第38話『大会後』
優勝者が決まった裏でレーズベルの王子ケヴィン、グリムの王子マルコが路地裏にいた。
「…貴様に負けるとはな」
「ケヴィンも良い腕だった」
そう言いながら手を伸ばそうとするとケヴィンは拒否した。
「負けた相手に情をかけるのか」
勿論そんなつもりはなかった。ただ単に良い戦いをしたので握手をしたかっただけなのだ。
「どうせお前は…俺のことを落ちたやつだなとか思ってるんだろ」
勿論そんな事考えてもなかった。だが彼はそう考えているらしかったのでなんとも言えなかった。
「…そんなつもりは」
「うるさい!俺は戦いで負けたんだ!」
両者は決勝トーナメントまで進みケヴィンとマルコの直接対決となり見事マルコが勝利した。そんなマルコは準決勝で死闘を果たした後敗退した。
「…もうやめてくれよ」
ケヴィンはそう言いながら路地裏の闇に消えていった。
俺はトーナメントで優勝したので父のグレッグにお願いを聞いてもらっているところだ。
「…そんな願いでいいのか?」
「はい」
俺のお願いを聞いてくれてありがとうねグレッグさん。
俺の父グレッグはお願いを聞いた後部屋をすぐに出る。その後にヴィルシスが話しかけてくる。
「アウリスはさ、決勝行けるくらいに強いのにそこまで普通を追求するのはなんでなん?」
竜としての威厳はなくなっているヴィルシスさんが質問してきた。普通を追求…か、モブみたいなものなんかね。やっぱ…
「俺にはこんな責任の重い役職は似合わないし果たせる自信が無いからね」
「それは貴族としてどうなん?まあ私が関わることじゃないけど」
他のやつから見たら貴族らしくないと思っているやつがいてもおかしくないってわけか。でも面倒くさいことをするよりかそっちのほうが全然いいな。
「…まぁ、大人になったら分かるさ」
「そうかい」
質問に答えると椅子に座っていた俺の膝にヴィルシスは寝る形になった。
朝目が覚めると隣に優勝トロフィーが飾ってあった。昨日大会で優勝したからな。
「…スポーツ選手とかがよくやってるやつだけど」
トロフィーとかにキスをしたりするのをよくやっているがいざやってみようとするとかなり恥ずかしく思えてしまう。
「無理にしなくていっか」
(…それにしてもなんか重い気がする…)
身体を起こして膝の方を見る。すると何と小学生くらいの女子が自分の上で寝っ転がっていた。
「…え、ちょ!誰!?」
「…おはようアウリス」
「…誰?」
「忘れたのか!私だぞ!ヴィルシスだぞ!」
「…ヴィルシス?竜のヴィルシスなら知っていますが…」
「そのヴィルシスだ!」
まじかよ、人の形になっちゃうの…?今知ったんだけどヴィルシスって…
「…そう言えば言ってなかったけど私はメスなんだ」
女性の方でしたかー…。