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赫の神は休めない  作者: sei10


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10 不審者な槍女

初ブクマ嬉しいな☆

「よし。じゃあ今日はもう自由にしていい.... と言いたいところだが、今日はここで寝泊まりしてくれ。飯はこっち」


ネムが意識を失っているうちに配給所へと受け取りに行った、黒パンとぬるいスープを横の机に置いておく。あと、ついでに革袋も横に添えておいた。



「吐くならこっちにな。じゃ、俺はまた明日の朝に来るから」



そう言って、俺は地下室を後にした。


薄暗い階段を登りきると、ステンドグラスを通して色鮮やかな夕日が差してくる。地下室への入口は、新兵訓練場(ブートキャンプ)のタコ部屋に併設された教会に設置されているのだ。


一神教である光神教の信仰者は、この帝国においてもかなり多い。そして、偶像崇拝とは精神を追い込まれた新兵にとって、心の拠り所としてこの上ない柱になることもある。命の危険とは縁遠い現代でもスピる人間が多いのだから、今日明日にでも死ぬかもしれない兵士が偶像にすがることで精神を保つのも無理のない話だろう。


とまぁ、そう言った意味合いもあって、前線にほど近いココにも簡易的な教会が設置されていた。


「でも、金食い虫なんだよなぁ」


光神教の教義において、四元素魔術とは光属性の魔術.... 神聖術から派生したモノとされている。ゆえに、唯一神である光神と同一視される太陽の光を様々な色に変化させるステンドグラスは、女神像と十字架と共に必ず設置すべき物として指定されていた。


中世ヨーロッパ並みの水準しかない技術力で、ガラスを加工するのはかなり難しい。ゆえに金が飛ぶ。主に伯爵家.... つまりは俺の金が。


しかも、ガラスは贅沢品に分類されるので、税金も超かかる。それが補給基地と前線基地と砦で三つ。さっきも触れた貴族相手の商売で得た金も一瞬で消し飛ぶ額だ。これって普通は領地の運営費で賄うべきだよな.... どうして俺の財布から出て行くの? バカなの?


「はぁ.........」


周囲に人の気配がないことを確認して、俺は深いため息をついた。そうして女神像の裏手にある隠し扉に刻まれた人払いの魔術が起動したのを確認してから、周囲の新兵に紛れて教会を後にした。




そして、日もどっぷりと沈んだ丑三つ時。俺は一人、気配を殺して大森林にほど近い広場へと足を運んでいた。


ヒュンヒュンと、空を切る槍の心地いい音が耳をなでる。その演舞にも似た槍の型は、月光も相まってとても神秘的に見える。


上品な深い紫色のドレスには、大立ち回りの邪魔にならないようにと深いスリットが入っている。しかし、その見えそうで見えない絶対領域が、俺の前世の(さが)ゆえに目を引いていた。俺の今世の相棒が全く反応していないのがちょっと複雑。


「物騒な仙女ってところだな」


こちらの気配に気づいた彼女は、その槍を影に落とすようにしまう。そして、こちらに歩み寄って来た。


「お褒めの言葉は素直に受け取っておくとしましょう。で、今日は何か.... お姉さんにお願いでもある感じ?」


「アタリだよ、弟子を取るつもりはある?」


彼女は不思議そうな表情を浮かべた後、さも当然かのように言葉を吐く。


「キミは私の弟子じゃあないか! 二番弟子はまだ受け付けてないよぅ?」


「誰が弟子だ」


確かに、俺はこの身元不明な槍女とたまーにここで会っているが、間違っても師弟関係など結んではいない。しいて言うなら、魔法の試し打ち相手か... それか、体術の実戦稽古相手だ。


「とにかく、私は君意外に弟子を取るつもりはない! まぁ、君が私を選んでくれたのはうれしいけど~」


「いや、お前以外に闇魔術を扱える人を知らないから頼んでるだけ」


「そ~れ、頼りになるのは私だけって.... ことぉ? お姉さん嬉しいなー!」


「うっざー」


コイツは不本意ながら、俺より数段上の実力を持っている。それこそ、俺はこの女の身元を調べるために、時には武力で、時には罠でと、様々な手を尽くした。時には人手を募ってここら一帯をくまなく包囲したが、どうやっても逃げられる。


もうこの女を捕まえようとすることは無駄だと、そう諦めてしまったのだ。


目の前の、ウザいくらいのドヤ顔を披露する女。


黙っていれば妖艶な美女.... しかし、性格が幼いのが玉に(きず)だな。俺の前世で苦手だったねーちゃん.... それも小学生の頃の言動と完全一致だ。ま、見た目は似ても似つかないが。


特に目立った身体的特徴が無いので、種族は推定人族。漆黒の、前世の日本人を想起させるような黒髪に、引き締まるところは引き締まって、出るべきところはちゃんと出ている。そんな女性と戦士の理想的なスタイルを兼ね備えている。


得物は槍ときどき(こぶし)で、俺は今まで一度として土をつけたことがない。加えて闇魔術にも秀でていると来た。本当、どこから湧いて来たんだか....


そうして満足したのか、大きな岩に腰を下ろした彼女は、足をふらふらさせながら言う。


「そういえばー、前に攻めて来た魔人族。アイツらはどうなったの?」


「機密情報.... まぁ、尋問中」


「そいつら、防壁を消し去れるくらいには闇魔術を使えるんでしょう? なら、そっちに聞けばいいんじゃない?」


「あー.... その手があったか。よし」


用は済んだとばかりに、俺は補給基地の方に向かって歩き始めた。しかし、後ろからまた彼女が声をかけてくる。


「えー もうー? 今日は()らないのー?」


そんなセリフと共に、ズバンッ! ズバンッ!と、シャドーボクシングの要領で空を割く拳の音が聞こえる。いくら身体強化をしているからって、打ち込みで衝撃波(ソニックブーム)を連打する人外の相手なんて....


いや、まぁ相手できる俺もどうかと思うけど、普通に疲れるからパスだ。


「お前と違って、俺は忙しいの」


「ちぇー」



拗ねたような声を背に、改めて足早にその場を去ろうとして....


「孫弟子ちゃん、一人前になったら連れてきてねー! ばいばーい!」


「はぁ....」


軽く挙げた手を左右に揺らし、俺は広場を後にした。

リアクション 喜び Lv.1

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評価     喜び Lv.3

感想     歓喜

レビュー   狂喜乱舞

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