第37話『表彰式』
色々なことがあった闘技大会だったが俺のペアの優勝で終わった。何故かマルクがマリアの方を睨んでんだが…。
「さあ優勝者は…1番&14番ペアです!」
俺達は表彰台に立った。表彰されるのは初めてのことだった。
「えぇ…今回、敗北を宣言されていましたがこちらとしてはかなり盛り上がった決勝戦になったため優勝を認めるということになりました。」
へぇ、やっぱエンタメ理解してるやつのほうがいいもんな。
「優勝者には優勝トロフィーと回復薬1年分、そしてフレイムソードが贈呈されます」
フレイムソードというのは炎特化型の剣である。相性が悪いと効力を発揮しないのだが、相性さえ良ければとんでもない威力を発揮する。ゲームプレイヤーからは、「チートになれないチート」「猫みたいな剣」と言われている。
だがアウリスは原作を知らないのでただの炎の剣だと思っているようだ。
「フレイムソード…名前安直じゃないか?」
アウリスはこんな事を考えているのだから…。
そんなときだった。地面が大きく揺れていた。
「これは演出か?」
「だとしたらすごいわよねぇ」
そんなことを思いながら俺は上を見た。そうしたらなんとドラゴンが飛んでいたのだから。
「お兄様!ドラゴンがいます!」
「…すげぇ」
「早く逃げないと!」
「…」
「お兄様?」
「先に行っててくれ、必ず追いつく」
「…無理だけはしないでくださいね!」
マルクは民衆と同じ感じで逃げていった。少なくともドラゴンのレベルにもなると学生の戦えるレベルじゃないので逃げるよう教育されるんだとよ。
こうして会場に残っているのは俺とマリアのみだった。
「………ほう、そなた達は逃げないのか」
「あなた、まさかドラゴンに立ち向かう気?」
俺は呆然としていた、
「…だって」
だって
「…だってドラゴンがかっこいいんだもん!こんな羽があったらどこまで飛べるんだよ!」
俺は眼の前にドラゴンがいるにも関わらず色々と熱弁してしまっていた。
「この目!すげぇかっけえじゃん!」
「アウリス…」
マリアはアウリスのテンションについていけなかった。かく言うドラゴンさんもついていけてなかった。
「……分かるのか、君には」
「何が?」
「私の姿を見て逃げようと思わなかったのはそなたらが初めてだ」
「そう?こんなかっこいいのにな」
ドラゴンさんは一体何を言い出すのだろうか
「私はいつもみんなと仲良くしたかったんだ。それが人であれ魔族であれと…」
「俺達、気合いそうじゃね?」
「…そうか?」
「だってかっこいいんだもん」
「…今日もここに来たのはそなたらの試合を見に来たかったからなのだ、そしたら面白くてだな、つい魔法を解いてしまったんだ」
そう話をし始めたのだ。アウリスも邪魔をすることはしなかった。話をさせていた、頷いていたし、否定することもなかった。
「…今日はいいことがあった、私はこれで帰ろうかな」
「ちょっと待って!」
「どうした若造、文句なら…」
「俺と一緒についてくるか?」
「…それをしたらそなたらに迷惑が…」
「なら、小さくなれるか?」
「なれるが…」
「じゃあ俺の肩に乗れるくらいの大きさで!」
そして俺はマルクのもとにやってきた。
「…遅かったじゃないですかお兄様!一体何…を?その肩に乗せている動物は?」
「これ?さっきのドラゴン、かっこいいっしょ」
俺の方に乗っているのは闘技場に襲いかかってきたドラゴンだった。
「ほら、挨拶」
「…私の名はは暴風竜、ヴィルシスだ」
「お前竜だったのかよ」
まさかドラゴンではなく竜だったとは思わなかった。
「………かわいい」
俺の方に乗っているヴィルシスを見てマルクが呟いた。
「あまり竜にそんな事言うのは…」
「かわいい…か、言われるのも悪くない」
とヴィルシスは容認した。
「ヴィルシスさんがいいならなぁ…」
こうして表彰式どころではなかったのでトロフィーだけ持ち帰った。
じっと肩に乗っているだけだと退屈なのでヴィルシスは飛んでいた。自分のことを認めてくれたアウリスの背中を追った。
「…アウリスはなぜ私のことを?」
「…かっこよかったからだ!…マルクは可愛らしいけどな」
「お兄様…♡」
(アウリス達の会話って…いや、なんとも思わなかったことにしよう…)
新しい仲間が入ってまいりました。ヴィルシスさん、実は結構強いだとか…。