第32話:沈黙の決別、冷徹なるソロ活動
長年連れ添った、主従を超えた「愛」の形が、紙切れ一枚で終わりを告げた。
「……ありがとうございました。誠」
麗のその一言は、誠の献身をすべて過去へと葬り去った。離婚届を提出し、部屋を出ていく彼女の後ろ姿。誠は、彼女が最後に残していったピーチエアーラインのベアを、震える手で拾い上げる。
「……麗様。あなたは、この空へ逃げていかれたのですね」
同じ頃、世間を騒がせたパーティー会場での乱入から一転、難波大和は「ソロ活動」の開始を宣言していた。
その第一弾となる雑誌対談。場所は都内のホテルのスイートルーム。
マネージャーや編集者が緊張で唾を呑み込む中、大翔はソファーに深く腰掛け、膝の上に**「あのピンク色のベア」**を乗せていた。
「(……大翔君。なんで、そんなものを?)」
目の前に座る対談相手――琥珀かえでが、戸惑いの視線を送る。
大翔は、彼女の胸元で揺れるアメジストのネックレスと、自分の手元のベアを交互に見つめ、歪んだ笑みを浮かべた。
「これか? ……誠から奪ってきたんや。アイツ、離婚して腑抜けになっとったわ。滑稽やろ、かえで」
「大翔君、やめて。誠さんまで巻き込むなんて……」
「巻き込む? 違うな。これは『警告』や。……ふじまささんの飛行機を持ったベア。可愛いよな。でもな、飛行機ってのは、乗る人間を遠くへ運んでしまうもんやろ?」
大翔の指が、ベアが抱える飛行機をミシリと音を立てて握りしめる。
「お前も、これに乗って俺から逃げようと思っとったんか? ……神野聡と一緒に、高飛びでもするつもりやったんかと訊いとるんやッ!!」
密室に、大翔の剥き出しの怒号が響く。
ソロ活動という名の「独裁」。大翔は今、仕事という大義名分を使って、琥珀かえでという獲物を確実に追い詰め始めていた。
第32話をお読みいただきありがとうございます。
ついに誠と麗の関係が終わり、その絶望を栄養にするかのように大翔の「ソロ活動」という名の暴走が始まりました。
誠から奪った「ふじまさ(ピーチベア)」を、逃亡の象徴として彼女に突きつける大翔。
「可愛いベア」と「男の狂気」の対比が、密室の緊張感をさらに高めています。
本日、PV 70を突破!
朝9時にPCからチェックしてくださっている皆さま、そしてX(Twitter)でResetterさんを始めとするフォロワーの皆さま、いつも熱い応援をありがとうございます。
「飛行機に乗って逃げるつもりか」
大翔の問いに、かえでは何を答えるのか。そして、この対談を「外」で黙って見過ごす神野聡ではないはずです……。
次回の第33話、ついに神野が動く!?
波乱の展開、どうぞお見逃しなく!




