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赫の神は休めない  作者: sei10


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9 戦場初心者の魔術入門

夕方、日の沈む水の刻にネムは目を覚ました。


しかし、ベットの柵を掴もうとした手は空をつかむ。平衡感覚が掴めないのだろう。魔術による麻痺でたまにある副作用だ。


不格好に転げ落ちたネムをベットに寝かし、一応の忠告をしておこう。


「今日の晩は首が死ぬほど痛くて痒くなるだろうが、絶対に傷つけるなよ。触るくらいなら問題ないが、変に血が出るとまずいことになる。ま、一応の保険は掛けておくけどな」


その言葉を聞き、ネムは自然と手を首に当てた。その部分には赤黒い線が幾何学模様を成しており、首をぐるっと一周回っている。さながら、首に極薄のチョーカーでも付けたような見た目だ。


俺みたいな男とは違って、女性向けに開発されたこの刺青型魔法陣は、本来のところ太ももに刻む物だ。しかし、魔法陣は出来る限り多くの神経と血液が通っている場所にある方が効率的。よって、今回はそれを動脈と脊髄がある首に刻むことにしたわけだ。


そしてもう一つ。事前に用意していたチョーカーの宝石に、簡素な封印魔術を施しておく。ネムは攻撃魔術を扱えるわけでもないし、この細腕では魔術により強化したアイテムをそう簡単に引き千切れまい。剣とかナイフを押し当てない限りは大丈夫だ。


首の魔法陣を隠すようにチョーカーを取り付けて.... よし。


これで、俺が施せる直接的な強化は完了した。あとは、ネムがどれだけ俺が教える魔術と武術を吸収できるかにかかっている。しかし、それはひとえにネムの才能と努力量が成果に直結してしまう領分だ。


まぁ、俺としては出来る限りの”強さ”を仕込むだけだがな。




「まず一つ聞くんだが、生活魔術は使ったことある?」


「ん....」


首を横に振るネム。であれば、まず教えるべきはアレだろう。


「じゃあ今から言うことを真似してみろ..... 【闇よ(Σκοτάδι)在れ(να είσαι)】」


空を指した人差し指の先には、黒い霧のような闇が現れる。これが生活魔術というくくりで呼ばれる、最も簡単な闇の魔術だ。特殊な工程を必要とせず、ただ一言発するだけで行使できる魔術。


俺みたいに四元素や光と闇の魔術の素養が皆無な人間であっても、ある程度の魔力消費で行使できる。


たしか、それぞれの属性を司る精霊が存在していて、魔術の開祖たる賢王が精霊達と契約したことで、俺みたいなミジンコ並みの才能しかなくとも、詠唱さえできれば行使できるようになったとか。そんなお伽話があったはずだ。


実際、高位の元素魔術師は魔術によって四大精霊を召喚できるしね。結構信憑性のある仮説だ。



と、そんなことを考えているうちに、ネムはなけなしの魔力を振り絞り、魔術を発動させていた。


「わぁ.....」


たかが生活魔術でありながら、その適正に特化したネムは、周囲の灯りを完全に塗り潰すほどの闇を出現させていた。


魔術の中で最も容易に発動できる生活魔法は、魔術における基礎力が魔術現象に直結する。たとえば、魔術に込めた魔力の総量や、一度にどれくらいの魔力を供給できるか。そして、魔力を魔術に変換する効率など....


ネムの場合、午前の特訓で魔力を使い切っていたため、この魔術には雀の涙ほどしか魔力を注げていない。それに魔力の出力も、まだ魔力回路を開いたばかりのネムではそこらの見習い魔術師にも劣るだろう。


であれば答えは一つ。


圧倒的な魔力の変換効率... 魔術界においては、それを才能や適性、または精霊の寵愛と呼ぶ。




格差激しいなぁ.... 俺もせっかく転生したんだし、エクスプロージョン!とかやってみたかったよ。






いや、羨ましくなんてない! 俺はアバダケダブラできるし! 火の玉とか、強化した肉体の物理攻撃で跳ね飛ばせるしな!



はぁ...................





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