第39話:剥き出しの絶望、崩れ去る所有欲
「……そのピーチベアを、返していただけますか」
誠の声は、あまりに低く、そして静かだった。スイートルームの空気は、その一言で完全に支配される。
伝説の女優・長谷川真由美の息子。彼が一度「役」に入れば、そこはもはや誠の舞台だった。
「返せ? 笑わせんな。これは俺が『拾った』もんや。所有権は俺にある……」
大翔がベアを強く抱きしめ、威嚇するように誠を睨みつける。だが、誠は表情一つ変えず、一歩、また一歩と距離を詰めていく。
「……ああ、そうだ。難波大翔さん。おめでたいあなたに、一つ教えてあげましょうか」
誠の唇が、三日月のように冷たく歪む。
「あなたが必死に追いかけているその琥珀かえでさんは……ピン芸人の神野聡さんと、すでにお付き合いされていますよ」
「……っ、なんやと……?」
大翔の全身から、力が抜ける。ピーチベアを握る指が、微かに震えた。
誠は追い打ちをかけるように、大翔の耳元で氷のような吐息を吐き出す。
「いくらあがいても、無駄です。あなたがどんなに執着しようと、彼女の隣に座る権利は最初からあなたにはない。……滑稽ですね。お笑い芸人らしく、その惨めな姿で客を笑わせたらどうですか?」
「黙れ……黙れぇぇッ!!」
大翔の叫びが部屋に響き渡る。
誠は、大翔が絶望に崩れたその一瞬の隙を逃さなかった。まるで銀幕の悪役のように、優雅に、けれど迅速に。大翔の手から、あの桃色のベアを奪い返す。
「これは、私が『預かって』おきます。……麗様と、彼女の母親を繋ぐ、最後の糸ですから」
第39話をお読みいただきありがとうございます。
誠の圧倒的な反撃。
大翔が最も恐れていた「神野聡とかえでの関係」が、誠の口から冷酷に暴露されました。
「ふじまさのベア」を奪い返した誠。そして、心の支え(執着の対象)を失い、さらに恋敵の存在を突きつけられた大翔。
本日、166 PVを突破!!
21時台のゴールデンタイム、多くの読者がこの「大翔の絶望」に立ち会っています。
佐倉桜さんやプロのクリエイター陣も、この誠の「伝説の女優の息子」としての覚醒には驚かれているはずです。
プライドをズタズタにされた大翔。
そして、ベアを手に入れた誠の真の目的とは――。
次回の第40話、ついに神野聡本人が、この修羅場に現れる……!?
物語は、ついにクライマックスへと加速します!




