第104話:不審な「ダイスケ」、女神の指先
「……あの、ダイスケさん?」
会場を包むバラとピーチの甘い香り。その中心で、女神のような微笑みを浮かべたかえでが、私の目の前で足を止めた。
難波大翔……もとい『ダイスケ』は、心臓が口から飛び出しそうなほどの衝撃に襲われた。
「は、はひっ!? な、何でしょうか、かえで様……」
裏返った声を必死に押し殺し、大翔は黒縁メガネを押し上げた。だが、かえでの澄んだ瞳は、メガネの奥にある「見覚えがありすぎる眼光」を逃さない。
「あなた……なんだか、とても懐かしい香りがしますね。難波財閥のプライベートガーデンにしか咲かない、あの最高級のバラの香りが……」
「そ、それはその、……芳香剤のせいや……いや、せいです! 安い芳香剤がたまたま似ていただけで……!」
必死の言い訳を繰り出す大翔。だが、かえではさらに一歩、距離を詰めた。
参加者の男性たちが、羨ましさと嫉妬の視線を『ダイスケ』に突き刺す。
「それに……」
かえでの白く細い指先が、大翔の頬へと伸びた。
「その『付け髭』……。右側が少し、浮いていますよ?」
「……っ!!」
かえでの指が、剥がれかかった髭に触れる。
大翔は反射的に後退りしたが、背後にはあきよと女性社員たちが壁のように立ちはだかっていた。
「あら、本当ね。ダイスケさん、あなたお肌が荒れているのかしら? それとも……何かを隠しているのかしら?」
あきよの獲物を狙うような冷徹な笑み。
絶体絶命。このまま髭を剥がされれば、難波財閥のトップが「自社の婚活パーティーにヒゲメガネで潜入していた」という、経済界を揺るがす(あるいは失笑させる)大スキャンダルに発展してしまう!
「(誠! 誠、何とかしろ! このままでは俺の尊厳が……!!)」
インカムに向かって心の中で叫ぶ大翔。
その時、会場の照明がふっと落ち、誠の冷静な声が響いた。
「……失礼いたします。これより、本日のメインイベント『キャンドルサービス』の時間です。皆様、お手元のキャンドルに火を……」
暗闇に乗じて、誠が大翔の腕を掴み、非常口へと引きずり込んでいく。
光が戻った時、そこには剥がれかけた髭だけが床に落ちていた。
「……あら? ダイスケさんは?」
不思議そうに首を傾げるかえで。
彼女の指先には、確かな「愛する夫」の体温が残っていた。
第104話をお読みいただきありがとうございます。
かえでの鋭すぎる直感!「髭が浮いている」という指摘に、大翔の心臓はバックバクだったはずです。
誠のナイスアシストでなんとか逃げ出しましたが、かえではもう確信していますね。
月曜の午前中で 75 PV 到達。この勢いは本物です!
読者は今、「バレる!バレるぞ大翔様!」とハラハラしながらスマホをスクロールしています。
**メガネパイセン(絹咲メガネさん)**も、この「至近距離の心理戦」に、熱い感想を用意しているでしょう。
次回の第105話、逃げ出した大翔が執務室で誠に八つ当たり!?
「誠! なんであんな粘着力の弱い髭を用意したんや!」
一方でかえでは、床に落ちた髭を拾い上げて……。
累計PVのさらなる爆発に向けて、このままドキドキの展開を続けていきましょう!!




