第73話『かけら』
ちなみに、昨日のことをヴォルティオールに聞いたら「私は昨日、帰ってから一度も教室には向かっていませんよ?」と言われてしまう始末。
「…どういうことだ?やっぱ様付けじゃなかったから…偽物?だとしたら何が目的だ?」
と一人、自分の部屋で考え込む。
昨日の一軒のことだ。
あのかけらはヴォルティオールに反応したが、今日のヴォルティオールに近づいても何も反応はなかった。何だあれ。
そう思っていると、誰かが俺のドアをノックする。
「…アウリス~」
とヴィルシスが入室する。うん、何かあったのか分からないが、とにかく…何かあったんだな(語彙力0)。
「どうした?」
「どうした?じゃないのよ!勝手にマルクに預けさせて!何を考えているのよ!」
「はぁ、すまん」
俺が謝罪すると、ふん!と言いながらベッドに横たわる。
…そこ、俺のベッドなんですが。
「ところでさぁ、なんかラインハルトたちが探しているらしいわよ?」
「何をだ?俺か?」
「いやアウリスは基本ここか教室じゃない。違うのよ、何か…聖なるしずく?を探しているらしいんだって」
なんだその厨二感を感じさせるような名前は、絶対ファンタジーな世界じゃないとあり得ないだろ。
…ここファンタジーの世界だったわ。
「特徴は何だ?俺も見つけられたら見つけようと思っているのだが…」
「私もさっぱりだわ、特徴を聞き忘れちゃったし」
「何してんだよあんた」
俺はそう思いながら、ヴィルシスと1日中話した。
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(…ふむ、まさかアウリスと倒すことができなかったとはな)
レイは今日、とある生徒に変身して、アウリスのところに近づいた。
どうやら私が変装した生徒は”ヴォルティオール”という名らしい。
アウリス自身は気付いていなかったようだが、アウリスのポケットから何か発光し、私との接触を拒んだ。
(…まさか、聖なるしずくを持っているとはな)
アウリスが持っていたものはおそらく、聖なるしずくなのだろう。
それは、とある性質上私との接触を拒む唯一の魔石だからだ。
(…アウリスが持っているとは思わなかったがまあいい、私の計画は、あともう少しで最終局面だ。新しい世界を、楽しみにしているがいい)
レイは、誰にも認知されない異次元で、一人そう思ったのである。