第42話『ヴォルティオール』
「おはよ」
「おはよう、ヴォルティオール」
俺達は早めに教室に到着してしまった。とてつもなく暇なのである。
「…相変わらず俺の隣に座るんだな、今はどこも空いているっていうのに」
「あなたの隣なら…いいと思ったので」
何だこの発言、思わせぶりか?
「そうか、勝手にしてくれ」
そう言うと急に肩を抱いてきた。なんだか柔らかいものが当たっているんですが…。
「じゃあ、こうしても大丈夫…ってこと?」
やめたほうがいいぞ、勘違いするやつ、出てくると思うから。
だめだ、【ヴォルティオールとマルク仲良し大作戦】をしようとしたのだがヴォルティオールがこんなことしてきたらもう難しくなってきた。
まずは全容はこんな感じだ。
①俺がマルクをとある場所に呼び出す。ヴォルティオールと3人で遊ぶという口実のもとに
②ヴォルティオールとマルクを2人きりにする
③無事に仲良くなって気まずさも直る。ハッピーエンド
これでハッピーエンドを目指してみるぞ!
って意気込んだのだが、あまりにも切り出すタイミングがない。
そのタイミングでマルクが来た。
「あ!マルク、ちょうど良かった。話があるんだが…」
その時のマルクの顔はとてもやばかった…、とにかく。
「…まあいっか、ヴォルティオールと遊びに行かないか?」
「私と?」
「お兄様…」
「どうせだったら仲良くなりたいと思ってだな、マルクもせっかくだから…」
俺にしては完璧な切り出し方だと思った。これで了承を得られたら完璧だ。
「…お兄様、僕とは遊びに行かないのにその人となら遊ぶのですね。まぁ今日は許します」
「お、おう…?」
「それで、時間はいつになるのでしょうか」
「時間…か、次の休みだな」
話し合った結果、次の休みの正午に集合することになった。
これで完璧や。
「そうだマルク、ちょっと言いたいことがある」
「何でしょうかお兄様」
俺はマルクに言いたいことがあったので呼び止めた。
「明日のヴォルティオール、気をつけたほうがいいぞ」
「それは一体どういう…」
「俺もようやく気づいた。マルクの言っていることがよーく分かるかもしれない」
だって、少し話しただけで肩組んでくるようなやつだよ?絶対裏と表があるんと思うんだけどなぁ…
「だから俺は少し遅れてくる」
「そう…ですか」
まあ、ちょっと様子が見たいってところはあるけどな。ガチで明日が楽しみになってきた。
「ところでヴィルシス、いるか?」
「いつもアウリスの背中にいるって」
と言いながら眼の前に現れた。
「明日なんだが…」
「その時間に起こしてほしいの?」
「違う」
じゃあ何?というヴィルシスさん。
「明日、マルクと一緒に行ってくれないか?」
「…え?私が?」
とヴィルシスさんは驚いていた。