第18話『クラス別対抗戦②』
「君は確か…いつもアウリスとともにいる弟さんだったっけ」
はたから見れば優しさを感じる言葉だったが、今から戦うマルスにとってここまで恐怖を煽られる言葉はなかった。
「戦闘狂王子、あなたであれど容赦はしませんよ」
「戦闘狂…そう呼ばれてしまったか、少し悲しかったぞ」
「知りません、斬空剣!」
地面を割る威力だった斬空剣はかわされるどころか、剣を丸ごとキャッチしていたのだ。
「怖いですね、その剣」
「だったら水流剣!」
流れるような剣の軌道、基本捉えるのは難しいとされているのだが
「こんな剣の逸材が魔力を持っていないとは…」
魔力無し…そう言われた瞬間にあの日々がフラッシュバックしてしまう、今はそんなことはどうでも…
「今度はこっちの出番でいいか?地雷斬!」
さっきの発言に気を取られているうちにクロードが攻撃に出る。
地面を、地盤をも揺らがすこの力はマルクは予想もしていなかったのだ。自分の足元を救われる、その瞬間だった。
「火炎斬」
優しく呟かれたその言葉は、その優しさとは裏腹に炎に包まれていこうとした…
「こんなところで…終わってたまるかぁぁぁぁぁぁ!」
魂のカウンターだった。確実に狩れる、王子にとってのチャンスは、マルクにとってのチャンスでもあったのだ。
(驚いた、まさかカウンターを食らうとは思っていなかった)
肩から血が流れ始めている、”痛い”、久しぶりに感じるその感覚。そして同時に倒したい、そうとも思える相手だった。
マルクは自分自身に驚かされていた。本能で動いたその瞬間、この大会で初めてクロードを負傷させることができた初めての人間ということにもなる。
そういえばアウリスは自分にこんな事を言っていた。
「マルク、もし戦うことになったら、ただ見るんじゃない、良く視るんだ」
そう言っていたのを思い出した
「特にクロード王子の場合は人というものをよく視る」
そうだ、クロード王子は観察していたのだ、相手の行動を隅々まで見極めて間合いを取る、相手に自分の間合いに入れた瞬間、すぐに自分の優位な状況に持っていけるよう…
そうマルクは考えていたのだが、アウリスは(あいつ人の癖とかよく見つけるからなぁ、それに、こういうセリフ、一回くらいは言ってみたかったんだよなぁ)くらいにしか思っていなかった。
それをたまたま戦いとして結びつけられたマルクが優秀なだけである。
「さっきみたいに攻撃にいかないのか?」
「そう簡単に間合いに入ったらまずいと思ったので」
そう言い放ったら王子は表情を崩した。自分の戦術をわかりきられていると思ったからか動揺も見られた。だがマルクは誘いに乗らなかった。
「…はぁ、こういうことしたら、皆心配そうに俺に近づいて来たのになぁ、すごいな君は」
「怪しいと思っただけなので」
そうかと口にするクロード、そして間合い関係なしにこちらに突っ込む。
「私から行かせてもらおうか」
こうして剣を交らわせる戦いは、圧倒的にクロードが優位に思えたが、クロードの剣を捌くマルクも凄かったのだ。この戦いはもはや瞬間的に人間をやめている、そういう戦いになったのだ。
一方アウリスは…
「敵にまじで出会わん、俺って嫌われてんの?」
今大会の選手の中で唯一、まだ戦っていなかったのだ。