第44話 デート
騎士学園の行事は模擬演習。
戦いはボードゲーム上で行われる。
ウォーシミュレーションゲームだな。
判定もサイコロを振って行われる。
運の要素もあるが、索敵とかちゃんとやらないと、包囲されたり、各個撃破されたりする。
とにかく時間の掛かる戦いだ。
1戦には4時間は掛かる。
ひとつの台で一日にできるのは2人だけだ。
台は30ぐらいあるから、60人だな。
こういうゲームは好きだが、時間が掛かるのでそこが難点だ。
なのでわざと負けた。
卒業資格があるなら手を抜いても構わない。
あと10日はこの催しは続く。
纏まった休みができたわけだが、どうしよう。
フラッチェ達3人のレベルは60を超えている。
大抵の敵には立ち向かえるはずだ。
そう言えばシャリアンヌとデートしたことがない。
デートでもしてみるか。
ブタキムの記憶にもデートの記憶はない。
ブタキムはクズなので、まめに女達のご機嫌を取るなどという考えはなかったようだ。
「デートですか? 嬉しいなんて思ってませんわ。勘違いしないように」
シャリアンヌは嬉しそうだ。
照れ隠しの毒舌をいただきだ。
「デートは久しぶりね」
「私は初めてです。奴隷教育でも、そういうのはありませんでした」
狙撃が怖いから、3人に念動バリアを張ってもらう。
3重なら流石に突破できないだろう。
街を歩いていると案の定、ポロリと弾丸が落ちる。
デートを血で穢したくないから、反撃はなしだ。
なんて言うかと思ったか。
「フラッチェどこだ?」
「【鷹目】、あそこよ」
屋根の上に人が見えた。
「【供与】、弾丸」
体の中に弾丸を埋め込んでやった。
ざまぁみろ。
埋め込まれた奴は屋根から転げ落ちた。
場所が悪かったのだな。
だが知るものか。
命を狙う奴が悪い。
デートプランだが、劇場はパスした。
演劇の発展具合が前世の日本ほどではないからだ。
つまらん劇ほど時間の無駄だ。
街路樹が立ち並ぶ一角にやって来た。
「【供与】、魔力」
通りの樹の枝、全てに、魔力を与えた。
魔力がぼうっと青い光を発した。
イルミネーションだ。
夜ならもっと綺麗だが、シャリアンヌの許可が出ない。
さすがに理由もなしに婚約者といえども嫁入り前の令嬢を泊まらせるわけにはいかない。
シャリアンヌにはいつもメイドが片時も離れずに付いている。
俺と二人きりの場面はない。
シャリアンヌに魔力棒で魔力を与えている時もメイドは見ている。
前は顔を赤くしてたが、いまでは平然としたものだ。
「綺麗ですわ」
「夜ならもっと綺麗だ」
「庭園に薔薇でアーチを作りましょう。光らせて頂けますよね」
「ああ、結婚したら、一緒にくぐろう」
フラッチェもこの光景は初めてだったらしい。
目を見開いている。
「お金取れるわね」
「フラッチェさん、ロマンがありませんわ。初夜を迎える新婦がお姫様抱っこで光のアーチをくぐる。とってもロマンチックですわ」
「ロマンじゃ腹は膨れないけど、たまには良いわね」
「楽しいです。楽しいは正義です」
「ディータさんは、ロマンが分かっているようですわ」
「分かるわよ。ただ青色じゃなくて他の色も欲しいわね。ピンクとかロマンチックかも」
魔力の光の色は青だ。
これは変えようがない。
性魔法だったら多彩な色の光を出せるかもな。
さて、次のデートスポットは。
ネジル神殿の鐘だ。
俺達がネジル神殿に着くと、ゴーンゴーンと鐘が鳴った。
そして一斉に鳥が飛び立つ。
ばえる風景だが、いまいちだな。
「中に入ろう」
ガラス製のエゴの前で平和の祈りを捧げる。
「【供与】、魔力」
エゴ神を光らせる。
うーん、二番煎じ感が否めない。
「決戦の時は近い」
誰だ。
きょろきょろと辺りを見回すと、声の主らしきひとはいない。
これが神託なのか。
決戦の時か。
邪神教徒との決戦かな。
まあ別に良いか。
引いたおみくじには、大難の兆しあり、嵐の後には晴天が来るとある。
意味深だな。
フラッチェがミニチュアのガラス製のエゴ神像を買う。
意外だな。
「何?」
「いやさっきロマンじゃ腹は膨れないと言っていた人の行動とは思えなくって」
「おっぱいの神なんでしょう」
「まあな」
「じゃあ崇めないと」
フラッチェは豊胸施術の第1号だったな。
あれからネジル教が始まったと言っても良い。
そして、露店で買い食いして、最後は噴水広場に行った。
楽器を演奏している芸人がいるので、楽器ケースに金貨を投げ入れる。
「盛大に頼む」
芸人は頷くと壮大な感じの曲を奏でながら、踊り始めた。
「何て曲だ?」
「飛翔ですわ」
芸人は答えずにシャリアンヌが答えをくれた。
飛翔か。
曲調はおどろおどろしい物に変わった。
そして再び壮大な曲調に戻った。
危機があって乗り越えたという感じなのかな。
俺は負けない。
いや、シャリアンヌ達がいれば俺は負けない。
そうじゃないな。
みんなで危機を乗り越えるんだ。
「ですわね。みなさんで乗り越えるのですわ」
「任せて。活躍に期待して良いわ」
「ご主人様の命令なら、どんなこともこなします」
俺は口に出してたか。
いや独り言を言ってないはずだ。
神託の余波かな。
エゴ神が干渉しているのかも。




