第52話『昔話』
俺は見たことのある人物を見かけた。
「…マリアさん、どうしてここに?」
そう、俺はマリアさんを見つけた。マリアさんは闘技場の一件でかなりお世話になった。
間違いない、あれはマリアさんだ。
マリアさんはキョロキョロしているようだ。
あ、こっち見た。近づいてきた。
「久しぶりねアウリス」
「ひ、久しぶりですマリアさん」
久しぶりに会った人だからどうすればよいかよくわからない。
前世でもあったなこういう事。
「…ちょっと散歩でもしない?」
「別に大丈夫ですが…」
というお誘いを受けた。マリアさんはとある場所に向かって歩き始めた。
着いた場所は、どこか懐かしい気配を感じさせてくれた。
水の色が透け通っている川を沿って歩くアウリスとマリア
「…懐かしいわ、私はこの町で育ったんだけど、その時にとある男の子と仲良くなったのよ」
と昔話を始めた。
「髪の毛の色は青で…とにかくアウリスに似ている子だったの。その子は蝶の絵を書いていたり…薬草の絵を書いてたり…色んなところを歩いていたり…とにかく不思議な子だった。だからこそ…惹かれちゃったのよ」
俺はコレまでの話を聞いていて思ったことがある。マリアさんって結構俺みたいなやつがタイプなのかなと。
「そうですか…」
「えぇ、この川も、その子と遊んだ川なの。あの子のお陰で川が綺麗だってことに気づけたから」
とその子に感謝をしているマリアさん。
「そして約束もしたの、大人になったら戻ってきてねって、あの子はそんな事忘れてそうだけど…」
…何かところどころあの記憶と一致するところはあるが、ちょっと抽象的な表現もあって断定が出来ない。
「…もうこんな時間じゃない、アウリスもなにか予定あったでしょ?」
「予定…待ち合わせの時間に遅れちゃう!!」
じゃあ急ぎましょうと言いながら道を教えてくれた。本当にありがたい。
そして別れ際、マリアはこう呟いていた。
「…やっぱりあのアウリスだ。思い出してくれるかな」
と
…やばいやばいこのままじゃ遅刻してしまう。走っているのだが間に合う気配が全くしない。
呼吸が荒くなるのを感じる。
そして結局…
「…お兄様、10分の遅刻です」
「すいません、本当に」
とマルクからちょっぴりと説教を食らうことになった。
それと何故かこの外交中は一緒に寝ることになった。
とある宿の部屋の中
「…これは罰ですからね」
と言いながら寝る準備をするマルクはアウリスにそう言っていた。
「そうか、だがようやくマルクと喋れるな。今日は全然喋れてなかったし」
俺がそう言うとマルクは少し顔を赤らめながら
「そ、そうですか。僕もです」
と返事をしてくれた。
「さぁ明日も早いんだ、そろそろ寝ないと本当にヤバいぞ」
「そうですね、あ…自分はベッドの外側で寝たいので…」
「分かってる」
俺達はベッドに向かった。
〜???〜
とある宿の中、一人の少年の寝ている部屋にとある少女が訪れていた。
「…アウリスはいる?」
「どうした?」
アウリスはその少女に聞き返す。
「その…私と一緒に寝てくれない?」
「嫌だ」
「ねぇちょっと待ってよ〜」
と追い出そうとするのがなかなか手を離してくれない。
流石に見かねたのかアウリスは理由を聞く。
「その…私…おばけが怖いの、だから…」
と話を聞く。だがアウリスは話すのがめんどくさくなっているのか聞き流していた。
最終的にアウリスの出した結論は
「…勝手にしろ」
「ありがとアウリス!」
彼女と一緒に寝る決断をした。
「アウリスってさ、おばけは怖くないの?」
ベッドの中に入った少女はここぞとばかりに質問する。
「別に、存在するかどうかわからないものに怯えている暇はないなと思うだけ」
「私のほうがお姉さんなのにすごいね、アウリスは」
アウリスは少しめんどくさそうにしながらも渋々質問に答える。
その後も質問に答える。
「…だから…?」
ベッドを見たらその少女はもうすでに寝てしまっていた。
アウリスはその少女の耳元で
「おやすみ」
と呟いた。
…また思い出した気がする…。
「おはようございます!お兄様!」
とマルクは朝早くから挨拶してくれる。
すっかりマルクと寝ることに違和感を覚えなくなってしまった。
「…今日も思い出したな」
このアルテンに立ち寄ってからは特に記憶が蘇っている気がする。
そう思いながら、俺は今日も準備をしたのだった。