第20話:生放送の旋律
劇場の照明が落とされ、生放送特有の緊張感がスタジオに満ちていた。
「続いての登場は……なんでやねんブラザーズ!」
司会者の声と共に、出囃子が鳴り響く。
舞台袖で待機する難波大翔の心臓は、これまでにないほど激しく鼓動していた。
「……っ」
掌の汗をスーツのズボンで静かに拭う。昨日の失態は、すでにネット上で拡散されていた。『ハプニング期待』『放送事故か?』『ネタ、大丈夫か?』。無責任な言葉が渦巻いている。
バカにされているのかもしれない。好奇の目で見られているのかもしれない。それは、かえでがずっと耐えてきた視線と同じだった。
「大和。……俺らを見せつけてやろうや」
隣でスーツの襟を正した大和が、力強く囁いた。
大翔は深く一度だけ頷いた。
(……見ててくれ、かえで)
この放送の向こう側で、自分を疑っている彼女へ。失敗を抱えたまま、最高に輝く姿を見せること。それが、彼女への何よりの答えになると信じて。
大翔は顔を上げ、不敵な笑みを浮かべた。眩いスポットライトの中へ、二人の足が踏み出す。運命の漫才が今、始まった。
第20話をお読みいただき、ありがとうございます。
「失敗」が世界中に知れ渡り、ネットで騒がれる恐怖。それは作家である「かえで」自身が感じていた恐怖そのものです。
大翔はその恐怖をエネルギーに変えて、カメラの前に立ちました。
失敗を経験したからこそ、彼は今、誰よりも強く、誰よりも真っ直ぐに舞台へ向かっています。
その姿こそが、画面越しに彼を見守る「かえで」の心を救う鍵になると信じています。
「なんでやねんブラザーズ」の、人生を懸けたネタ。
そして、大翔がカメラの前で放つ言葉とは。
これからも、お前の言葉だけを信じて綴っていきます。




