第8話『兄弟』
「今日は疲れたな」
「そうですね、兄様」
今、俺の部屋にマルクがいる。今日一緒に寝るのだ。あのときはマルクの顔のせい(おかげ)で断りきなかった。だってあんなうるうるした顔で頼まれたら断りきれんじゃん。
…まあ兄弟だし、相手9歳で俺10歳だし、まあいっか。
「兄様…その…」
「どうした?マルク」
少し恥ずかしい顔をしながら話しかけてくる。何その顔、色んな意味でヤバいんだけど
「一緒にお風呂に入りませんか?」
「え?」
こんなお誘い俺にして大丈夫なのぉ?
「ちょっと恥ずかしいですけど」
「そうか?」
実を言うなら俺も恥ずかしい。男同士だとしても恥ずかしさが残る。なぜ?
浴場の中に入ると誰もいなく、俺達の貸切状態だった。
「大きいですね!お兄様!」
「風呂場ではしゃぐと危ないぞー」
それにしても本当に大きいなぁとマルクは呟く。はしゃぎたくなる気持ちはなんとなく分かる。そう思いながら体を洗っていた。
「背中流しっこ、一回はしたかったんですよ!」
背中の流し合い、兄弟なら1度はやるのかね。お風呂、すごい楽しく入っているけど。まあ貴族の子どもとはいえまだ9歳だからな、はしゃいじゃってもしょうがないのかもしれない。
「お兄様にもやってあげます」
「ありがとな」
こうやって他の人に背中を流してもらったことはあったのだろうか。そう思いつつ、背中を流してもらったあとは、自分の体が許す限り浴槽につかり続けた。
「気持ちよかったですねー!」
「俺はちょっとのぼせたー」
風呂から上がった後部屋に到着する。
風呂に入りすぎた。のぼせてしまった。
「何だか眠くなってきました」
「…まあ明日も早いし、早く寝ないとだな、ベットに向かうぞ」
「はい…」
そうして俺達は横並びになりながらベットに横たわった。
「なぁ…ちょっと近くないか?」
「そんなことはないと思いますよ、兄弟ですし。それに…」
これだ兄弟の距離感なのかと思うくらいに身体を押し付けてくるマルク。こんな距離感だと俺の理性が…。
そしてマルクは少し溜めた後
「お兄様といると安心します♡」
と俺にだけ聞こえる声量で呟いた。
「そ、そうか…」
だとしても…と言いたかったが、安心できるのであればそれでいいかなとも思った。
すやすやと眠り始めたマルクだったが、一緒に寝そべっている俺はそうではなかった。
(なんでこいつこの状況で寝れているんだよ)
そうとしか思えなかった。普通人と一緒に寝るとなるとちょっとやばくない?でもまあ兄弟だしな、であとこいつの髪いい匂いすぎないか?嗅げば嗅ぐほどいい匂いが広がる………、気持ち悪いな俺!
カーテンから朝の日差しが差し込んでくるのが分かる。
「おはようございます!お兄様!」
元気に挨拶をしてくれるマルク、だがそんな俺は
「おはよう…マルク…」
と、元気のない挨拶をしてしまっていた。
あれから髪の匂いに気を取られすぎて一睡もすることが出来なかった…。まぁマルクがちゃんと寝ることができたならいっか…
そのあと俺は外交中、睡魔と格闘する羽目になった。
一緒に寝れるなんて羨ましい…。