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フィリップの受難

宜しくお願いします。お楽しみいただければ幸いです。

 リーナ・エステルとフィリップ・マクドネルは十歳の時に婚約した。父親同士が仲が良かったこともあるが、主な理由はフィリップの女の子避けの為だった。

フィリップは天使が地上に降りてきたのではないかというくらい、人外の容姿をしていて、幼い頃から男女を問わず襲われかけたり、迫られたりしていた。そのたびに護衛がぎりぎりのところで守ることが出来ていたが、かなりの人間嫌いになりかけていた。



その為信頼の置ける者しかそばに置くことをマクドネル侯爵家は容認していなかった。

家族以外には心を開いていなかった息子に友人の令嬢であるリーナを紹介してもらいたいといつしか侯爵は思うようになっていた。それが二人が六歳の時である。




エステル家に行くと必ずリーナが挨拶に来てくれる。

お土産には流行りのお菓子を持参するので、それが目当てだと思うのだがそれも可愛く思える。「おじ様いつも美味しいお菓子をありがとうございます」と言ってにこっとするのがどうにも可愛い。自分の二歳の娘の将来の姿を見ているような気がする。この子がフィリップの側にいてくれたら息子も息をするのが楽になるだろうと思った。



それからエステル家にお邪魔する時にフィリップを同伴するようになった。自然と仲良くさせようという作戦だ。フィリップはなかなか打ち解けようとはしなかった。どうにも身構えてしまうようだった。


それでも顔見知り程度には話ができるようになった。このまま友達程度には話せるようになって欲しかった。リーナは気立の優しい穏やかな女の子だった。フィリップが壁を作って人を寄せ付けない理由も両親から聞いて知っていたので、無理に近づくこともしなかった。しかしそこは子供、いつしか距離は自然に近づいていった。


リーナは綺麗すぎる人って可哀想だなくらいには理解していた。確かにフィリップは綺麗だと思う。女の子たちが騒ぐのも無理はないと思うのだ。リーナだって彼の顔は好きだ。でも何を考えているのか分からない人の何処がいいのか理解に苦しんでしまう。感情を何処かに忘れて来たのかと思うくらい無表情だった。

整いすぎた容姿に高位貴族の令息という彼の立場に憧れる令嬢のなんと多いことか。幼児でこれだ、おじ様が用心しているのも段々とわかってきたリーナだった。




✠✠✠✠✠


もうすぐ十歳になろうというのに今のところフィリップの友達はリーナだけだった。その頃には好きな食べ物の話や興味のある勉強の話が出来るまでには信頼関係が出来ていた。子供らしくない淡々とした時間が過ぎてもリーナは苦痛ではなかった。フィリップもらしい。話をしなくても気詰まりにならないのは居心地が良かった。



そんなある日王家主催の子供主体のお茶会の招待状が高位貴族に届けられた。さぞやフィリップは大変だろうなと他人事のように思っていたリーナに一大事が起きてしまう事になる。リーナも伯爵令嬢なので招待状は来ていたのだが大人しく過ごしていれば大丈夫だと妙な自信を持っていたのだ。



しかし侯爵家からフィリップと一緒に参加してくれないかというお願いが来たのだ。しかも婚約者としてだ。最初は嫌がっていたフィリップだがリーナと一緒なら行っても良いと言ったらしい。王家からの招待を断るわけにはいかない。仮病でも使えばいいのにと思ったリーナは悪くないと思う。



リーナに瑕疵が付くのを悪く思った侯爵家が婚約者としてどうかと言ってきた。

友達としては打ち解け好意もあったが恋愛感情はわからなかったので、素直に伝えると大きくなってもし好きな人が出来たら解消はするし、賠償金も払うと言う事で話が決まった。

格上の侯爵家の頼みだが、娘が可愛い父は友人だからこそ異を唱えた。リーナがそれで良いと言い話が決まった。子供ながらフイリップに同情していたのだ。



リーナはフィリップを守ってあげないとという使命感でこの話を受けた。

幸いリーナは大人しいばかりの性格ではなかった。普段は穏やかだが頭がよく回るので口が達者である。その辺の女の子を撃退することは簡単だと思っていた。



二人は作戦を立てることにした。まずはリーナが婚約者なので立場上近づかないでと言えるし、側から離れる気もない。


もしも乱暴な令息がいても護衛を近くに配置して貰うのでこれも問題なし。


後はお互いが一人になった時の対策だ。これは主にリリーだがお花摘みは飲み物を出来るだけ摂らないようにする事で回数は減らせると思う。口を潤すだけでも随分違うと思われる。幸い季節は春だ、そんなに喉が渇くことも無いだろうと思われた。それに保護者が同伴する事になっている。王子様達の側近と婚約者選びが主な目的らしいので主役が王族なら貴族の子供達が騒ぎを起こす事も無いだろうと考えた。



フィリップは後継教育の一つとして剣術の鍛錬も受けていた。リーナを傷つける者がいれば自分が守るつもりでいる。今はまだ子供で大人の力を借りないといけないが将来はリーナを守れる男になりたいと思っていた。




お茶会当日になった。リーナはフィリップから贈られたプリンセスラインの薄桃色のワンピースを着ることになった。襟に白のレースが付きスカート部分がふんわりとチューリップの花のようになった可愛いデザインの物だった。少しだけお化粧も施してもらった。


婚約者の証の細いピンクダイヤの指輪も左手の薬指に輝いていた。


こんなに可愛くしてもらってもフィリップの隣では霞だろうなとリーナは理性的に考えていた。事実リーナを迎えに来たフィリップは黒のタキシードだけなのに圧倒的な美しさを放っていた。可愛らしいピンクのチューリップの花束を手渡しながら

「綺麗だよ、この花に負けないくらいだ」

と褒めてくれた。

「フィリップも素敵だわ、今日は大変になりそう。頑張りましょうね」

「気を引き締めるよ。僕から離れないでね」


こうして初めての二人の戦いが幕を開けた。



誤字脱字報告ありがとうございます。助かっています。訂正しました。感謝です。

次回も読んでいただけると嬉しいです。

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