第1話『初めての異世界』
俺の名前は本田真、どこにでもいる社会人だ。働いて、金をもらって、それほど生活に困ってなくて、友達もいて、唯一いないのが彼女だけだ。でも、彼女を作ろうと奮闘し、盛大に振られたあの日は忘れない。今あの子は幸せに生きているのだろうか…。気づけば会社の前の横断歩道まで来ていた。
「…ない!危ない!トラックが来ているぞ!」
誰かの声が聞こえ、振り返った矢先、ようやくトラックが間近にいることに気づいた。信号は赤だ。悪いのは自分だ。なぜ自分は赤信号のときに横断歩道をわたってしまったのだろうか。そして自分は確定された死を目前にして冷静だった。もう死ぬとわかっているからだ。
(あぁ、もっと楽しいと思える人生を過ごしたかったな…)
そしてトラックに当たったあと、ざわめきが聞こえる中、眠りにつくように意識を手放した。
目を開くと、すごいものが飾ってある部屋にいた。自分の見たことのない部屋でふかふかのベットで横たわっている状態だった。
(ここは…病院か?だとしてもこんな豪華ではないだろ…)
と自分が今どこにいるのか、何をしているのかと状況判断に勤しんでいると声が聞こえ、
「アウリスー!もう朝ですよー!」
アウリス?誰だそいつ、それに聞いたこともない声だ。
状況がわからなかった俺だったのだがこの身体は無意識に立ち上がって言葉を発していた。
「わかった、着替えたあと食堂に向かう」
「わかったわアウリス、待っているわね」
という会話を見たあと、ようやく自分の意志で体を動かすことができた。近くにおいてある鏡を見てみたら、そこには、青色の髪をした美少年がそこに写っていた。
(…嘘だろおい!こんな美少年に…いや、もしかして転生か?)
と自分が今ようやく異世界転生したということに気づいた。
(こんな美少年に転生できるとは思っていなかった、というかこいつマジでイケメンだな)
自分の姿をまじまじと見つめていた。やはり鏡に映るアリウスの姿はどこか見惚れるどころがある。こんな美少年が街で歩いてたら二度見する自信がある。
(おっと、食堂にいかなきゃならないんだったな…というか、食堂ってどこだ?)
目的を思い出したのだが、食堂がどこにあるかまでかは、俺はわからなかったのだ。
(何だあいつ、ちょうどいいところにいるじゃん、名前は何だっけ…そうそう、俺の弟のマルクというらしい、食堂の場所、あいつだったら知っているのか?)
マルクというのは、赤い髪の毛をしており、それでいてアウリスに負けない美貌を持っている、アリウスの弟だ。とんでもない兄弟だなと思いつつ食堂を探す。
「…アウリス兄様、そちらは食堂ではありませんよ」
声をかけられたと思い後ろを振り返るとマルクがいた。どうやらあっちに食堂はないらしい。
「マルクか、すまない、食堂の場所を忘れてしまってな」
「ではついてきてください」
「わかった」
とマルクといっしょに食堂に向かっていると、メイドらしき人物らがこちらを見てきているのがわかる。何かヒソヒソと話していたようだが、そうこうしているうちに食堂に到着した。
「アウリス兄様が珍しいですね、いつもは皆様よりも先に食堂にいらしているのに」
「…ちょっと夜寝るのが遅くてな」
「そうですか…」
アウリス、一つ質問していいか?お前って、そんなに食欲旺盛か?
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