第66話『なぜ?』
…なぜ?
俺の頭の中はその言葉で埋め尽くされていた。
だが冷静さを取り戻していくと、恥ずかしそうに俺のことを見つめてくるマルクがいる事を再確認、そして俺が考え付いた答えは...
幼少期の女装をきっかけに女装癖に目覚めた。
…うん、これだな。しかもちゃんと似合っているし。
「...お兄様、その…」
とマルクが何か言いたそうにしている。
つまりさ、ここまで女装を頑張ってくれたからさ…
「その恰好、似合っているな」
…これで良かったんだよな?
とか思っているとマルクは少し顔を赤くし、「...失礼しましたお兄様!!!」と言いながら走り去ってしまった。
「...俺はどうすればいいんだ?」
俺はまた寂しさを取り戻した部屋の中で、ただ立ち尽くすだけだった。
俺はあの後、マルクとは会っていないし、マルクを見かけてもいない。
そう思っていると、ヴォルティオールに出会った。
「…なぁヴォルティオール、マルクを見かけなかったか?」
「マルクさんでしたら、あちらの教室に猛ダッシュしていかれましたよ?」
「ありがとなヴォルティオール」
「いえいえ」
とアウリスが去っていく間際、ヴォルティオールは「…やっぱり私ではアウリス様は満足しないのでしょうか…」と呟いたが、このつぶやきは誰にも聞こえることはなかった。
俺は走ってその教室にやってきたが…結構体力は限界である。
「…お兄様、どうしてここが分かったんですか?」
「頑張って探したんだ。マルクがいないと寂しいからな」
俺は本心のままそう呟くのだが、マルクはちょっと納得していなさそうだった。
マルクは俺に近づくと
「…お兄様のばか」
とだけ言って去ってしまった。
何でおれがこう言われなきゃいけなかったんだ?
当然この疑問が解消されることはなく、数日が経過した。
ちなみにこの後、ギクシャクした雰囲気は完全になくなっていた。




