第86話『未来予知』
俺は今、レイという輩に絡まれて戦闘をしている者だ。
奴の魔法はどうやら俺の行動を読むことが分かった。
さっきからどっちに動こうとする前に対応されてしまうのでらちが明かない。
「…レイと言ったか、お前の能力…もしかして、未来を読む能力か」
どうやら俺の言ったことは図星のようで、レイはその言葉に反応する。
「そうだね、私はそういう能力の持ち主だ。まぁ、そういう魔法ともいうべきなのだろうか」
レイはこちらにさっと近づく、聖なるしずくは反応しなくなっていたため、俺への侵入は軽々許してしまっている。その為か、レイはかなり俺の懐に侵入する。
「だから、君の行く方向が…分かっちゃうんだよ。だから、君が時間逆行を使ったりしてもこれで分かるってわけ」
うっわ、俺の使える技が…
これでこの技を使っても無意味だということが分かった。
この亜空間の中はどれだけ広がっているのかが分からない。
「どこを見ているのかい?出口はないよ?何だったら私の意思で開くからね」
しまった、本当に詰んだかもしれない。
いや、散歩している途中にさ、出られるかなって考えたりもしちゃうじゃん?
「…そうだな、私から提案するのは、剣術での勝負をしないかい?」
「剣術…か」
「そうだ、剣の腕前がものをいう勝負だ」
何でそんな勝負をしたいのかがよく分からないのだが…
「…剣を構えよ」
「あぁ」
何だこいつ、言っていることがちょっと支離滅裂なことが…というか、この世界の奴全員そうか。
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僕は今、記憶を消されたという事実を聞いて、驚いてしまった。
お兄様はこのことを知っているのでしょうか…。
嘘だとしても、本当だとしても、どっちかだとしても、僕が今まで好きだったお兄様はお兄様なのでしょうか…。
「…やはりそうか、まぁ焦るのも無理はないさ」
ははっと笑いながらこちらに近づくクエリーは、手を頭にかざしてこう言った。
「僕が…思い出させてあげるね」
そしてマルクは、記憶を思い出すために、クエリーに全てを委ねることにした。