第53話『????の滝』
暗闇の中、ある男たちは卓上で会話をしていた。
「…フィローネがやられたか」
「フィローネはかなりの実力者だったのだが…」
どうやらフィローネがやられたことで持ちっきりだった。
するとどこからか喋り声が聞こえる。
「おい、何を騒いでいる」
「あ…あなたは…」
と扉を開けて誰かが入ってくる。
「NO.1創造のデルクさん!!!」
「フィローネが死んだくらいで騒ぎやがって…」
大柄な男がそう呆れていると、魂らしきものが浮かび上がってきた。
「まぁそうピリピリするでない、どうせお前の能力じゃ誰にも勝てないだろうからなぁ…」
「ボス…」
するとその魂は卓上の中央辺りに浮かび上がる。
「我らの計画を邪魔できるものは誰もいないのだから…」
「…そうだな、俺達の作戦を邪魔できるものは誰もいない!」
とやる気を出す男たち。
「あぁ…念の為に言っておこう、アウリスには気をつけろ。」
「アウリス…あの貴族のガキか?何故だ?」
と大柄な男、デルクは魂らしきものに話す。
おそらくこの魂がボスと見て間違いないだろう。
「…ヤツはここまで様々な実力者を直接ではないが倒している。アウリスを見かけたら注意しておけ」
「そう…か、まぁ俺なら大丈夫だとは思うのですが」
魂らしきものは去りながら
「…気を付けて損はないが、そうだな…我にとって、この作戦の最重要人物は、皮肉にもアウリスだ。アウリスが我々の運命を左右することになる」
と呟き、影に消えていった。
「ボスが…そこまで…アウリス、俺は、お前を倒してみせる!」
とデルクは謎に闘志を燃やすのだった。
…暇すぎる
俺はここまで特に何もやっていなかった。外交とかも全部父さんが進めてしまうし、俺達の出る幕はなかったというわけだ。
今は…何か物騒なことを話しているな。戦争?
それに…闇暗組織?初めて聞いたな。
「…というわけなんです、こちらとしても武器を…」
武器とか調達しても使えなかったら意味ないのでは?
と思ってしまったが俺はそれを口にすることはなかった。
「…でよろしいでしょうか」
「ありがとうございます!ではお開きということに…」
ようやく終わるようだ。こうして今日話すことは終わったので俺達は外に出る。
「…アウリス、退屈なのは分かるがもう子どもじゃないんだ。あくびはしないほうがいいぞ?」
「すみません、つい…」
と俺が退屈してたことも、隙を見てあくびをしていたことも全部バレてしまっていた。
それよりもまたぼぉっとしてしまう。
「それでも次期侯爵なんだからもっと…」
父さんは何か言っていたようだったが全く聞こえなかった。こうして俺はまた思い出す。
〜???〜
ある建物の玄関前、一人の少女は誰かの帰りを待っていた。
「アウリスまだかなぁ…。アウリスも大変だよね、大人たちの難しい話を聞かされるなんて」
その少女はアウリスのことを待っているようだった。
そんななかドアが開く音がした。
扉から出てきたのはアウリスたちだった。
「アウリス!お話は終わった?」
「終わったが…どうしてだ?」
アウリスはその少女に質問をする。そうするとその少女は笑顔でこう言った。
「私のお気に入りの場所に連れて行ってあげたいなって思って」
「…そうか」
否が応でも連れて行くつもりだったのか、その少女はアウリスの手を引っ張って走り出す。
アウリスは手を無理やり離そうとはしなかった。
されるがままに着いて行った。
着いた先は美しい自然が見える滝だった。
「ここはね、????の滝っていうんだけど、私のお気に入りの場所。将来お婿さんになる人とここに来るの!」
と笑顔でアウリスに言う。
「…????の滝、確かにキレイだな」
「ちょっと!私の話聞いてた?!」
と話しながら笑う。
「…私、元々この滝で見つかったんだって」
「ふーん」
とその少女は滝の水の溜まっているところを指さしながら説明する。
「あそこでかごのまま入っていたんだって」
「…何とも不思議だな、覚えてないのか?」
「うん、私もよく覚えてないの」
その少女はその水たまりを見つめながらアウリスに喋る。
「…私ね、お父さんに会ったことがないの」
「いないのか?」
「ううん、お母さんが言うにはいるらしいんだけど、そのことを聞こうとすると何も喋ってくれないの。どうしてだろう…」
とアウリスの方を振り返りながら聞いてくる。
「俺も知らないよ」
「だよね…」
その後は滝の眺めを少し見たあと、一部分記憶がなくなっているが、帰るところで記憶は途絶えた。
「…なんだ。聞いているのか?」
ようやくこっちの世界に戻ってこれた。
そういえば滝の名前は何故か伏せ字になっていたが…何か理由があるのか?
「き、聞いています…」
まぁ、その滝はこの町の近くにあるらしいので行けるときに行ってみよう。
「…アウリスよ、この街のことを覚えているか?」
「かすかに…覚えていることはあるのですが、大部分は思い出せないと言ったところです」
そうすると父さんはこちらに背を向けながら
「明日、アルテンの滝に行かせてやる。それで何か、思い出せることがあればいいのだが」
アルテンの…滝?
俺がそう思う暇もなく父さんは去ってしまった。
「…アルテンの…滝か、」
そういえば、帰る前に何故か記憶が飛んでいるんだよな。もしかしたら…何かそこに手がかりがあるのかもしれない。そう、俺がアルテンの地で何をしたかが…。