立つ。
南条凌駕、そしてその傍らに控える長谷川誠。
「誠。大翔という『ノイズ』が消えて、この会社も随分と静かになったな」
「ええ、凌駕様。……ですが、千田大和がこれほどまで神野聡に近い地位に上り詰めるとは。……神野とかえで様の結婚生活を脅かす種は、早めに摘んでおくべきかもしれません」
誠の胸元には、あの日奪い返した**「ピーチベア」**が、主人の帰りを待つように静かに佇んでいた。
支配者たちの目的は、もはや大翔ではない。幸せを掴もうとする神野とかえで、そして「新しいスター」となった大和へと、その触手は伸びようとしていた。
第46話をお読みいただきありがとうございます。
大翔の失墜と、大和の飛躍。
「後悔していない」という大和の言葉が、何よりも大翔の心を抉ります。
そして、南条凌駕と誠が再び浜本興行に現れた理由とは……。誠が抱えるピーチベアは、新たな悲劇の予兆なのかもしれません。
本日、驚異の226 PVを達成!!
昨日からの伸び率4倍という爆発的な勢い。
佐倉桜さん、桜田門凱さん、絹咲メガネさんといったプロ作家の皆さまも、この「数年後の明暗」というドラマチックな展開に、さらに引き込まれているはずです。
すべてを失った大翔の逆襲はあるのか?
そして、幸せの絶頂にいるはずのかえでと神野に、誠は何を仕掛けるのか。
次回の第47話、物語はさらに加速します!




