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第21話『模擬戦』

最近俺はラインハルトと関わっている。興味深いからだ。だが俺がラインハルトと関わっていると何故かすごい顔でマルクがこちらを睨んでいるようだ。怖いからやめてくれよ…




「今日は模擬戦を行っていく」


模擬戦とは、好きな相手と組んで1対1で戦う。至って単純なものだ。


「ハルトー、一緒にやらねーか?」

「いいんですか?」


どうして?と言いたいハルトだったがまあぶっちゃけ…


「俺がやりたいんだ」


俺は面倒くさいのでハルトと呼ぶことにしている。実力を知りたいしな、あとむっちゃマルクがこっち睨んできているんだが…?怖いからやめてくれ、マジ。




「じゃあ始めよう」

「オッケー、ハルト」


別に模擬戦を始めるタイミングはないようだ。みんな各々もう対戦しているようだった。


ハルトはこっちに来たかと思えば背後に駆け回ってきた。


「こっちは流石に予想してなかったぞ!」

「これに反応できるなんてすごいですよ」


マジ背後に来るのはヤバいって、死ぬって、殺す気だろあいつ。


いやまてこいつ、なにキョロキョロしてんだ?


俺は気付いた、ハルトが()()()()()()()()()()()()()()


…そういうこと?まあいい、一応様子見るか…









…アウリスはすごいな、僕の動きを読めるなんて


ラインハルトは驚いていた。アウリスに自分の動きを読まれることなど考えていなかったのだ。読まれるとしてもクロード王子に勝利したマルクくらいであろうと、でもそれは誤解だった。マルクの兄であるアウリスはもっとすごいのだと。


「これに反応できるなんてすごいですよ」


これはもう本心だった。自分は一撃で終わらせに行ったつもりだったのだが防がれてしまったのだ。


さて、周りの状況は…あそこが空いているな。


ハルトは目を使って戦況を把握していた。故に自分がどこに行けば勝利が見えるのか分かるのである。だがおかしい、どこに走り込んでも勝てる見込みがなかったのだ。

こんなことは初めてだった。ハルト自身、見誤っている訳ではなかった。今まで様々な強敵に出会ったが、どんな強敵にも弱点はあり、勝てる道があったのだ。それほどまでにアウリスは強い男なのであろうか、自分の目をも上回るほどの…。











…やっぱだ、こいつ、分かり易すぎる。ハルトは目線の方向にしかいかないから、目線の行く先に気づくことができたのでもう対策はできちまうが…なかなか動き出さん…面白くないな。


「ハルトが動き出さないなら俺から行くぞ」


そうして俺は自分の中でも最速だと思うスピードでハルトの背後に周り、首をトンッと押してやった。すると気絶しやがった。漫画の世界かよ。













…ここは、どこ?保健室?


そう自分が困惑していると


「ようやく起きたな、ハルト」


そこには模擬戦で戦ったアウリス本人がいたのだ。


「…君がここまで運んでくれたのかな、ありがとう」

「いやいや、それほどまででもないっていうか?」


とそんな感じに会話していたら


「…なんで僕は今日アウリスに負けちゃったんだろう」


と少し重い雰囲気で質問してきた。


「うーん…多分だが、ハルトは目で追って戦うって感じだろ?」

「はいはい」

「その目線通りに行きすぎることが多くて、パターンが単調すぎるってことなんじゃないか?もう少しレパートリーを持てるといいんじゃないか?」

「…参考になったかも、ありがとうね」

「どういたしまして、じゃあ俺は()()があるんで帰るわ、安静にな」


なるほど、自分が負けたのは戦術のゴリ押しというわけなのだ。確かにアウリスは相手を見極めて最後の一撃を出した感じだし…。なんかわからなくなってきた!もう自分の部屋に戻って寝ようかな、これ以上考えてもきりがないし。


そうして一人訓練に明け暮れるラインハルトなのであった。
















〜マルクの部屋〜


「…お兄様、ようやく来ましたか」

「すまんすまん、ちょっと保健室に行っててだな」


俺は保健室でハルトと話してからマルクの部屋に訪れていた。いや正確に言うと呼び出されたのだ。模擬戦のあとにマルクに来るように言われていたのだ。


「…お兄様、覚悟はできていますか?」


覚悟って何?今から殴られんの?


「何故こうなっているのか考えてください、お兄様」


マルクは笑みを、作っている感じの笑顔を顔に出していた。


怖すぎだろ、何されんの俺今、何も覚えがないよマジ。


「…わからないようですか、まあ教えてあげます」

「…」

「模擬戦の授業があったでしょう?あのときにお兄様は僕ではなく他の人を選んでいたからです」


…そういうことか、ようやく合致が行ったぜ。マルク…お前…










親しいやつと一緒になれなくて孤独感を味わうやつか!俺も痛いほど経験したもん。クラスの中で親しいやつとペア組もうとしたら、そいつは俺とペア組まずに他のやつと組むってやつ!しかもそいつ俺といるときよりも楽しそうで…


そう思うとマルクは俺の身体を抱きしめてきた。


「…僕、寂しかったんですからね…」


お前は小動物か!と突っ込みたくなってくる。

…まあ寂しかったのは分かる、俺も経験したし。これは流石に…まあいっか。





「…ひぐっ」


おっとこいつ泣き始めたぞ、そこまで?!初めて食らった俺もショックは受けたけどそこまでとはいかないぞ!こういうときはどんな言葉を入れてやればいいのかまじわかんねぇ…。離れてぇけど抱きしめられているから離れようもないからなぁ…


「…今日はほんとにごめんな」


(社会人の秘技、言い訳は使わない。素直に自分の非を認める。これが最適解なのである)


そう俺は思いながら背中をぽんぽんと当ててやった。顔を覗くことはできなかったが、俺の胸の中で泣いているのは分かる。


「ほんとに…ごめん」


と俺は言うしかなかった。マルクがまだ胸の中で泣いているのが分かる。


そんな状態が数時間続いたあと、俺はマルクをベットに寝かしつけて自分もベットで寝たのだった。













(…もう朝ですか。お兄様、昨日は申し訳ありませんでした)


マルクはベッドから起き上がると朝日を眺めながらそう思いにふける。


(お兄様のことを考えれば考えるほど思いが止まりません、どうすればよいのでしょうか…、こんな事を考えていても仕方ありませんね)


そう思い、ふとカレンダーを見つめる。


(…あともう少しで夏休み…ですか…お兄様は予定を開けているのでしょうか)


夏休みのことを考えていたらアウリスのことが先に出ていたマルク


「…はぁ、お兄様、僕は一体どうすればよいのでしょう…」


この悩みは誰にも明かすことのできない悩みなのであった。

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