第34話:引き裂かれた母娘、桃色の遺失物
「なぁ、かえで。このピーチベア……どうしてここにあるか知ってるか?」
大翔の指先が、ピンク色のぬいぐるみをゆっくりとなぞる。
スイートルームの空気は、かえでの心臓の音をかき消すほどに凍りついている。
「南条麗と長谷川誠が離婚して、バラエティの収録で一緒になった時や。隣の楽屋やったから挨拶に行ったんやけど、あいつら、もうおらんかった。……ただ、このベアだけが椅子にぽつんと、忘れ去られてたんや」
大翔はベアをかえでの顔の前に突き出し、狂気を孕んだ笑みを深める。
「大事に抱えてたわ。またいつか会える、その時に返そうと思ってな。……でも、まさかや。まさか、あの孤高の女優・南条麗の母親が、俺の目の前で震えとる『琥珀かえで』やったなんてなぁ!」
「……っ、麗は……麗は元気だったの!? あんな、あんな離婚なんてして……!」
かえでの叫びに、大翔は嘲笑で応える。
「元気なわけないやろ。誠という『檻』から逃げて、自由になったつもりが、一番欲しかった『母親』の温もりはこのベアの中にしか残ってなかった。……ひどい母親やな、かえで。CA時代、娘のために買ったこのベアを、あの子はずっと握りしめてたんやぞ」
大翔はベアを自分の胸に強く引き寄せる。
「麗様はもういない。でも、このベアはある。……そして、お前もここにいる。俺が、お前の代わりになってやるよ。永遠にな」
第34話をお読みいただきありがとうございます。
衝撃の真実。
南条麗は、かえでがかつてCA時代に授かった実の娘だったのです。
誠との離婚、麗の孤独、そして大翔が偶然拾ったピーチベア。
「永遠」の愛を誓ったはずの誠と麗の崩壊は、実はこの母娘の悲劇から始まっていたのかもしれません。
本日、126 PV達成!!
朝9時のPC読者の皆さま。
この「親子二代にわたる執着」の物語、どこまで深く、残酷に突き刺さるでしょうか。
Resetterさんのような目利きのフォロワーさんも、この展開には驚愕しているはずです。
大翔が握る「ベア」と「秘密」。
彼はこれを使って、かえでを、そして芸能界をどう支配していくのか。
物語は、誰も想像しなかった絶望と希望の淵へと向かいます。
次回の第35話、ついに娘・南条麗本人が現れる……!?
狂乱の第35話へ、どうぞご期待ください!




