ニセ聖女ですが自称魔王候補のイケメン大魔法使いに目をつけられて婚約者にされてしまいました…。〜ほんとは聖女よりも最強な妖精です!?
2025/10/23より長編版連載開始予定。
登場人物は同じですが、設定など変更されています。
ざんっ
わたしが剣を振るうと、魔物の巨体はあっという間にその場へ崩れ落ちる。
いままさに襲われそうになってた旅の人、とつぜん飛び出してきて一撃で魔物を倒したわたしを見て呆然。腰を抜かして地面にへたり込んで、「いったいなにが起こったのかわからない」って感じの表情してる。
……まあ、無理もないよね。
鞘へと剣を納めたわたし、そんな旅人へ、スッと手を差し伸べた。
「――旅のかた、お怪我はありませんでしたか?」
「あっ……はっ、はい…………っ!?」
我に返ったとおぼしき旅の人、まじまじとわたしを見やる。
その視線は、銀色をしたわたしの髪の毛に釘づけだ。
「あ、あの……」、まるでなにかに思い至ったかのように、旅の人がおずおずと口を開く。
「もしや、あなた様は……」
はいはい、きたきた、来ましたよ!
つい弛みそうになる頬をどうにか引き締めつつ、わたしはふわり、と微笑んでみせる。
見るものすべてを魅了するような、親しみと慈愛に満ちあふれた――聖女の微笑みだ。
「――名乗るほどのものではありません」
あくまで穏やかに、慎ましやかに、優しく。それでいて気品のある凜とした声色で、わたしは旅人に告げてやる。
「わたしはただの、ちょっぴりお節介な旅の剣士ですよ」
「ああ……!」
わたしの言葉に、旅の人が感極まったみたいに声を震わせた。
その目に、畏敬と崇拝の色が浮かぶ。
「そのお美しい銀の髪に、気品あるお姿や立ち居振る舞い! そしてなにより、魔物の猛毒を恐れず戦うその勇姿と、圧倒的な強さ……! やはり、あなた様がウワサに名高い《銀煌の聖女》エル・クレアードさま!」
その言葉を肯定も否定もせず、わたしはただ、優雅に微笑み続けた。
* * *
「いやー、チョロいチョロい! 人生、楽勝すぎではっ!?」
――それから、少し後。
旅の人と別れたわたし、お礼の品を山と抱え、ホクホクしながら森の小道をスキップしてた。
……えっ、《銀煌の聖女》さま?
いやいや、フツーに違いますけど?
大貴族の一人娘として生を受け、わずか十二歳で騎士の称号を得た、当代最強と謳われる天才少女。この大陸でその名を知らぬ者はいない超・有名人《銀煌の聖女》エル・クレアードさまが、まさか、こんな辺境の森をあてもなくうろついてるワケないじゃん。常識的に考えて。
わたしはピュイ。旅の剣士。
わけあって故郷を出て、それからずっと、ひとりで放浪生活してる。
もちろん、聖女さまとはなんの関わりもない。……んだけど。
たまたま聖女さまと同じ歳で、同じ銀の髪と青い瞳をしてるうえ、さっきみたいに魔物を倒して回ってるもんだから、いつの間にか《銀煌の聖女》さまだと間違われるようになっちゃったんだよね。
ちなみ、本物の聖女さまは数年前に謎の失踪を遂げ、現在も絶賛消息不明中。
そんなこんなで本人が不在なせいもあって、わたしみたいなのでも聖女さまだと勘違いされちゃうんだと思う。
まあ、わたしだって、最初の頃は「いや、聖女じゃないです。人違いです」ってちゃんと否定してたんだけどね。
行く先々であまりに何度も何度も間違われるうえ、そうやって否定すればするほど、かえって本物っぽく思われちゃうってのもあって……その度に誤解を解くことに疲れ果てたわたし、ついに諦め、いっそ開き直ることにしたんだ。
いざ腹をくくってみれば、聖女さまと勘違いされるのも、そう悪いことばかりじゃない。
まず、お礼の内容、格段にランクアップする。
今日だって、サクッと魔物倒しただけなのにまるで国ひとつ救ったんじゃないかってくらい感謝されたうえに、こんなにいろいろ貰っちゃって、なんだかちょっと申し訳ないくらい。
……あっ、もちろん、わたしの方からお礼を要求したりはしてないよっ!?
わたしもべつに、感謝されたくて魔物を倒したり、人助けしてるわけじゃない。魔物の脅威に怯える人々のためにわたしの剣の腕が少しでも役に立つなら、それで充分。
……まあ、いまは実質それで生計立ててるから、いろいろ貰えるのはフツーに助かるんだけど(街でバイトするより性に合ってるし、効率だって良いし)、それはまた、べつのお話。
それに、なにより、聖女さまだと思われると、相手からナメられにくい。
わたしみたいな素性も知れないソロの女剣士、たとえどんなに実力があったって軽んじられるし、足下を見られる。
今日みたいに魔物を倒して人助けしても、感謝されるどころか、逆に助けた相手に襲われそうになったりことすらあるんだもん。あのときはどうにか逃げたけど、あれはほんと最悪だった。人間不信になるよ……。
だから、これは、わたしなりの生存戦略。
このご時世、女の子がひとりで生きていくのは大変なんだ。利用できるものがあれば、なんでも利用するよ。
聖女さまと同じ銀の髪と青い目は、わたしの武器のひとつ。せいぜい活用しないとね。
……とはいえ、正直、後ろめたい気持ちは、ある。
ある、なんてもんじゃない。めちゃめちゃある。
で、でもっ、わたしが魔物を倒して人助けしてるのは事実だし!
それに、わたしが自分から聖女だって名乗ったこと、これまでただの一度だってない。いつだって、あくまでむこうが勝手に勘違いして、崇めて、ちやほやしてくれるってだけ。ほんとだよっ!? 女神さまに誓ってもいい!
……まあ、わたしの方も、聖女さまっぽい口調とか振る舞いとか微笑みとかは地道に練習したけど。
でもっ! それはそれじゃんっ!?
あとさ、誰だって、自分を助けてくれた相手が名もなき一般人っていうよりかは、有名人だったって方が嬉しいはず。
それに、わたしが立てた手柄は全部、聖女さまの名声に繋がるわけだし……つまり、基本的に誰も損してないってワケ。
こういうのをWin-Win、八方よしって言うんだよねっ! だから、これで良いんだ、うん!
それに、本物の《銀煌の聖女》さまはもちろん、きっと、そりゃあお強いんだろうけど、わたしだってそうそう捨てたモンじゃない。
ていうか、わたし、魔物が相手だったら、聖女さまだってもひけを取らない自信、ある。
――だってわたし、ただの人間じゃなくて、妖精なんだもん。
妖精っていうのは、この世界の食物連鎖の頂点に君臨する最強の種族。
人間にとっての最大の脅威――その血肉に猛毒を持ち、人間を食べる獰猛な魔物たちですら、わたしたち妖精にとっては単なる獲物。……っていうか、もはやエサ。
猫にとってのネズミ……ううん、むしろウサギにとってのニンジンとか、イヌにとっての骨みたいな?
とにかく、敵なんてレベルじゃないくらい楽勝、ってこと。
しかも、実はわたしの母さん、かつて魔王を倒した勇者さまご一行の魔法剣士。
そんな母さんに、子どもの頃からみっちりと英才教育を受けてきたんだ。
そりゃあ、大陸最強の女騎士である聖女さまと勘違いされちゃうのも、しかたないよね。(……なんちゃって)
まあ、そんなわたしが、どうして故郷を出て放浪してるのかっていうと、話せば長くなるんだけど……。
「……んっ?」
――森の奥の方から、また、魔物の咆哮が聞こえてくる。
間違いない。この鳴き声って、魔物が獲物を見つけたときのそれ。
魔物って人間しか食べないから、つまり、また誰か人間が魔物に襲われそうになってる、ってこと。
……最近ほんっと増えたなあ、魔物。今日はもう、荷物を降ろして野宿しようと思ってたのに、これじゃひと息つく暇もないじゃないか。
でも、もちろん、魔物に食べられそうになってる人を見殺しにするわけにはいかない。
内心やれやれ、と思いつつ、わたしは急いで声の聞こえる方に向かって駆け出した。
* * *
瘴気――魔物の身体から放たれる猛毒の匂いが、だんだん濃くなってく。
さいごの藪をかき分けて少し開けた場所へ飛び出すと、案の定。危惧してたとおり、いままた、ひとりの旅人が魔物に襲われかけてた!
「あぶないっ!」
わたしはとっさに剣を抜き、自分よりもはるかに大きな魔物へ果敢に飛びかかる。
……戦略? ないよ、そんなの。
妖精のわたしには、魔物の倒し方は本能で分かる。だから、ただ身体が動くまま剣を振るえばいいだけ。
わたしがなにも考えず振り下ろした剣の切っ先、魔物の急所を一撃で捉える。
ほんの一瞬後にはもう、魔物の巨体は地響きを立てて崩れ落ち、動かなくなった。
ほんと、魔物を倒すのってすっごい簡単。わたしにとってはモーニングティー前って感じ。
持ち前のこのスキルをフルに活かし、なるべくラクしながらおいしいものを食べて楽しく暮らすのが、目下のところのわたしの最大の望みなんだ。
「――旅のかた、お怪我はありませんでしたか?」
剣を鞘へと納めつつ(……さっきもやったな、これ)、わたしは旅人へ向き直る。
本日二人目の旅人は、黒ずくめの格好をしてた。
上着もズボンもマントも黒だし、なんなら、指先まで覆う手袋だって黒。しかも、黒くてぶ厚いフードを目深にかぶってる。
……ずいぶん黒が好きなんだなあ。なんか、こだわりでもあるんだろうか。
わたしがそんなこと考えてると、フードの旅人が口を開いた。
「まさか、あなた様は……」
……はいはい。いつものいつもの。
お約束の展開に内心ほくそ笑みつつ、わたしは本日二度目の聖女スマイルを浮かべてみせる。もう、すっかり慣れたもんだ。
「いえ、名乗るほどの者では……」
「――やはり、お前が《銀煌の聖女》か」
フードの下から、切れ長の鋭い眼光がこちらを見据えてくる。
呟きが聞こえるのと同時に、何者かがぐい、とわたしの腕を掴んだ。
「っ!?」
わたしはとっさに自分の腕を見やる。
たしかに何者かに掴まれてる感触があるし、じっさい、わたしの腕はその場に縫い止められたように動かない。でも、周りに誰もいないし、目の前のフードの男も、微動だにしてない。
つまり、これって……。
……魔法っ!?
不可視の手が、わたしの腕を掴んでる。
わたしが思わず視線を向けると、目の前の旅人が、顔に掛かっていたフードを撥ね上げた。
「――ようやく見つけたぞ。《銀煌の聖女》エル・クレアード」
フードの男の顔が露わになる。
こんな状況にも関わらず、つい、見とれてしまうほど綺麗な顔をした青年だった。たぶん、わたしよりほんの少しだけ歳上だと思う。
白皙の肌に、長い黒髪。
深い夜のような色をした神秘的な瞳が、まるで値踏みするようにじっと、こちらを見てる。
「……って!」
その美しさに一瞬、気圧されたわたし、けれども、すぐ我に返った。
魔法で拘束されたまま、わたしはそいつの顔、思いっきり睨み返してやる!
「あんたねえっ! 魔物から命を救ってくれた恩人に対して、いくらなんでもこの仕打ちはないんじゃないっ!? ていうか、いったい何者なんだっ!?」
「……ああ。申し遅れたな。俺はヴィルク。《夜陰》の大魔法使いだ」
じゃらり、と、金属の鎖が擦れる音がする。
彼が腰から外してわたしの目の前に掲げて見せたの、まごうことなき大魔法使いの証。卵よりも大きな宝石が嵌められた、いかつくて荘厳なアミュレットだ。
「だ、大魔法使いっ!?」
わたしは思わず声を上擦らせてしまう。
大魔法使いっていうのは、この大陸にたった数人しかいない、超がつくくらい強い魔法使いのこと。
たったひとりでも国を揺るがすほどの強大な力を持ってるもんだから野放しにしておくわけにもいかなくて。大陸国家同盟へ忠誠を誓うことと引き換えに、彼らには高位貴族と同等の身分と権力が与えられてる。……んだけど。
そんなやばい人が、なんだって、こんな辺境の森にいるんだっ!?
……いや。そんなの、分かりきってるじゃないか!
わたしの身体中から血の気が引いた。体温がすっと下がるのを感じる。
わたしが聖女さまのフリをしてたから、ウワサを聞きつけてやって来たんだ!
それに、大魔法使いなら貴族とも交流、あったりするかもしれないし、まさか、本物の聖女さまに頼まれて、ニセ聖女のわたしを捕まえに来たんじゃっ……。
最悪の展開ばかりが脳裏をよぎって、わたしはすっかり取り乱してしまう。
……ああ、こんなことになるなら、聖女のフリなんてしなければ良かった!
これまでの行いを後悔し始めるわたしの前で、大魔法使いを名乗る黒衣の青年が、ニヤリ、と笑った。
「光栄に思うがいいぞ」 青年が、なんだか嬉しそうに目を細める。
「《銀煌の聖女》。――……今日から、お前は俺の婚約者だ」
「へっ…………」
わたしは思わず、マヌケな声をあげてしまう。
こんやく……しゃ………………?
……とうとつに告げられたその言葉の意味を脳が理解するまでには、若干の時間が必要だった。
「はあっ!?!?!?」
ややあって、わたしは思いっきり声を上擦らせてしまう。
「あんた、いったいなにを言ってっ……ていうか、なんで大魔法使いが、聖女を、婚約者にっ!?」
「預言があったんだよ。『《銀煌の聖女》は魔王を産む』、と」
「聖女が魔王をっ!? なんでっ!?」
「……そんなこと、俺が知るか」
思わず問うと、魔法使いが呆れたような顔をする。
「とにかく、そういう預言があったのだからして、実際そうなるんだろう。……まあ、普通に考えれば、聖女は魔王の妻となり、次の魔王を産む、ということだろうな」
「聖女が魔王を産むのは分かったけど、それが大魔法使いにどう関係あるんだよっ?」
「俺は近いうち、新たな魔王になるからな」
まるで明日の予定でも告げるくらいの口調で、魔法使いがさらりと宣言する。
「と、なれば、いずれ魔王を産むという聖女を先んじて手に入れておくのは当然だろう?」
「ま、魔王~っ!?」
待って待って、情報量が多くてついていけないんだけどっ!?
ていうか、魔王になるだなんて、こいつ、なに考えてるんだっ!? 先の勇者やわたしの母さん達が苦労して魔王を倒してくれたお陰で、やっと大陸も平和になったっていうのに!
「大魔法使いってのはそういう悪さをしないための身分じゃないのっ!? 大魔法使いって、たしか、互いに監視し合ってるはずっ……」
「問題ない。俺は俺のしたいようにするさ。必要なら、他の大魔法使いたち全てを敵に回すことも厭わない。……俺の人生の師が言っていたからな。夢とプリンは大きければ大きいほど良いものだ、と」
「そんなノリの言葉を真に受けて魔王になろうとするっ!?」
ううっ……。わたしは冷や汗をかきながら思案する。
……なんだかよく分からないけど、わたし、とんでもなく面倒なことに巻き込まれてしまってるのではっ……?
「事情はだいたい分かった、けど……」ややあって、わたしは口を開いた。
「……残念だったね。わたしは《銀煌の聖女》じゃない。だから魔王なんて産まないし、あんたのご期待には添えない」
肩をすくめながら、きっぱりと言ってやる。
そうだよ。そもそも人違いじゃん。魔王がどうとか、婚約者がどうとか、そんなの、聖女じゃないわたしにはいっさい関係のないこと。と、なれば、さっさと誤解を解いて解放されればいいだけの話だ。
「なにを言う」
……けど、大魔法使いはわたしの言葉、一顧だにしない。
「その美しい銀の髪に、澄んだ泉のような青い瞳。それに、なによりもその強さ。――お前ほど強い女が、《銀煌の聖女》以外にいるものか」
……ああ、そうだった!
最近すっかり開き直って聖女のフリしてたから忘れてたけど、そもそも、わたしを聖女だと思い込んでる人に違うって言っても、ぜんぜん信じてもらえないんだった!
なんせ、本物だと思わせる要素ならいくらでもあるけど、偽者だってことを証明できるものなんて、なにひとつないんだ。身分証でもあれば良いんだろうけど、訳あって着の身着のまま故郷を出てきたわたしがそんなもの、持ってるはずもないし……。
つまり、完全に詰んだ…………。
残された希望は、いまこの瞬間、たまたま本物の聖女さまが目の前を通りかかって誤解を解いてくれることだけど……まあ、無理ですよね~!
……いや。
わたしが聖女じゃないって証明する方法、実はひとつだけある。
まあ、あるには、あるんだけど……。
……いくらなんでも、妖精だって明かすわけにはいかないからなぁ。
なんせ、妖精ってのは超貴重なレア種族。その羽や血肉は薬になると言われて人間に乱獲されてきたから、いまじゃほとんど絶滅寸前。ヘタしたら、わたしと母さんのふたりが最後の個体かもしれない、ってレベル。
しかも、相手は世界征服をたくらむヤバい大魔法使い。もし正体がバレでもしたら、なにされるか分かったもんじゃない! 利用価値がありすぎるんだよ~!
わたしが妖精だってことだけは、なにがあっても絶対に隠さなきゃ!
「とにかく、わたしは聖女じゃっ……」
なおも言い募ろうとしたわたし、ふと、言いかけた言葉を呑んだ。
視界の端で、何かが動いた気がした。
唸り声が聞こえる。
わたしが思わず顔を向けると、魔法使いの背後で、わたしがついさっき倒したはずの魔物、ゆっくりと起き上がろうとしてるとこだった。
……しまった!
わたしはつい、舌打ちする。
油断した。魔物を倒すなんて楽勝だって、つい慢心して、トドメを刺しきれてなかった。
さっきの魔物、まだ息が残ってたんだ……っ!
わたしはとっさに剣を抜こうとする。
でも、相変わらず不可視の力がわたしの腕を掴んでて動けない!
「魔法解いてっ!」わたしは苛立ちながら魔法使いに向かって声、荒げた。
「さっきの魔物、まだ生きてるっ! はやくトドメを刺さなきゃっ……」
わたしが最後まで言い終えるよりも先に、視界に閃光が走った。
まぶしさのあまり反射的に目をつぶって……わたしが次に目を開いたときにはもう、全てが終わってた。
魔物の巨体、ほんのわずかな灰すら残さず完全に消滅してる。まるで、最初から、なにも存在しなかったみたいに。
「やれやれ」、と、魔法使いが肩をすくめてみせる。
「――婚約者との語らいを邪魔するとは、野暮な魔物だ」
「へっ……」
魔法使いのとんでもない力を目の当たりにして、わたしは思わずあんぐりと口を開けてしまう。
……って! いや、なんだよ、こいつ! 大魔法使いって、こんなに強いのっ!?
こんなの、いったい誰が止められるって言うんだ……っ!?
ていうか、こんなやつが新しい魔王になったら、絶対ヤバいってばっ!
「……さて」
魔法使いが、再びわたしに向き直った。
「《銀煌の聖女》……いや、我が婚約者よ」
わたしのものじゃない名前を呼びながら、彼はその切れ長の目でわたしのこと、真っ直ぐに見つめてくる。
「聖女の望みは、全て叶えてやる。――晴れて俺が魔王になった暁には、聖女のために宮殿を建てよう。大勢の召使いをつけて、下にも置かないような扱いをしてやるよ」
まるで、それ自体が魔法を帯びているかのような。吸い込まれそうなくらい深い色をした瞳。
その美しさに、わたしは一瞬、目を奪われて……。
「……って!」
わたしはぶんぶんと首を振った。
そのまま、目の前の魔法使いをきっと睨みつける!
「誰があんたの婚約者なんかになるかっ! ていうか、わたしは聖女さまじゃないんだってばっ!」
「はっはっはっ、往生際が悪いぞ、聖女」
「人の話を聞け~っっっ!!!!!」
森の中に、わたしの悲痛な叫びがこだまする。
……ううっ。わたし、これからどうなっちゃうんだっ!?
最後まで読んでくださってありがとうございました〜!
初投稿なのでとりあえず作者の性癖純度百パーセントの作品を書いてみました。
最強したたかな女子×最強な男子の組み合わせが大好物です。
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