第11話:黄金色の枷―三枝財閥の冷徹の誘い―
南条家の夜は、不気味なほど静まり返っていた。
応接室では、龍駕が三枝財閥の使者と向かい合い、冷酷な「未来」について語り合っている。
「麗を三枝の嫡男に嫁がせる。それが、両家の繁栄を約束する唯一の道だ」
龍駕の言葉に、扉の向こうで立ち聞きしていた麗お嬢様は、崩れ落ちるようにその場に膝をついた。
女優として成功すれば、ママに会える。そう信じて茨の道を歩んできた彼女にとって、政略結婚という名の鎖は、すべての希望を奪い去る死告状も同然だった。
「……嫌。私は、誰の道具にもならない。ママに、まだ会えていないのに……ッ!」
麗の琥珀色の瞳から、大粒の涙が零れ落ちる。
その震える肩を抱き寄せたのは、やはり俺――秘書である長谷川誠だった。
「お嬢様。……お静かに。旦那様の耳に入れば、お前の自由は今度こそ完全に奪われてしまう」
俺は彼女の涙を親指でそっと拭い、その耳元で鋼のような意志を込めて囁いた。
「三枝の鎖など、俺がこの手で断ち切って差し上げます。お前を救い出すための計画は、すでに始まっている。……今はただ、俺を信じて、完璧な女王を演じ続けなさい」
麗は俺の胸に顔を埋め、声を押し殺して泣き続けた。
龍駕が麗を高く売ろうとするならば、俺は彼女をこの檻から盗み出す。
二人の間に芽生えた危うい「裏切り」の芽が、南条家の静寂を静かに侵食し始めていたのである。
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本編中に、物語の没入感を損なう不自然な表現が含まれていたため、修正いたしました。
政略結婚という大きな壁に直面した麗。彼女を救うと誓った誠の「反逆」。
二人がこれからどのような決断を下すのか。一文字ずつ大切に綴ってまいります。
初投稿で至らぬ点も多いですが、麗の運命を応援してくださる方は、評価やブックマークをいただけますと大変励みになります!




