第45話『私は③』
私は生まれたことから不思議な声が聞こえた。その不思議な声は聞いているだけで不快感を覚えるような…そんな声だった。その声は自分にいろんなことを命令してきた。最初はそんなに心配することのなかった命令だったけど日に日にエスカレートしていった。
そんな命令、逆らいたかった。やりたくなかった。けれどもある日気付いた。私の両親が人質に取られていることに気付いた。そのときに私はもう逃れることができなくなっていた。命令に従ううちに人の心をどんどんなくしていく感覚だけが残った。
「…助けて」
この一言を出しても助けてくれることなんてなかった。それどころか自分の大切な人はいなくなっていく。ついには自分の想い人さえも殺してしまった。その日は泣きじゃくった。けれども戻ってくることはなかった。
そんな声に従って生活するのも15年経てばもうすっかり慣れてくるわけで、時間を少し稼ぐことも覚えた。
「…どうしてあいつを今殺さなかった?」
「希望をもたせた後に殺せば…もっと美味しくない?」
「お前は成長したなぁ、最初は殺したくないだとか言っていたが分かるようになったものだ」
嘘、今でも殺したくない。というか殺すことに楽しみを覚えた気はまったくない。
「…人の絶望の死ほど美味しいものはないよ〜!」
こういう声が一番ムカついてくる。でもそういうことに反応することに疲れてくる。だから自分は最低限の会話しかしなかった。
そんな中、新しい命令が来た。
「アウリス・クロドネス、そしてマルク・クロドネスを殺せ」
…またしても犠牲者が、と思ってしまった。
だがこの認識が改めて間違いだったことに気付いた。
待ち合わせをしていたらあの声が異常なほどになにかに反応していた。
「どうして…どうしてあいつがそこに…そこにいるんだー!!!!」
とどこか焦っていた。私は…これがチャンスだと思った。
少し時間が立つとマルク・クロドネスが自分の前に立って手を差し伸べた後、
「…大丈夫、僕が来たから、安心していいよ」
と言ってくれた。
…嘘だ
自分はこう思いたくなかったがそう思ってしまった。何故なら相談しても助けてくれなかった人もいるからだ。じゃあ自分は開放されたくないの?それも違う。
じゃあ私はどうすればいいの?
私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は
そうか
分かった。
私は
「…助けて」
って言いたかったんだ。
…というか普通にレビューとか感想とかしてくれていいですからね?評価とかも気になりますし