第40話 解体実習
今日の騎士学園はモンスターの解体実習。
ウルフ系モンスターが生徒の数用意された。
「フラッチェ、出番だ」
「やらなくて良いの?」
「騎士が解体する機会なんてない。知識としてどんなものか知っておくだけだ」
「かもね」
フラッチェが手際よくウルフ系のモンスターを解体する。
みんなその様子を羨まし気に見ている。
解体が一日で会得できるわけない。
だからみんな、毛皮を剥いでも使い物にならないし、肉もほとんど食えない。
もっともウルフ系モンスターの肉はあまり美味しくない。
解体実習は、解体した肉の焼肉で終わるようだ。
だが食えない奴が続出。
たぶんそういう意図で企画されているんだろうな。
これぐらい食えないと、戦争に行って生き残れないぞとでも言いたいのだろうな。
戦争はこの30年は起こってないけどな。
30年前も小競り合いという程度のものだ。
モンスターの脅威があるから、他国に手出しする余裕がない。
それに大人数が動くとドラゴンみたいなモンスターを招き寄せる。
モンスターにしたら餌の大群がきたぞ、食いまくるぞってなことを思うのだろう。
都市は城壁があってバリスタみたいな強力な武器があるから、手を出すと痛いということは分かっているらしい。
そんなことを考えながらパクパクと焼肉を食べた。
ネジル教徒が売っている醤油ベースのたれは美味し。
甘辛い味がなんとも言えない。
食えないと減点みたいで、我慢して目をつぶって食っている奴がいる。
やばいのは吐きそうな奴だ。
用意の良い事にバケツも用意されている。
毎年やっているから分かっているのだろうな。
吐いた奴はゲロと共に退場になった。
ゲロの匂いを消す消臭剤も使われているようだ。
そこはまだ甘いな。
もっとも、もらいゲロが多数出ると困るんだろうな。
騎士学園ならではの行事であることには間違いない。
余った肉は干し肉やタールの餌になった。
タールの餌代が浮くのは嬉しい。
干し肉も全部貰えるみたいだし。
内臓や食えない肉はネジル教徒が腐らせて肥料に変えた。
骨が大量に余ったので、焼いて肥料にすることを提案。
「【性魔法】、炎領域展開」
ディータが炎を展開する。
そこに骨が投げ入れられる。
ディータには魔力ブラと、魔力パンティと、魔力棒があるので、魔力は尽きない。
3時間ぐらい焼いて、肥料は完成。
「ブタキム殿、貴殿と従者がいればどんな敵軍もモンスターも敵わないのだろうね」
教授にそう言われた。
「誰にも負けるつもりはない。国で一番の強者だと思っている」
「だろうね。ところで引退した後はこの学園の教授をやって見る気はないかね。本当は卒業と同時にやってもらいたいぐらいだ」
「頭の隅には置いておこう」
今日の行事で意外だったのは、リードが吐かなかったことだ。
それどころか、パクパクと焼肉を食ってた。
ライラは少し吐きそうだった。
ライラは弱いな。
お節介かも知れないがライラに手を貸してやろう。
シャリアンヌ、フラッチェ、ディータを貸し出すのだ。
ライラはパワーレベリングに同意した。
「何であなたが付いてくるのよ」
「俺は見ているだけ、手助けはしない」
「分かったわ。さあやって」
「【性魔法】、電撃領域展開ですわ」
「【性魔法】、電撃領域展開。」
「【性魔法】、電撃領域展開します」
電撃領域を展開する。
死ぬほどでない電撃を食らうとどうなるか知っているか。
筋肉が硬直痙攣して、しばらく怠くて力が入らない。
集落のオーク全員が、弱体化された。
ライラが止めを刺して回る。
死んだオークをネジル教徒がすぐさま解体した。
タールが嬉々としてオークの内臓を食った。
ライラはその様子を目に入れまいとしている。
神経をもっと図太くしないと生き残れないぞ。
「ねぇ、あなたは私の今の行為をどう思っているの?」
「パワーレベリングだなと、それだけだ」
「罪悪感も何も感じないのね」
「モンスターとの戦いは生存競争だ。恐らくモンスターに慈悲を与えたら、人間は滅びる。俺は死にたくないんでな」
「生きるためなら赦されると。あなたの正義はそこにあるのね」
「なら聞くがライラの正義はどこにある?」
「私は自分の良心に従うわ。だから子供のオークは殺せない」
「さっきから子供のオークを殺してないのはそれか。あやふやだな。そんな正義は通用しないと思うぞ。俺はそいつが将来害をなすなら殺す。このオークの子供が大きくなり、人間に復讐心を覚えて、害を成したらどうする?」
「その時は責任をもって退治するわ」
甘いな。
その甘さが裏目にでないと良いがな。
「分かったよ。好きにすると良い」
そう言って俺はオークの子供を殺した。
「手は出さない約束だったじゃない」
「俺の正義に従ったまでだ。被害が出たらその人に謝る言葉がないのでな。今のうちに芽は潰しておく」
「来るんじゃなかった」
パワーレベリングは悪じゃないのか、
ライラの良心はあやふやだ。
「辞めるか? 力なき正義はないも同じだと思うぞ」
「正義がない力はどうなのよ?」
「悪だな。だが俺は悪を否定しない。生き残るのなら悪にもなろう」
「あー、何でこう上手く行かないのかしら。あなたみたいな力があったらって何度も思ったわ」
「俺になんで力があるのかなんてのは無意味だ。不公平が当たり前なんだよ。唯一公平って言えば、人間に限らず全てのものは滅びるってことぐらいかな。たが懸命に生きることを否定したら何も生まれない」
「生きるのを正義としたあなたは強いわね。でも正義に優劣なんてないと思っている。私は私の考えで行くわ。大人のオークしか殺さない」
ライラの考えが間違っているとは言わない。
正解なんかない問いだからな。
ただ俺は生きるために力を使う。
それだけだ。




