第29話『学園崩壊』
あれから久しぶりに学園を見に来たのだが…ものすごい崩壊具合だった。とにかく壊れていた。芸術は爆発だ!とか言ってぶっ壊したんじゃね?
「…ひどい状況だな…」
「クロード王子だ、こんにちは」
あまり関わりたくなかった…じゃなかった、久しぶりにクロードと会った。
「久しぶりだなアウリス、俺への接し方が変わったな」
「身分ではあなたのほうが上でしょうが同じ学園の生徒なので」
「そう言ってくれるのはアウリスだけだな」
クロード王子、なんか変わった?俺様系にジョブチェンジ?久しぶりに関わったけど…
「聞きたいことがあるのだがアウリス、クラス別対抗戦のときにマルクと戦ったのだが、あのときの指輪、アウリスからの差し金なんだってな」
指輪?クラス別対抗戦か…そんな事もあったなぁ…
「あの指輪はなにか説明してもらえるか?」
「…もしかして…」
「何だそういうことだったのか、アウリスはルールの穴をうまくついたな」
「そうなんです?」
「そうだ、実際ルールブックには指輪等の持ち込みを禁止していなかった、それに…」
「それに?」
「マルクはあの指輪をクラス別対抗戦以降もずっと大事にしていたぞ、理由を聞いたらアウリスのくれたものだからってな。いい弟を持ったものだ」
「そうですか…」
まさかあの指輪を大切に持っているとはな…もう捨てられているかとばかり思っていたのだが…そんなことはなかったようだな。マルクは絶対モテる。絶対に。
「お兄様、そこで何をしていますか?」
「噂をしてみれば」
「マル…ク?」
後ろを振り返るとマルクが立っていた。目元にはハイライトがなかった。口は笑っているが目は笑っていなかった。
アウリスが状況を判断している間にマルクはクロードの耳元に立ち寄り
「いくらあなたでもお兄様を渡すつもりはありません」
「大丈夫、アウリスには俺よりもいい相手がいるから、結構近くに」
するとマルクは周りを見渡した後、クロードの耳元で呟いた。
「…奪ったら許しませんよ」
「奪わないよ」
とクロードは笑顔で呟いたが、マルクは信用していなかったようだ。
彼奴等なんの話してんの?耳元で話してて…聞こえないんだが…なんか顔を赤くしているぞマルク、クロードが笑って…そういうことか。
「王子、あまりマルクをいじめないでくれ、王子といえど許さないからな」
「…怖い怖い、そんないじめるつもりはなかったんだ」
「お兄様…」
何だ?王子がこっちに近づいてきたぞ…
「マルクのこと、大切にしないと俺が奪っちゃうかもな」
「…もしそうしたら殺す」
「気をつけることだな」
…普通に困るな、そうなったら誰が侯爵の座受け継ぐんだよ。
「マルク、クロード王子になにか変なことを吹き込まれていないか?」
「別にそういったことは…」
「そうか、ならいいのだが…」
なんか調子狂うんだよなぁ…。こういうときに、タバコ吸いたいなぁ。
「…アウリス様は成長なさったのですね」
「…久しぶりだな、エルル」
「マルク様との関係も良好ですね、この様子だと侯爵の座はアウリス様に決まりそうですね」
と笑顔で衝撃の事実を伝えてくるメイドのエルル。
「…え?」
「…? なにかおかしいことでも…そもそもマルク様は正式にはクロドネス家の者では…」
…え?俺になろうとしてんの?成績も弟を下回っているのに?なんかエルルが言っていたが全く聞こえなかった。
「…ですよ、アウリス様、顔色が優れないようですが大丈夫ですか?」
「少しショックを受けただけだ、なんともない」
「…そうでしょうね、いきなりこのようなことを聞かされたらそうなるでしょうね」
あれ?エルルって俺と考え方案外似ている?俺が侯爵の座に君臨するのが面倒くさいこともバレてる?
「今日はもう休まれたほうがよろしいでしょう」
察してくれたエルルはそう言ってくれた。
「…マルクには部屋に戻ったと伝えてくれ」
「かしこまりました」
〜エルルの部屋〜
ただのメイドにしては部屋も綺麗だし良い環境だった。
「口を滑らせてアウリス様に話してしまいました。マルク様の生い立ちを…ショックを受けるのも無理はないでしょう」
アウリスに出会ったときにエルルはマルクの生い立ちについて口を滑らせてしまった。
「…アウリス様は、マルク様のことを、本当のことを知ってどう思うのでしょうか…」
マルクの生い立ちは、メイド、更に両親ですら話すことも躊躇していた。
「マルク様は元々、奴隷だということを知ってしまったとしても…普通に関わってくれるのでしょうか、アウリス様は…」
そう心配するエルルなのであった。
次回はマルクの過去について触れます。エピソードに訂正があったので書き直しました。