第10話『魔法』
外交から帰って来た俺たちは、魔法の家庭教師をしてくれる宮廷魔導師のマールス・ローランドが来ていた。緑色の髪の毛が印象に残る美人さんだ。
「これから君たちに魔法を教えようと思う」
「よろしくお願いします」
「…お願いします」
マルクは緊張しているようだ。
「魔法とは魔力を念じて発動させるものだ」
なるほど、俺が魔法を発動させることができたのは俺自身の魔力を使ったからか。
「その魔力を使い、イメージを具現化させて出るのが魔法というものだ。」
ほうほう、結構おもしろいじゃん、魔法。
「先生、質問ですが、魔法を使えるようになるためにはどうしたら良いのでしょうか」
「魔法というのは13歳以上であることを全体に、まずは体の中にある魔力を感じとることから始めてみると良いでしょう」
やっぱあの時に魔法が使えたのはやばかったんだな、兵士くん、教えてくれてありがとう。
「アウリス殿には魔力を感じますが…マルク殿に魔力の気配はありませんね…」
珍しい子ねとマールスさんは呟く。
「…先生、それはもしかして魔力感知ですか?」
「あら、よく知っているわね」
ゲームとかで見たことあるからな!とは言えないので元々知っていることにした。
「あなたは興味深いですね」
と美人に褒められて浮かれていると、マルクがこちらを睨んでいるのが分かった。
怖いから少し落ち着こうぜ。
魔法というのは本来、魔力を捻出させて出すものなのだが、捻出のさせ方についてはまだ解明されていないこともある。なのでアウリスみたいな魔法の出し方は例外という。
何故ならば彼は魔力、そして自身の精神力を元に魔法を生成していたからだ。押し付ける相手を守る執着心が魔法を出す原動力となった。
そのような魔法の出し方をする人間は未だかつていなかった。魔力で補えないところを己の精神力で補って見せたのだ。このような魔法の出し方はアウリスにしかできない芸とも言えるだろう。
その他魔法の原理を学んだあと、弟を侯爵にする策を思い浮かんだ。俺たちは15歳になったら学園に入る。その成績で弟を下回ればいいのだ。弟を優秀にさせればいいのだ。だが取れるところは取っておきたい。だから頑張って勉強しておこう。
「お兄様、頑張っていますね」
マルクはアウリスが机に向かって勉強している姿を見ていた。アウリスはとにかく努力する人間だ。嫌な顔ひとつせず物事に取り組む人間だった。
「お兄様が頑張るのであれば僕も頑張ります!」
マルクはそう決意した。けれど机に向かうと、ひとつ思うところがあった。
「…お兄様は強くてかっこいいのはわかりますが…相手が出来たら僕は何を思うのでしょうか」
そう、結婚相手が出来たらということだ。マルクはアウリスが幸せだったらそれでいいと思っているのだが、それでも気持ちがモヤモヤする時があるのだ。
「こんな気持ち…初めてです」
アウリスは強くて勉強も出来る。だからこそ令嬢が突っかかってくるのは間違いなかった。
(何と言いますか…その…怖いのです)
そうだ、怖いのだ。アウリスはとても優しい。だからこそ、怖かったのだ。最愛の兄を取られることが怖かったのだ。
兄のことを想うとマルクは自分のことが嫌になってくる。結局アウリスに甘えてしまっている。
(こんな…弟で…ごめんなさい…)
想えば想う程兄に対しての愛が止まらなく、深くなっていく。そんな自分が情けなかった。
とマルクは思い悩んでいるのだが、実際マルクが思っている以上にめんどくさがり屋で物事に対しての意欲だったらマルクの方が勝っている。むしろマルクの方が勝っている部分の方が多いのだ。
そして時代は流れゆく…
第2章に突入します!