第3話『縁談』
登場人物
クロドネス家
・アウリス・クロドネス(主人公)
・マルク・クロドネス(弟)
・???(母)
・???(父)
昨日は結局寝ることが出来なかった。あの後どうすればよいのか考えていたのだが、結局考えがまとまらず、睡眠不足になりそうだ…。
「アウリスー!もう朝よー!」
この声は母の声だ。俺の母、メイル・クロドネスはいつも俺達兄弟を起こしている。あの人は朝から本当に元気で、俺にもその元気を分けてほしいものだ。
「わかったよ母さん、すぐ向かうよ」
以前から変わったことは、食堂に行くときに必ずマルクがついてくるようになった。なんか少し可愛らしく見えてくるのは気のせいだろうか。
食堂に到着したのでご飯をいただいていると、俺の父、グレッグ・クロドネスが口を開いた。
「そういえばアウリス、貴様に縁談の話が来ているのだが」
俺に縁談?嘘だそんなはずは…。
「アウリス、良かったじゃない、相手はあのアリシア第一王女よ!」
「…嘘ですよね」
とても信じられないので父に質問をした。
「本当だアウリス、このあと、アリシア第一王女とお見合いがあるからな」
「本当に良い話よね、アウリスにとって損はない話だと思うのだけど…」
まじか、第一王女から縁談が舞い降りてきたんですけど…めんど。
「アウリス・クロドネス…彼にはもともと興味をいだいていましたの」
「よろしかったのですかアリシア様、アリシア様にはクロード王子という…」
「お黙りなさい」
馬車に揺られながら会話しているのはアリシア第一王女と使用人なのであった。
「…彼にはクロード王子にないものを秘めているわ」
「そうなのですか…」
アリシアはクロドネス家の屋敷を窓越しに眺めながらそう呟いた。
やばいやばいやばい、俺には縁談とか、結婚に関しての話とかまったくなかったからこれでもかというほど緊張してしまっている!
「兄様…大丈夫ですか?」
「マルクか、俺なら大丈夫だ」
「…アリシア第一王女のことをどう思っていますか?」
つうかアリシアさんについては何も知らないから言いようがねぇ…
「話だけは聞いたことはあるのだが…まあ会ってみないことにはわからないだろう」
「そうですか」
何故かマルクが凄く悲しそうな表情を浮かべていた。やめてくれ、どうすればいいかわからないじゃないか。
「アウリス様、第一王女がお見えになりました」
そう報告するメイドのエルル。
「わかった、すぐ向かう。マルク、また後でな」
「兄様、また後で…ですね」
別れを告げるときのマルクは、どこか少し寂しくあった。
とある部屋の一室
「お初にお目にかかります、第一王女様」
「よろしくお願いしますわ、アウリス殿」
やべぇ、ガチ緊張してきた。こういうときは、まじで緊張するときにやっていたルーティンをやってみるまでか、社会人時代には役に立ったものだ。
「ではこちらへ」
何とかできているのだが…女性と接することのなかった俺は思ったのである。女性と接する回数を増やすべきやなと…。
(…この方、私を相手に簡単にエスコートしていますわ!)
アウリスとの縁談のために領地に訪れていたアリシアなのだがあまりにもアウリスがエスコートに慣れている(勘違い)ので驚いてしまっていた。
「改めまして、私の名前はアウリス・クロドネスと申します」
「私の名前はアリシア・アレクサンドレと申します、アウリス殿は最近は何をやられておりますの?」
「私は最近、訓練に顔を出しております」
この男、なかなかやるじゃない、と考えていたアリシアなのであった。
何とか縁談を進めているのだが、俺は今王女を相手にしているというわけなんだろう!?すごい経験だよ、ほんと。
「ではアウリス殿にお聞きしますわ、最近の国の情勢についてどう思うのかということなのですが」
やばいやばいやばい、そこは聞かれると思っていなかった。何故興味を持たれているのかわからねえけど、もう一か八かで行くしかない!
「国というのはマリノス王国で間違いないでしょうか」
「ええ、そうですわ」
マリノス王国に関してはこの前見つけた新聞記事で何とかするしかない!
「マリノス王国の情勢としましては、隣国と仲は良くないということは認知しております、ですが、もうそろそろどちらかが戦争を仕掛けようとしている状況も明らかになっています」
何言ってんの俺!間違っていたらどうすんの!でも周りの反応を見る限り合ってそうだし…もういいや、言っちゃえ!
「解決策としましては周囲の国に協力を仰ぐことですかね、周囲の国を味方につければさすがの隣国と言えど簡単に仕掛けられるとは思いません。と、私から言えることはこれくらいでしょう、あくまでも私の一個人の意見ですので」
俺が言い終わるとアリシアは納得…感心に近い反応をした。
「そうですか、ありがとうございます、もうお時間ですので」
「分かりました、お開きということでよろしいでしょうか」
ようやく縁談が終わったぞ…バカ緊張した…。こんな適当なことを喋った俺はもう第一王女に興味を持たれんだろ!だが俺は安堵のあまり聞き逃していたのだ
「ここまで的確に意見を述べれるとは思いませんでしたわ、ますます興味を抱きますわ…」
と喋っていることに…。