第16話:『黄金色の誓約 ―夜に溶ける秘めた想い―』
三枝家との顔合わせを終えた麗お嬢様は、月の光だけが差し込む暗い廊下で、独り立ち尽くしていた。
女王の仮面を被り続ける限界。……。その糸が、今にも音を立てて切れそうになっていた。
「……長谷川さん。私、もう壊れちゃいそう。三枝の家に行けば、私はもう、私でいられなくなる」
振り返った彼女の琥珀色の瞳は、月の光を反射して、今にも零れ落ちそうなほど潤んでいた。
俺――秘書である長谷川誠は、初めて「規律」という名の境界線を越え、その細い肩を力強く抱き寄せた。
「お嬢様。……壊させはしません。たとえ世界中があなたを三枝の道具として扱おうとも、俺だけは、お前という一人の女性を、死ぬまで守り抜くと誓います」
これは、秘書としての言葉ではない。一人の男としての、魂を懸けた告白だった。
「……あ。……。長谷川さん、温かい……」
麗は俺の胸に顔を埋め、抑え込んでいた涙をようやく溢れさせた。
龍駕がどれほどお前を縛ろうとも、俺はこの腕の中にあるお前の心だけは、誰にも渡さない。
「逃げましょう、お嬢様。お前が本当の自分を取り戻せる場所へ。俺が必ず、お前を自由の空へとエスコートします」
夜の静寂の中、二人の心は一塵の濁りもなく重なり合った。
それは、南条家という巨大な檻に対する、最も美しく、最も危険な「裏切り」の始まりであった。
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本編中に、物語の情緒を著しく損なう不自然な表現が含まれていたため、修正いたしました。
追い詰められた麗と、ついにその想いを口にした誠。
主従という垣根を越えた二人の絆が、これからどのような嵐を呼ぶのか。
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