第64話『噂』
登校してから1週間がたった時、ヴォルティオールとマルクと一緒に学園に訪れていた。
こんな感じで学園に来ることはなかったから結構楽しい訳である。
「お兄様!」
「アウリスさん!」
と二人同時に話しかけて来た。
3人で歩いているとこうなるときあるよな。
「...お先にどうぞ」
「いえ、マルクさんからどうぞ」
と譲り合う2人。
…この時ってどうすればいいのか分からない。
マルクとヴォルティオールは譲り合っているが、どちらかが先に話せばいいものの、どちらも謙遜しており、尚且つ俺が対処法を知らないため話は堂々巡りだ。
その時にラインハルトが俺のもとにやってきた。
「アウリスー、さっき先生に呼ばれてたよ?」
「分かった。ありがとな」
息を切らして走ってきたハルト、恐らくそれほど緊急なようだったのだろうか。
すると二人は話すことができずにぼぉーっと立ち尽くすだけだった。
先生に呼ばれてしまった俺は再び廊下を歩いているのだが、さっきから俺に関する根も葉もない噂が聞こえてくる…
「ヴォルティオールさんが目覚めたとき、すぐさま抱きしめられたらしいぞ」
「それだけじゃないぞ、何だったら一夜を共にしたって…」
不穏すぎるだろ!!
さっきからこそこそと喋っているようだが、俺にははっきり聞こえている。
ちなみに先生に呼ばれた理由というのは...ヴォルティオールのことだった。
体調はどうなのか、特に変な様子とかはないのかとか…そういうことは女子友達のほうに聞いたほうがいいと思うのだが、先生曰く、ヴォルティオールが仲良くしているのは俺たちだけらしい。
あいつの交友関係狭くないか?
そう思ってしまうが、前世で身に着けたスルースキルで何とかした。
…当然のごとくマルクが俺の部屋に転がり込んでいる。
俺の部屋にはマルクが今遊びに来ているのだが、正直言って転がり込んでくる意味が分からない。マルクの部屋のほうが豪華で設備だったりが行き届いていると思うのだが、まぁ遊びに来てくれるだけでも結構ありがたい。
「それにしても…お兄様のお部屋はなんだか寂しいですね」
「まぁ俺は必要最低限の物しか置かないしな」
マルクはどうやら俺の部屋について思うところがあるらしい。
…それヴィルシスさんも言っていたぞ。前に俺の部屋に上げた時に「...魔法の本も剣術の本もないわね、はっきり言っちゃえば特徴がないわ」って言われてしまったのはいい思い出だ。
「...僕の物をここに置く手もありなのでは?」
とマルクが小声で言っていた。
お前は電柱で尿をする犬か。
電柱で尿をする犬…これマーキングのことね。ややこしいかもしれませんがそういう意味です。