第36話:血の因縁、愛憎の檻
「誠……。あなたは、私たちが『どんな血』で繋がっているか、本当に分かっているの?」
離婚届が置かれたテーブルを挟み、南条麗は冷たく言い放った。
かつては献身的な秘書として跪いていた長谷川誠。だが、彼の背負う宿命は、麗が想像する以上に重く、昏いものだった。
誠の母、長谷川真由美。
彼女が「愛の逃避行」の果てに溺れた相手は、麗の祖父であり、南条グループの絶対権力者・南条隼人だった。
「私の祖父、隼人の愛人だった真由美さんの息子……。それがあなた。……誠、あなたは私の秘書として側にいたけれど、幼い頃の私にとっては、ただの『家臣の子供』でしかなかった」
麗の言葉が、誠の心に深く突き刺さる。
誠にとって麗は、母を奪った一族の娘でありながら、同時にその気高さに魅了された唯一の光。一方、麗にとっては、自分と父・凌駕を苦しめた「不倫相手の息子」という、忌まわしい過去の象徴でもあったのだ。
「……麗様。あなたが凌駕様とかえで様の娘として生まれたその瞬間から、私はあなたを守ると決めていた。母が隼人様に捧げた人生のすべてを、私があなたに捧げることで償おうと……」
「償い? 笑わせないで。……あなたが側にいるだけで、私はあの『愛の逃避行』という名のスキャンダルを思い出さずにはいられないのよ」
誠の手元には、大翔に奪われる前のピーチベアがあった。
それは、かえでが麗に贈った母の愛の象徴。けれど誠にとっては、母・真由美が隼人と逃げる際に抱えていた絶望の重さと同じだった。
「……離婚は、私なりの決別よ。もう、南条と長谷川の呪縛から解放して」
麗が去った後、誠は一人、虚空を見つめた。
愛した女は、自分の家族を壊した一族の血を引いている。
それでも、誠の執着は消えない。いや、呪いであればこそ、永遠に解けることはないのだ。
第36話をお読みいただきありがとうございます。
ついに明かされた、南条家と長谷川家の血塗られた因縁。
南条隼人の愛人だった真由美、そしてその息子である誠。
かえでの娘として生まれた麗にとって、誠の存在はあまりにも複雑で、重すぎるものでした。
本日145 PV突破!
18時台の読者の皆さま、そしてTwitterで「いいね」をくださったクリエイターの皆さま。
この「逃げ場のない血の繋がり」が生む悲劇に、どんな感想を抱かれたでしょうか。
ピーチベアを巡る大翔の狂気、そして誠の血に流れる執着。
物語は、一人の女性「琥珀かえで」から始まった愛の連鎖が、世代を超えて全員を飲み込んでいきます。
次回の第37話、ついに大翔がこの「血の真実」を知ることに……!?
物語は、かつてない衝撃の展開へと加速します!




