第20話『ラインハルト』
突然なのだがこの世界はもともとはゲームの世界である。ゲーム名『ベルク・アリアージュ』別名『ベルジュ』という。本来ラインハルトという平民が様々な敵を倒しながら最終的にラスボスを倒すという展開になっていたのだが、ここまでのイベントをアウリス、マルク(主にマルク)がストーリーを壊してしまっている。
ちなみにアウリスは悪役貴族として登場するはずだった。
だが転生者の介入で変わった。原作のアウリスは自分の権力を使って好き勝手やるやつだった。弟のマルクからはガチで嫌われていた。
ちなみにマルクは主人公サイドに付くパーティメンバーだ。パーティメンバーといえど、少し物語を進めるとマルクより強いやつなんかわんさかと出てくる、最初は使えても後半あたりになれば使えなかったのだ。
だが転生者の介入によってこれまでの物語を壊されてしまった、アリシアがアウリスのもとに訪れるイベントは原作通りなのだが、アリシアはどれほどアウリスが落ちぶれた人間なのか気になっていたからだ。婚約の申立もしたのは興味があったからだ。彼女が「クロードにはないものを持っている」という発言をしたのはアウリスがあまりにも落ちぶれているがための発言なのである。
クラス別対抗戦はd組に入っているラインハルトを中心にクラスを引っ張るはずだった。どこかのバカがマルクをリーダーに立候補させてしまったのでラインハルトの出る幕がなかったというわけだ。
なんかずっと見られているんだが…
俺は何者かの視線をずっと感じていた。わかっている、黒い髪、黒い瞳…。とにかく何もかもが平凡だった。もう我慢できん…。
「何ずっとジロジロ見てんだ?」
「…なんでも」
ごめんと言いながら目を背けようとするが
「なんでもないわけ無いだろ、ここまでずっとジロジロ見られたら気づくだろ」
「…ごめん」
「…なぁ、なんでずっと見てたんだ?」
「…羨ましかったから…恵まれているあなたを見て…」
羨ましいというそいつは俺のことを恵まれていると認識しているそうなのだが
「恵まれてる…ねぇ…この学園に入れさせてもらっている時点でお前も恵まれてんじゃねぇの?」
「…僕が?」
この学園には言えるだけでもすごいぞと俺は言う。
「あと名前教えてくんね?」
「え、あ、名前…ラインハルトです、平民ですが…」
「平民だろうが貴族だろうとどうでもいいわ、気にするだけ面倒だわ」
「…そうですか…」
キーンコーンカーンコーン、とチャイムが鳴る。こういうところは前世の学校と同じなんだな、ラインハルトか…なんか面白そうなやつだった。
あいつの話し方は他のやつを引き付ける喋り方だったな。まるで物語の主人公みたいな…、おっとそんな事を考えている場合じゃないな。
ベルク・アリアージュの(元)主人公、ラインハルトは考えていた。自分は平民なのだが、学園の入学ができた。なので差別とか、いろいろなことに心配していた。今自分の中で最も心配していることと言えば強さだ。そんな実力を見せるにはクラス別対抗戦がうってつけだと考えた。
だけれどもそんな自分は活躍できなかった。人を倒すことができなかった。実力はあるのに相手に情をかけてしまった。相手が降参してくれたので良かったのだが、これが戦場だったら…考えたくもない。だからこそ、アウリスに憧れを持ってしまった。貴族というのは恵まれている、様々なものを持っている。
自分とはスタートラインから違うのだと。けどもアウリスは自分に
『恵まれてる…ねぇ…この学園に入れさせてもらっている時点でお前も恵まれてんじゃねぇの?』
といったのだ。…普通だったら貴族の嫌味にしか聞こえないだろう、だが、たしかに自分は生活できないほど貧乏でもないし、今も、明日も生きることができている。その発言は自分の考えを根本的に変えるきっかけになったのだ。やはりアウリスはすごい。
…だがラインハルトは知らなかった、あんな発言をされたのには特に深い理由はないこと、いやこの学園に入れるだけでも凄くね?と思っているだけだった。アウリスが