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第54話『思い出す』

俺と父さんはアルテンの滝に来ている。

あの頃の記憶と同じくらい美しい場所である。


「ここは聖なる力が秘められているらしく、今までその力を証明できたのは()()()()()だけだったという」

「選ばれし…者?」


選ばれし者とは、ゲームとかでよく見る勇者みたいなものだろうか


「私もアウリスを連れてここにやって来たのだが、その力は持っていなかったんだ」


持っていればすごいことだったんだが…と喋る父さんよりも、俺は水たまりの方を見ていた。

その水たまりを見ていると、急にぼぉっとしてきて、気づけば水たまりに落ちてしまっていた。


「アウリス!!!」


父さんがいち早く気付いたが、俺の手は父さんに届くことはなく、水たまりに着水した。


(ひんやりしてて、ぼぉーとしてしまう…何か…こんなことも…あったような…)


冷たくて、それでも冷たすぎるわけではなく、心地よい。

少なくとも苦痛はない。


そして俺は意識を失った。














〜アルテンの滝〜



…あれ?俺は確か着水していたような…


「キレイでしょ?」

「そう…だな」


あれ?この少女、あの少女だよな?


「…アウリス!私さ…」


と何か少女が言おうとしたタイミングで崖が崩れる。


「…おい!」


俺は頑張って走りに行くが、その少女の手には届かない。

俺が崩れた崖にたどり着く頃にはもうその少女は着水してしまっていた。


「…何が、どうなってる!」


ここで俺はようやく喋ることが出来た。

今までは映像を見ているだけだったが、今度はVRをやっているような、疑似体験っぽくなっていた。


「俺は水たまりに落ちたはずじゃ…取り敢えず、あの子を助けなきゃいけない!」


と、周りに助けを仰ぐことも視野に含めなかったのか、俺もその水たまりに飛び込んだ。

その水の中は、さっき自分が飛び込んだときと同じ、心地よく、苦痛もない。

だがこの苦痛のなさは逆に危険だった。


(…苦痛じゃないってことは、気づかぬうちに溺れてしまう!)


自分がそうであったように、その少女も同じ現象に陥るはずだ。


少し底に近づいたところにその少女はいた。

目をつぶっており、今まで見れなかった目も見ることが出来た。

その目は、とても知っている人の目だった。


「…()()()()()


そう呟きながら、マリアを背負い水面に上がる。


水面から上がり、町の方へ歩き出す。

俺はかなりの疲労があるのだろう、歩く足もおぼつかなくなった。

そうすると一人の男性が俺に話しかけてきた。


「アウリス!どうしたんだ水まみれになって…」

「俺のことはいいから、とにかくこの少女の手当をおねがい」


俺は事情を説明するより先にその男性に少女の救助を求む。


「わ、分かったがどうしてこんなことに?」


と聞かれるもどう答えればよいのか分からない。

だがそんな黙っている俺を見て察したのか


「…後で聞かせてもらおうか」


とその少女を抱えて何処かへ行ってしまった。

その男性が救助に向かったあと、俺は安心したかのように倒れた。


















俺は目覚めたらベッドに横たわっていた。今度こそ前世に…というわけではない。幾度となく見たであろう、マルクと父さんが俺の近くにいた。


「良かった…、アウリスが目覚めてよかった…」


と父さんが涙目になりながら俺のことを見る。


「お兄様…助かってよかったです…」


とマルクは涙を我慢しながら言葉を紡ぐ。

そうするとどこかから老人があらわれて


「いやぁグレッグ、ちょっと前に少女をわしのところへ持ってきたと思ったら今度は息子かい…」

「いやちょっと前って…もう1()0()()()()()()()じゃないんですか?」


と話す父さん達。


「いやぁグレッグよ、10年はあっという間じゃ。あまり変わらんわい」


ホッホッホと笑う老人。


「…とにかく、もう1日は寝ている必要がありそうじゃな」


と俺は1日中ベッドに寝かされる羽目になった。

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