第69話『あれぇ…?』
俺は最初の授業が終わったタイミングで、マルクに上着を返した。
「あ、お兄様の部屋にあったんですね」
「あぁ、俺の部屋のベッドに置きっぱなしだったぞ?」
もちろん、上着使って匂いを嗅いだくらいしかしてないんだからね!勘違いしないでよね!
なんて心の中でボケていると、ヴォルティオールが俺たちに話しかけて来た。
「アウリスさんにマルクさん!こんにちわ!少し遅れてしまいまして」
「そういえばヴォルティオール、最初の授業に来てなかったもんな」
「そうだったんですか?」
そう、ヴォルティオールは最初の授業に来ていなかったのだ。
そう思っていると、俺に対する悪口が聞こえる音量で耳に届いた。
「あいつ、調子乗ってるよな」
「分かる、ヴォルティオールさんに話しかけてもらってるくせに、普通にため口で話すし」
「親密な関係って聞いたぞ?」
「だからこそだろ」
…クソむかつくが、ここは大人の対応を
「アウリスさんのことを、そんな風に言わないでください!」
ヴォルティオールが、俺の悪口を言っている一部生徒に向かって大声でそう言い放った。
俺は今、どんな状況だったのか理解できなかったし、マルクに関しては凄い表情している…。
「ヴォ、ヴォルティオールさん、どうしてあいつをかばうんですか!」
「そうだ!ヴォルティオールさんはあいつに騙されている!」
もう凄い良いようだ。こいつらの将来はクレーマーだな。
こういうタイプが一番めんどくさいんだよなぁ…。
「そ、そんなはずはありません!あんなに心優しい方なのに…」
といったところで、ヴォルティオールは何も言わなくなってしまった。
みんながどうすればいいか考えている中、一人、声を上げていた。
「みんなはさ、アウリスが本当にそうやったり、噂の真偽を確認しようとした?」
そう、今までの騒ぎを聞いていた本来の主人公、ラインハルトだった。
ラインハルトは本来、悪役貴族のアウリスを倒すはずになっているのだが、どこかの誰かさんが崩壊させてしまったため、アウリスの悪口を言っている一部生徒に突っかかってしまったのだ。
「してないんだったらさ、アウリスに失礼じゃない?」
とラインハルトは言葉をつなげる。
「だって…」
「だってじゃないさ」
とアウリスに悪口を飛ばしていた一部生徒に説教をする形になっていたところに、フローラモ先生が入ってきた。
「ど、どうしたどうしたみんな、喧嘩かい?」
と入ってきて、ラインハルトが先生に状況を説明していると、一部生徒はフローラモ先生に連れていかれた。
(…俺なんもやってなくない?)
当事者の俺は、そう思いながらトイレに向かった。