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フィリップの心変わり

読んでいただきありがとうございます。宜しくお願いします。暇つぶしにしていただければ嬉しいです。

 雲一つない青空のもとに大勢の子供たちと保護者が雑談を交わしていた。

さすが王家の庭である。様々な花が咲き乱れ、木々が美しく整えられている。

それぞれの貴族の庭園も素晴らしいだろうが、王家の庭園は群を抜いて素晴らしかった。




馬車から降りたフィリップがエスコートしたリーナに一瞬視線が釘付けになったような気がした。「あんな子が婚約者なら私の方が相応しいわ」「身分も容姿も私の方が上じゃない」


子どものうちから聞こえるように悪口を言うなんて親の顔が見てみたいものだわと考えながらリーナはフィリップと手を繋いでその場をやり過ごした。


リーナが側にいるのに突進してきた令嬢もいた。

「ご機嫌よう、フィリップ様。わたくし公爵家のフランソワと申しますの。以後お知り置きを」

「私には婚約者がおりますので他の令嬢と親しくはできません。またする気もありませんので失礼します」

その途端凄い目つきで睨まれた。



「あの方、凄い目つきだったわよ、そんなに好きなら可愛くすれば良いのに」

「君を完全に無視したじゃないか、可愛くなんて出来るはずもないさ。元々が可愛くないんだから。知り合ってもないのに好きなわけもないだろう。勘違いも甚だしいよ。身分が上だからって礼儀もなっていない」

「フィリップって毒舌だったのね、知らなかったわ」

「記憶に残っているのが酷い思い出ばかりなんだ。毒も吐きたくなるよ」

「思ってたよりも大変だったのね。あっ、陛下がいらっしゃったわ」



王族が宮殿の庭園へおいでになったので皆頭を垂れた。

「皆のもの面を上げてくれ。今日は良い日和になった。王家との親睦を深めてもらいたいと思っている。楽しい時を過ごして欲しい」



そこには陛下と王妃様、三人の王子様がキラキラとした存在感で立っておられた。大人たちは伯爵家から侯爵家、公爵家と令息や令嬢を伴って挨拶をした。

リーナの家は伯爵家だが歴史が古いので伯爵家でも後の方だった。


フィリップの侯爵家は中程の位置だ。呼ぶまでお菓子でも食べていなさいと言われて二人で手を繋ぎおやつのところまで行った。少しだけ食べて周りの様子を見るつもりだ。さっきのような令嬢がいつ現れるかわからないからである。


「さっきみたいな口調で令嬢を蹴散らしたらいいのに」

「毒舌を吐けってこと?」

「そうよ、顔とギャップが激しくて突撃してくる令嬢が減ると思うわ」

「リーナと婚約しただけでもかなり減ったんだけど」

「あらお役に立てて良かったわ」

「リーナに嫌な思いをさせて申し訳ないと思ってる」

「こんな事何でもないわ。フィリップはわたしが守ってあげる」

「女の子に守ってもらうなんて情けないよ」

「そんなことはないわ、いつかフィリップに守ってもらう日が来るかもしれないでしょう。先行投資よ」

「リーナは考え方が面白いな、きっと将来君を守ってみせるよ」




こうして初めての公式のお茶会はつつがなく終わった。リーナとフィリップは緊張が解けて帰りの馬車でぐったりしていた。夕食でもとマクドネル家に誘われたが早く帰りたいリーナは我儘を言わせてもらうことにした。




✠✠✠✠✠


遠慮なく話せていたのはこの頃までだったとリーナは思う。

フィリップは変わってしまった。お茶会をしても「ああ」くらいしか返事が来なくなった。

美味しいお菓子を食べて

「このお菓子今とっても流行ってるんですって」

と言っても

「そうか」

しか返事がなくなった。持ってきてくれる花も赤い薔薇を一本だけ、花言葉を知らないリーナではなかったが、渡し方がなんとも素っ気ない。



実は私のことも嫌いだったのかとあの日の会話を思い出し悲しくなるリーナだった。心を開いてくれているとばかり思っていたのは自分の思い上がりだったのだと考えたリーナは父に婚約の解消を願い出た。



「お父様、フィリップは私のことが嫌いだったようです。この婚約解消していただけませんでしょうか」

「喧嘩でもしたのかな?」

「喧嘩するまでもいきませんわ、お茶会もしかたなく来ている様子ですし、話しかけてもああ、とか、そうかしか言いませんの。お花も赤い薔薇を投げやりにくれるだけなんです。侯爵家から息子の婚約者にというお話があった時に私に好きな人ができたら解消をするという約束をいただいていましたわよね。好きな人ができたからと言って解消してくださいませ」



「男はそんな時期があるものなんだが。大目には見てやれないか?」

「嫌われている人とお茶を飲む苦痛をおわかりになります?こちらから望んだわけでもありませんのに」

「侯爵と話をしてみるよ、まあそんなに怒らないで落ち着きなさい。いつ頃からなのかな?そんな態度になったのは」

「王家のお茶会の少し後くらいからですわ。あの時公爵令嬢のフランソワ様が近づいてこられてフィリップだけに話をして私を無視したと怒ってくれていましたけど、今の自分も同じようなことをしているのですからお話になりませんわ」

「そんな事があったのだね。あの令嬢は公爵家の妹さんが平民と駆け落ちして亡くなった後、見つかった姪御さんらしい。今まで平民として暮らしておられたそうだから、礼儀がわかっていないのだろう」

「お父様にお話したら落ち着いてきました。はしたないところをお見せして申し訳ございません」

「この話は父に預からせて欲しい。きっと悪いようにはしない。リーナはフィリップ君のことは何とも思っていなかったのかな?」

「仮の婚約者で、話のできるお友達だと思っていましたわ。向こうは嫌っていたようですけど」

「仮の婚約者か、努力が足りんな」

赤い薔薇の意味も知っていたが口にするべきではないと思った。多分娘も知っている。

「では失礼しますわ。解消のことよろしくお願いしますね」


父は娘が言い出したらなかなか頑固なことを知っていた。王家のお茶会からとなると半年は娘をこけにしてくれた訳か、何か理由があるのかもしれないが、思春期独特の病気だと娘がこれ以上傷つく前に、引き離す必要があるかもしれないと考えた。


まだ学院には行っていない。会えなくしてショックを与えるのはどうだろう。色々考えて悪い顔をする伯爵だった。



早速マクドネル家に先触れを出して訪問の約束を取り付けた。

訪問は1週間後になった。

「お互い忙しくてなかなか会えないが元気だったか?」

「ああ、元気だ。時間が惜しい。はっきり言ったほうが良いだろう。娘はフィリップ君との婚約を解消したがっている」

「息子は浮気などするような人間ではないが、何か失礼なことをしたのだろうか」



伯爵はリーナが話したことをそのまま話した。

「王家のお茶会の頃までは普通に話せていたらしい、娘が何かをしたとは思えない。何かがきっかけで人間不信が再発したのではないか?」

「リーナ嬢と知り合ってから表情が明るくなったと思っていて、安心していた。済まない、調べてみるから時間をくれないか」

「ここにフィリップ君を呼んでくれてもいいんだが」

「今は母親と祖母のところに行っていていないんだ。申し訳ない」

「娘に傷のつかない様にしたいと思っているからそのつもりでいてくれ。元々そちらの頼みだったのだからな」

「わかっているよ、リーナちゃんは本当の娘のように思っているんだ。何を考えているんだ馬鹿息子は」


侯爵は息子がリーナ嬢をないがしろにしているなどと考えたこともなかった。

人に心を開くきっかけになった大切な娘さんじゃないか。慎重な対応をさせなくてはと思った。






誤字脱字報告ありがとうございます。フィリップ君思春期特有の好きなこの前だと何も言えない病なのでしょうか。

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