第93話『兄弟の覚醒』
「…まあいい、多少面倒にはなるが、意地でも俺に託させるように分からせてやるか。本当の体の持ち主は”俺”だということを…」
この一言が空間内に響き渡る中、俺は少し身構えながら次の一手を待っていた。
目の前のアウリスは何やら魔法陣を書き連ねているが、俺にはさっぱりわからない。このような魔法陣を見たとて、ファンタジー小説のように事細かに説明することはできない。そもそもの話、魔法なんて創作上で生み出された空想上の産物なのだから、どう説明しようとも説明しきれないのが本音である。
「…ハハッ!反撃するすべすらも持たないということか!無様なものだなぁ!」
…いや、待てよ?魔法って確か…イメージの具現化じゃなかったか?想像上の何かを思い浮かべたものを魔力に乗せて…あれ?だいぶ前の時に魔力を出したときは魔力っつー感じでやってなかった気がするんだけど…他で補ってたのか?まあいい、魔力をねん出させて魔法を放てば、特に何ら問題はないだろう。
「…その魔法陣、アレンジしたものだろう?」
「なっ…なぜそれを…!」
「感じたことのない魔力を感じ取れたからな。魔法とはイメージの具現化、魔法陣は魔法を持ち合わせたもののアレンジに過ぎない。アウリス、アレンジできるのが俺だけだと思うなよ?」
そう言い放たれた瞬間、俺の手元から放たれたのは、本来のアウリスには想像のつかないほどの闇と光に包まれた、想像を接する魔力の塊だった。
――――――――――
アウリスの体を乗っ取っていたレイは、自身の息子が反抗してきてもまったくもって冷静であった。そう、彼にとってはようやく訪れた反抗期としか認識していなかったのだから。ここまで自分を受け入れず、別の何かに依存したいと考えるのも、自立したい子供特有の反抗期なのだと、レイはそうとしか考えていなかったのだ。
「我が息子よ、落ち着くがよい。何も私はこの不埒で意地汚い貴族から息子を守ろうとしていただけなのだぞ?」
「うるさい!あなたはお兄様の良さを分かっていません!」
マルクは声を荒げてレイに反抗する。
レイが何を言おうとも、アウリスが自身の本当の家族であり、今までかかわってきた優しいクロドネス家が自身の本当の居場所であると、そう信じてやまなかったのだから。
「…魔力?我が息子に魔力が…?」
「力がみなぎってきます…お兄様…お許しください…!」
マルクは、知らず知らずのうちにみなぎった魔力をもとに、懐にしまっていた剣をアウリスの腹に突き刺した。




