第77話『謎に満ちた男』
今日はようやく全員がそろったので、このことを話そうと思う。
「…お兄様、話とは何でしょうか」
マルクが先に俺に話しかける。
今日は俺の部屋で話している。何故ならその方がなじみがあるからだ。
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それはそれでおかしいと思うけど。
「今日みんなに集まってもらったのは、他でもない聖なるしずくのことだ」
「情報が分かったの?!」
ハルトがすごく驚いている。
うんうん、そういう反応が来てくれるととてもうれしいんだ。
「アウリスさんはどこまで情報をつかめているんですか?」
「ありがとなヴォルティオール、今から話すからな?」
と一回全員を落ち着かせ、場に沈黙の空気が漂う。
全員が俺の話を聞くことが分かったら、俺は話し始める。
そこで俺はあの本に書いてあったことをそのまま伝えた。
「なるほど、この世界に対する敵対反応をみなしたもののみに反応するのか…」
「それほどまでの邪心を抱いた人のみ対象とするのなら、他の人にも該当しそうな気も…」
ヴォルティオールは俺の抱えていた疑問まで口に出してしまうんだなぁ…
そこは尊敬でもしよう…何様目線なん?
「でも、左上に書いてあった注意書きの…」
「お兄様に気を付けたほうがいいって…」
そうだ、結局アレの真理が分からないので3人にも一応言っておいたのだ。
「アウリスは何かやったの?」
「俺自身は本当に何もやっていない。マジ」
でも何かやってないとあんな言われ方はしないもんなぁ…
それに、結構古い図書室に、それなりに厳重なロックがかかっていたということは、関係者くらいにしか考えられないんだよな。
「…その本持ってる?」
「無理だ、先生に見つかったらどうするんだ」
「少なくとも、授業中に廊下を歩いたり無断で外に出る人のセリフではないかも…」
ハルトめ、時には正論を言いやがる。
「お兄様は...いえ、何でもないです」
「おう、そうか」
マルクは何かを言おうとしたが、結局口には出さなかった。
結局進展がみられることはなかったので、最大の謎を残しながらそれぞれの部屋に戻った。
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…アウリスはやはり、謎に満ちた人物だ。
そう思っているのは、レンでもマルクでも、何だったらアウリスでもない。
だったら何だというのか、それは神だ。
神ですら、この男の行動は予測ができないのだ。
もはやこの男は運命には定まらないほどの力があるのか、はたまたそうではないのか、これは、神ですら知りえないことなのだ。