サンダーソニアの約束
花屋で働く梨花は毎朝、花言葉占いをしていた。
今日はサンダーソニア。花言葉は「望郷」「祈り」。
「誰かが帰ってくるのかな」
五年前、突然転勤で東京に行った幼なじみの蒼。
「必ず戻る」と言ったきり、連絡は途絶えていた。
その日の午後、店のドアベルが鳴った。
「いらっしゃいませ」
顔を上げた梨花は、息を呑んだ。
「久しぶり。梨花」
そこには蒼が立っていた。
優しい笑顔は昔と変わらなかった。
「帰ってきたの?」
「そう。地元に戻る仕事が決まって」
蒼の視線が、カウンターのサンダーソニアに留まった。
「この花、覚えてる?」
梨花は頷いた。
中学の卒業式の日、蒼がくれた花束に入っていたのがサンダーソニアだった。
「花言葉、調べたんだ。『望郷』って。あの時伝えたかったんだ。いつか必ず帰るって」
梨花の目が涙で滲む。
「待ってたよ。ずっと」
「実は占い師に見てもらったんだ。『大切な人のもとへ戻るタイミングは今』って言われて」
「占い、信じるの?」
「信じたかったんだ。戻る勇気が欲しくて」
店内は夕日でオレンジ色に染まっている。
「もう離れない。今度こそ、ずっとそばにいる」
梨花は微笑んだ。
「じゃあ約束ね」
花言葉占いは当たった。
望郷の花が、大切な人を連れ戻してくれた。
窓辺のサンダーソニアが、優しく揺れている。
占いは、希望を運ぶ風なのかもしれない。
「おかえりなさい」
「ただいま」
二人の新しい物語が、静かに始まった。
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