第51話『徐々に』
俺達は順番に馬車に乗っていく。今日はマルクと俺は別の馬車に乗っていった。その時のマルクはすごく不機嫌にしていたのだが…まあいいか。
「…アウリス様、よろしくお願いします」
「俺の方こそよろしくな、ところで名前は?」
「あ、俺の名前はへリクと申します」
このヘリクという兵士は、俺が幼少期のときに訓練場で戦って魔法のことをちょろっと教えてくれた兵士だ。
「アウリス様は成長なされましたね」
「そうか?」
「はい、俺は分かります。その魔力量、相当な訓練を積んできたのでしょうね」
「ま、まぁな」
とこんな感じでへリクの話を聞いて馬車の移動中は時間を潰した。
ヘリクはどうして兵士になりたいかと質問したら「自分の父親が兵士をして、小さな子どもを救って死んだのです。その父に憧れて兵士になりました」と答えてくれた。
その時の俺は「さすがに命は大事にしような?」とつい言ってしまった。
俺はようやくアルテンに到着した。道中はマルクと関わることが出来ていなかったがヘリクのお陰で結構楽しかった。
「お兄様!」
「おうおう落ち着け」
始めていくような場所に来て興奮しているのか俺にすごく絡んでくるマルク。
「それにしても結構景色が綺麗だ…」
そう言おうとした時、あのときと同じ感じがした。
〜???〜
青髪の少年は一人、川沿いを歩いていた。
その中、黒髪の美少女がその青髪の少年に絡んだ。
「アウリス〜、今日は川を見てるね、川って面白い?」
「お前よりは面白い」
「え〜、酷い〜」
とは言いながらもその少女はアウリスに着いていく。
その川はとてもきれいだった。
「…うっとおしいのだが?」
「別にいいじゃん、それとも私に見られたくないことでもあるの?」
「…別にないが?」
「じゃあいいじゃん」
という会話が聞こえる。
「…何かアウリスの言っていることがよく分かる気がする」
「………ふん」
とアウリスがその少女よりも先に行こうとすると、アウリスの背中に冷たい感覚がした。
「…ニヒッ」
「…何で水かけた?」
とアウリスは質問するがその少女は何も答えずにまた水を掛ける。
そうするとアウリスもまた水を掛ける。
「あ、やったな〜?」
あははと笑いながら水を掛け合う二人、そこで記憶は途絶える。
「…兄様?お兄様?」
…まただ。またこうなった。
「どうしたのですか?ずっと固まっていたので心配しました」
「お、おう。何か懐かしいことを思い出してだな」
と何とか自分の身に起きたことを説明する。
「…その人のことを…どう思っていますか?」
「どうって…覚えていないから何とも言いようがないな」
「そうですか…」
と何処かへマルクは行ってしまった。
そうしたあと、見覚えのある人影を見つけた。
「嘘だろ…?なんでここにマリアさんが…?」