第89話『無駄だ』
…あぁ、やっぱ見つかるか。
「ようやく見つけたぞアウリス、やはり未来予知の能力からは逃げられんのだ!おとなしく殺されるがいい!」
すげぇスピードで走っているようだが、俺にはそんなのは関係なかった。
するとレイは俺のもとまで一気に加速する。
「ふ、貴様はこの先を進むのだろう?視ればわかるのだ」
と俺の進行方向を阻む。
だが俺は一気にボディフェイントではがす。
まるでサッカーをしている気分だ。
すると、それに負けないようにレイがついてくる。
「無駄だと言っているだろう?」
と走ってくるが、もちろん俺の方が早い。
じわじわと離れるのが分かるが、俺はとあるものに躓いてしまった。
「は、貴様はここで転んでしまうのだろう?視えていたのだ!」
うるせぇんだよ!何が見えただ!能力に頼ってるだけだろ!
まぁいいさ、俺の手にあるこのロープを…燃やせばいいさ。
「…火炎」
すると、一直線に炎が燃え盛り、俺に一気に近づいていたレイは服に炎が燃え移る。
「…き、貴様ぁ、まさか…これをするためにわざと…」
「いや、これをしようと思ったのはまだまだ先のことだ。でもまぁ、ちょっと馬鹿なところを見せてくれたのでありがたかったですよ」
と俺は一気に詰め寄って魔法を放とうとするが、レイの隠し持っていた包丁が俺の腹に突き刺さる。そう、あの夢のように。
「…ぐはぁ!」
俺は見事に包丁が腹に刺さってしまった。
「…ここまでされてたとは思わなかったが、火炎は私の一言で消せるのだよ」
というと、レイはロープに燃え移っている炎を振り払いながら除こうとするが、何故か火が消えない。
するとアウリスは、腹に包丁が刺さったまま話し始めた。
「…やっておいてよかった、見ろ、手が油まみれだろ?」
「…な!」
レイが手を確認すると、確かに油まみれだった。
「…それに、ライターも使ってっからすぐには消えないぜ」
「盲点だった!私は確かに魔法によって放たれたものは消せるが、それ以外は消すことができない!」
「諦める…んだな」
流石に納得できないのか、レイはアウリスのもとに力づくでやってくる。
「…このまま燃えてしまう前に...お前に...乗り移って…」
「な、何をする気だ?!」
するとアウリスの目は似つかない赤い文様の瞳になり、少し意識をなくすとすぐに起き上がる。
「…さぁ、みんなのもとに会いに行こう」
と、アウリス(?)はレイのの体を持ちながら亜空間の扉を出たのだった。