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第48話『フィローネ』

私達一家は村で妬み嫌われる存在だった。後で分かった話なのだが、村の人達は私の持つ”不思議な力”に怯えているらしい。家族からは何も言われることはなかったが同年代の子どもにはよく言われた。


「呪いの子だー」


とか


「気持ち悪い」


とか色々、そんな時自分はとある話を聞いた。


【あの洞窟の中に入ってミスリル鉱石を見つけられたら認めてやるよ】


この話を聞いてチャンスだと思った。何故なら私は大好きなお母さんが村の人達に馬鹿にされているところを見たくなかったからだ。

取り敢えず約束をしてその洞窟に潜り込んでみることにした。 


その洞窟はとても薄暗く思わず不安になるほどだった。


「…薄暗いなぁ」


とう呟くと自分の声が返ってくる。


魔物とかはいなかったがそれでも恐怖は感じる。


少し先に進むと何者かがそこで休んでいることが分かった。

よく目を凝らすとそこには竜が眠っていた。今のうちに逃げようとしたが帰り道がわからないのでより逃げられない。

そぉっと逃げ出そうとしたが小石に躓いてしまい起こしてしまった。


「あ、あぁ…」


私は言葉に出来ないほどの恐怖に支配されていただろうか、その竜はこちらを睨んでくる。


「…どうしてここに人が?私の住処に…?」


と喋っているのが分かる。この洞窟はどうやらこの竜の住処らしい。


「…私、悪い竜じゃないよ?」


と喋りかけてきた。怖い。もう逃げたい。その場から離れたい。


「あ、そうだ!ちょっ待ってて」


とその竜はどこかへ行ってしまった。今なら逃げるチャンスがあるかもしれないがそんな事を考える余裕すらなかった。明日がすくんで動くことができなかった。


「はい、これ」


と渡してきたのは一つのどんぐりだった。


「いつか人に渡したくて…きれいな形をしてたから」


と言う。この竜は人を襲わないの?何のために?


「…私はさ、こうやって人と会話がしたかったんだ。でもどうしても逃げてっちゃうからさ」


という竜。


「へ、へぇ〜」


と適当に濁す。


「…あなたってお名前は何ていうの?」

「…フィローネ」

「私はヴィルシスっていうんだ!よろしくね!」


こうして私とヴィルシスは出会った。この後は迷子になっていたので帰り道を教えてもらい何とか帰宅。

どうやらミスリル鉱石があるのは()()()()ようだ。


それからというもの、この洞窟の遊びに行きヴィルシスと遊んだ。いろんなことをして遊んだ。

ヴィルシスと遊んでいる時間は嫌なことを忘れることができた。


そんなある日、自分の最愛の母が亡くなった。とある毒を接種したからだそう。周りからは自殺として処理されたのだが自分はそうではなかった。自分の母はどんな辛いことがあろうとそんなことをする人じゃなかったことは一番自分が知っていた。

自分の父親もショックで自殺。母の死をきっかけに私達の一家は崩壊した。さらにはヴィルシスもいなくなっていた。こうして一日にして自分の大切なものは全部消滅した。


だからだろうか、生きる希望を見いだせなくなっていた。その時だった。闇暗組織(ダークネスサイド)から勧誘を受けたのは。その人からは「君のその絶望に満ちた力を活かしたいんだ」と言われ加入した。

その組織は人知を超えた力を有することが目的なのだそうだ。もしかしたら…というのが一番大きいかもしれない。


そこでの生活は楽しかったが物足りなかった。勿論、成果を出した分だけ報酬がもらえたり、そうして組織の中でも実力者になり、NO.2の位を獲得した。


物足りない原因はなんとなく察しはついていた。ヴィルシスのことだった。何も言わずに自分のもとから去っていったヴィルシスには腹の底から腹がたった。


そんなときだった。とある依頼が舞い込んできた。


【一人の少女に取り憑き邪魔者を排除せよ】


この命令が来たときに性根を疑ったが命令は命令なのでしょうがない。私の能力を見越し手での計算なのだろうか。その少女の名前はヴォルティオールと言う。可哀想にと思った。勝手にこんなことに巻き込まれて。

更に詳細を見ると


【なるべく面白可笑しく演じること】


だって、もうすごい有り様なのである。だがこっちも仕事である。従わないといけないのだ。


分かりきっていたことだがヴォルティオールとも会話することができる。これは私の能力で会話できるようにしてある。


そして私はまた命令をした。どこぞの貴族の息子を殺すように言われてしまった。勿論それを命令したのだが思った以上に時間がかかった。

確認するとなんとその貴族が自分たちの計画を見事に邪魔しようとしているのだ。


だがその貴族の息子の後ろには懐かしい気配を感じていた。それはヴィルシスの魔力だった。あのときとは全く変わっていない、安心できる魔力だった。そう思っていると自分の能力の効き目がどんどん切れていることを確認できた。


(…嘘だ!)


そう思いたかったが切れかかっている。こうしてヴォルティオールにかけられた魔法は解呪された。

任務は任務なので自分が出てきて


「…マルク・クロドネス、あなたは私が直々に殺してあげるわ」


こうして、一つの戦いが幕を開けた。












戦いの結果は自分の敗北だ。自分はもうすぐ死ぬだろう。まだ母親に何も言えてないのに。

そう思っているとヴィルシスがこちらに駆け寄ってきた。


「…フィローネ」

「ヴィルシス…ね」


見つめ合うが何も話さない。


「…懐かしいな、ヴィルシスと出会ったのは…ほんの30年前くらい?私が洞窟で迷子になっているところを助けてくれたんだよね」


実際、あの出来事のお陰でヴィルシスと出会うことができたのだ。そう思うと涙が出てきた。


「…気づくべきだったよね、私にはヴィルシスという幼馴染がいるのに…大切なことに気づくこともなくこんな取り返しのつかないことを…」


本当にそうだ。いつも大切なものはすぐそばにあったのに、それらをすべて無視したのは自分の方なのに、いざ無くなったら勝手に他人を恨んで…

そう思うとヴィルシスにも合わせる顔がない。


「…ヴィルシスはさ、私のこと、どう思ってくれてたの?」

「フィローネ!もう喋らないで!」


ヴィルシスが私はもう死ぬということを察してくれたのだろう、だがどうあがいても死ぬのは分かりきったことだった。でも…これだけは言いたいんだ。


「…あぁ、死ぬってこんな感じなんだ。あの子もすごいよね、よく耐えれたものだな」


昔の頃にヴォルティオールのかつての想い人を殺すように命令してしまったことがある。そこからだな、命令がひどくなっていったのも。


「もういい…喋らなくても…死んじゃう…」

「どうしようとも死んじゃうからさ、喋らせて。あの子についた魔法は私が死んじゃえば解呪できると思う。そうだ、言えてなかったけどさ、あのとき助けてくれて…ありがとうね…」


そう言い切ると、私の体は満足したかのように魂が離れていく。


あぁ


最後に会えてよかった。親愛なる幼馴染 ヴィルシス

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